34.じゃあ、ゼロフォーの本名を伝えるんだね-あのゼロフォーが自分の本名を知ったら-
全43話予定です
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カズは話を切り上げたあとに、真っ先にアイザックと[襟坂]を所長室に呼んだ。そこで事の成り行きをかいつまんで話して、
「という訳でゼロフォーを供出したいと思っています」
と続けた。
そんなカズに、
「念のための確認です。現在、ゼロフォーが使用している機体を供出するのではないのですよね? それではバレませんか?」
と尋ねたのがアイザックである。もっともな意見だ。
だが、
「ゼロフォーの機体把握能力はひいき目を差し引いても他のサブプロセッサーよりも優れていると思う。それを考えれば[最新型です]と言い張っても遜色ないのではないかなって。それに」
例の名前と階級の話をした。
「それは……上層部もだいぶ柔軟になってきたんですね。そんな話が持ち上がるなんて」
当然だ。サブプロセッサーになった時点で、もうそれは扱いとしては[ヒト]ですらなくなる。[ヒト]としてはカウントしないのである。それはつまり[モノ]扱い、弾薬や鉄砲なんかと変わりがなく個体番号を割り振られて[モノ]として扱われる。
「まぁ、そのお陰で交渉ごとの矢面に立たされましたがね」
最近は整備の現場でも少しずつではあるが改革が進んでいる。今までなら重要機密であるレイドライバーの重整備は限られた人間しか出来なかったし、アクセスする権限がなかった。アルカテイル基地でいえば主任のヤマニとあと一、二名くらいである。それでも発足当初よりは一、二名とはいえ増えたのだ。それが今では生命維持のパック交換も上級整備士の一部が行っているのだ。もちろん定期交換部品という扱いで、ブラックボックス化しての話である。だから当の本人たちはそれが何か分かっていないのだ。せいぜいが[潤滑油の類だろう]くらいの認識なのだ。もちろんそのパックが繋がっている先というのは、今でも前述の人間しか知らないのである。
「じゃあ、ゼロフォーの本名を伝えるんだね」
[襟坂]だ。彼女にしてみても今回のケースは極めて異例な話である。[モノ]扱いのパーツが[ヒト]扱いに昇格するのだ。まぁ、かと言って研究員と同等の立場にはなり得ない。それは他のパイロットをしても同じである。研究所にしてみれば被検体もパイロットも同じようなものなのだから。
現にカズが以前に倒れた際、一緒に連れて来ていたマリアーナは両腕を後ろ手に枷をされ、排せつすら自分一人ではさせてもらえなかったのだ。パイロットという肩書は、いくら階級が高くなってもこと研究所からしてみれば[実戦配備された被検体]という扱いにすぎないのである。
それはともかく、ゼロフォーに本名を知らせるべきかをカズは真剣に悩んでいた。
だから[襟坂]の言葉に直ぐに反応できなかったのだから。
「カズ?」
改めて声をかけられる。
――そうなんだよなぁ、本名か……。
「カズ?」
「ん? あぁゴメン。今ちょっと考え事してたんだ」
と返すと、
「本名の事だよね?」
とあっさりと核心を突かれる。それはそうだろう、何と言っても二人は夫婦なのだ、それもとても仲のいい。そんな二人は二人とも頭がよく回るし状況もよく分析できる。だから敢えて言葉にしなくても相手の考えていることくらいはなんとなく分かるのである。
「そう、本名、ね」
ただアイザックには伝わらなかったようで、
「教えるのは何かマズい事でも?」
と尋ねてくる。そんなアイザックに、
「あのゼロフォーが自分の本名を知ったら、どういう行動に出ると思いますか?」
カズはそう尋ね返したのだ。
全43話予定です




