33.きみか。何か進展でも?-ゼロフォーを貸与の任につけよう-
全43話予定です
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所長室に着いたカズは早速、ホットラインを繋ぐ。そしてそれは直ぐに、
「きみか。何か進展でも?」
と尋ねられる。その声には行き詰まり感が出ていたという点についてはカズは触れずに、
「こちらで、有益な情報を得まして」
と告げた。
そこで話をしたのが先の会話の内容である。
帝国は二国間協定などハナから眼中にない事、ただし自国のレイドライバーの貸与をチラつかせる事で同盟連合からレイドライバーの貸与を引き出そうとしている事、情勢いかんでは実際に共和国に貸与、見返りに領土の一部割譲を要求する事をかいつまんで話をした。
「それは……」
と言葉が詰まる。それはそうだ、この内容のどれを取ってみても同盟連合には不利な内容だからである。
もしも同盟連合がレイドライバーの貸与を拒めば、帝国はほぼ間違いなく共和国に自分のところのレイドライバーを貸与するだろう。そしてその見返りは最低でも領土の割譲ないしは借款、こちらの出方次第ではそれこそ二国間協定というブラフをチラつかせる可能性が高い。
ブラフは互いがブラフと認識していても確証がない限り可能性として残るのだ。端的に言えば、二〇〇〇年代の原子力潜水艦がそれに当たる。仮に核弾頭を搭載していないだろうと状況から推測されていても、そこに原潜が航行しているだけでそこには核があるかもという抑止力になっていたのだ。そしてそれは誰もボタンを押さないだけで現在も続いているのである。
では同盟連合はレイドライバーの貸与を受け入れるしかないのか。
カズは、
「それでいいと思います」
と言った。当然その言葉にどよめきが起きる。それは向こう側の意思決定機関の人物が複数人いて、カズの言う言葉に驚いているというのを示している。
意思決定機関、つまりカズが回線を開いている向こう側には二十四時間体制で、少なくとも国政に係る政が出来るだけの人材がいる。それほどに三国の領土というのは地球上にまだらに存在するのであるし、敵は、世界情勢というのは一刻たりとも待ってはくれないのである。
「訳を聞いてもいいかな?」
向こう側はそう聞いてくるので、
「現在、レイドライバーの貸与というシチュエーションを仮定して一体、既に組み上がっております。もちろん主要部品には初期世代型の部品を使用していますが、動作テスト済みでパイロット、もしくはサブプロセッサーを搭載する前段階まで準備は済んでいます。そこで提案があります」
――これが最適解だろう。
カズの言う提案。それはゼロフォーを貸与の任につけようというものだ。それも単独で、である。パイロットであるマリアーナは連れて行かないというのだ。
「それは……」
言葉が詰まる。それを、
「仰りたいことはよく分かります。サブプロセッサーを、自我のある脳みそを相手に供出するのか、と。ですが考えてみてください。ここでゼロフォーを供出して[この機体はちゃんと新型ですよ]と相手と模擬戦をしたら? 私の見立てではどんなに主要パーツが初期型を使用していても十中八九、ゼロフォーが勝つと思います。その実力差を見せつければ相手だって信用してくれるのでは? それに先日の話ではないですが、ゼロフォーにパイロットとしての処遇を考えている、と仰っていましたよね?」
つまりは名前を与え、階級を付けさせるという話である。
「そして[先々にサブプロセッサーが開示された時の先駆者としての役割も担っていると考えてくれたまえ]とお聞きしたはずです」
そう、自分から志願して現在の姿になったのだ、と。自分は人間であり、軍人である、と。そうゼロフォーに言わせるつもりなのである。
「それを今回実行しようと?」
向こうの声が聞いてくるので、
「そうです。なおかつ彼女が適任なのはその情報処理能力の高さです。会話術も悪くない。とくれば適任か、と。自分から望んでこの姿になった[人間]です、と言ってもらうんです。相手がモノなら別でしょうが、こと人間なら尋問こそすれど拷問の類はしてこないでしょう」
と言ってから、
「更に言えば自我のある個体を供出するという点も評価に入れて頂きたい。それはつまり同盟連合の技術力の高さを証明する結論に至るのですから。それに、現在こちらに拿捕している帝国の機体はまだ返さなければいいだけの話です。つまりは[調べるだけ調べたら物々交換でいかが?]と言ってみたらどうか、と」
カズがそう言い終わると少しの間ミュートになる。おそらくその場にいる人物たち同士で話し合っているのだろう。
だが、それも直ぐに切り替わって、
「では、帝国にはこちらから話を切り出す、という形をとりたい、というんだな?」
と返ってくるので、
「そうして頂ければ」
と返す。
事態は一つ、大きく動き出したのだ。
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