32.おっ、もしかしてこれは?-よく戻ってくれたね。それで-
全43話予定です
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カズは[襟坂]に、
「じゃあ、その方向でやっていこう。生体コンピューターを埋設する案は了承したよ」
と告げて次のセクションに行こうとしたとき、
「プルルルル」
お尻のポケットに携帯している少し古めな携帯電話がバイブレーションする。カズがメインで使っているスマートフォンは常に胸ポケットに仕舞ってある。それ以外で鳴動するものといえば。
――おっ、もしかしてこれは?
「もしもし?」
と少しだけ高めの口調で電話に出ると、
「何とか連絡できるところまで戻ってきたよ。こっちは色々と」
「大変だったのはなんとなく想像がつくさ。よく戻ってくれたね。それで」
電話の相手が話した内容というのは、帝国は共和国との二国間協定などは頭にないという話に始まり、ただ旧トルコの脇にある共和国領土を割譲もしくは借款してほしい旨を近々案として提案しようか、というところでいったん話は止まっているようだと伝えてきた。
――もう数日遅れてたら、マズかったかもな。
カズはそんな事を思いながら続きを聞く。
相手は更に、同盟連合に対して揺さぶりをかけるつもりでそう提案している、とも伝えてきた。つまりは人型で人型を釣るという話である。
帝国は自国のレイドライバーを共和国に貸与するか、それが嫌なら同盟連合は一体、レイドライバーを供出しろと言っているのだ。
「その情報、糸は付いていないかい?」
カズの言う糸、それは追跡の類を指し示している。
相手は、
「そこまでは何とも。こっちも命懸けでつかんだネタだからな。あ、そうそう、例のカードが役に立ったぜ」
相手はそう言うと、
「これはオレの私感だが、帝国は同盟連合と直接話し合いがしたいんじゃあないか? 同盟連合を強引にでも交渉のテーブルにつかせるために人型をチラつかせているようにしか見えないんだが」
と言ってきた。カズもその意見には、
「同感だね。まずもってして共和国にまったく話が行っていないのがその証拠だろう。それにもしも帝国が共和国に[人型を貸しますよ]と言ったら、それこそ即決で領土の一部くらいは割譲しそうだからな。そのくらいの秘密が人型という兵器には詰まってるんだ」
――さて。これで情報は整った。あとはどう料理するかだよな。調理法を間違えばそれこそ大惨事だ。
カズは少しだけ心が浮かれていた。それは、これから起こる事の重大さに震えて、というよりは[オラ、ワクワクしてきたぞ]というやつである。
相手は、
「で、共和国には何を持って帰ればいい?」
と尋ねてきたので、
「近々、帝国と同盟連合が話し合いを持つ、と伝えてくれ。内容までは話さなくていいし、その場の情勢で変わりそうだからね。ただ、両国の今後について、と注釈をつけて流してくれれば」
――共和国も驚いてくれるだろうさ。そこでもしも三国会談になればそれはそれで。
カズはそんな事を考えながら、
「くれぐれも無茶、無理はしないでね。きみはオレにとっては貴重な人材だから、そうそう簡単に失うわけにはいかないんだよ」
と付け加えた。そんな言葉に電話の相手は、
「ははっ。貴重、か。そう言ってくれると助かる。そうそう、手配した例の子供たちは無事に着いたかい?」
と尋ねてきたので、
「オマケまでちゃんと見繕ってくれるとはね。流石だ、よくやってくれた、と感謝を。じゃあ引き続きよろしくね」
と言って電話は切れた。
「さてと、また会議だぞ」
カズは所長室へと向かったのである。
全43話予定です




