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29.一年あれば、モノにできそう-今から生体コンピューターを埋め込めないかな-

全43話予定です


曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)

※特に告知していなければ毎日投稿です


 それから一週間が過ぎた。


 カズはとある心配を抱えていたのだ。


 ――捕まってなきゃいいけどなぁ。まぁ、流石に[場慣れ]してるとは言っても二重スパイだもんなぁ。


 などと考えていたのだ。それは例の[モグラ]の話である。彼には[無茶しない程度に、情報を]とは言ったものの、実のところを言えばその情報待ち、というのが正解なのだ。


 この一週間で同盟連合が放った[モグラ]のうち、帝国行きはほとんどが狩りつくされていたのである。唯一残った[モグラ]にはつなぎの役割が必要だ、という理由からそれ以上の情報収集は止めるように言ってある。ここで全員の[モグラ]がいなくなれば、それこそ些細な情報すらも掴めなくなる。それは同盟連語としても非常にマズい事態だ。


 なので、


「こりゃあ手詰まりかなぁ」


 とカズでなくともこぼしたくもなる。国の上層部からは逐一動向を伝えてもらってはいるものの[悲観的と言わざるを得ない]という注釈までついている。


 だが、共和国に放っている[モグラ]によれば、特段の動きはないとの話だ。帝国と会う、同盟連合と会談を持つなどという文言は一切出てこないらしい。


 ――それを察するに、だ。


 カズは研究所の所長室で眉間を押さえながら考え事をする。


 現時点で言えるのは一点だけ、共和国はまだ会談があることを知らないというこの一点のみである。そこから推測すれば二国間協定という線は少し薄れてきたと言ってもいい。だが、あのクロイツェル参謀の事だ、どんな手を使ってくるか。予定路線がずれれば躊躇なく二国間協定の為に使者を送るだろう。


 そしてカズは、といえば研究所で事務整理やら供出する可能性のある機体の作成やら、四体の被検体の状況やらを見て回っている、というところだ。もちろん、他の研究が止まっているわけではない。だから毎日ぐるぐるとそこらかしこに行っては研究員と話をし、指示を出してという、いつもの彼からはおよそ考えつかない実に所長らしい毎日を送っているのだ。


 そんな毎日だが、やはり目下の注目すべきところは二点、レイドライバーの製作と四体の被検体の話だ。


 レイドライバーの方はほぼほぼ完成している。テスト信号を入れて機体を動かし、動作確認まで済んでいる。アイザックからは、


[サブプロセッサーだけで行くのか、パイロットも同行なのか早く教えてください]と言われているものの、情報が下りてこない限りは次に進めないのもまた事実である。


 なので、


[すみません、もう少し]


 と言って待ってもらっている状況だ。


 一方の四体の被検体についていえば[襟坂]は積極的に実験を行っている。実験、というよりは育成に近いのかもしれない。現に四体ともロクに寝ていないのだ。当初の目標としては三年を目安にサブプロセッサーかパイロットか、という話だった。しかし、情勢はそれほど待ってくれないという結論に至りカズは[出来るだけ短期間で]という注文に変更したのだ。


 そこで[襟坂]は精神を削りつつ脳に[刷り込み]を行うという手法を実践している。これから先、最低限の睡眠以外は[調律]に回そうというのだ。[調律]と言えば響きがいいが、要は人格を無視した調教である。マスターである人間には絶対の服従を[刷り込んで]いく。先述したことがあるが、この脳への[刷り込み]というものほど強力なものはない。


 この[刷り込み]というのは実に便利かつ厄介なものなのだ。刷り込む対象によっては研究者からしてみればとても有意義に働く。言葉で言わなくとも、ムチを振って躰に覚えさせなくとも特定の事象に対して絶対に同じリアクションとして起こすのだ。先ほどの話でいえば[マスターの命令は絶対だ]という内容である。


 ただ厄介なのは、一度脳に刷り込まれるとそれを引きはがすのはとても難しいのを意味している。先に、クリスが体験した男性恐怖症や、カズを見ただけで、レイドライバーに乗っただけで[痙攣]するといった現象は、一度その頭に刷り込まれてしまうと、元に戻すのはほぼ不可能なのだ。


 だからクリスには手術を受けてもらい、生体コンピューターを埋め込んで、脳を直接コントロールする事で何とか回避したのだから。


 睡眠を削り、脳に電極を付けて催眠学習よろしく刷り込みを行う。これによって[襟坂]の見立てでは、


「一年あれば、モノにできそう。例の実験も進みそうだよ」


 と言わしめるほどに。


 だが、サブプロセッサーにするには最低でも十八歳を待たなければならない。それは脳の発達が完了するのが大体それくらいだからだ。なのでたとえ一年で形にできたとしても、サブプロセッサーとしての実戦配備は不可能になる。確かに比較対象として寄越されたテミラデは、話によれば十八歳との事だったのでまずこちらから手を付ける、という流れになるだろう。カズもこのことは分かっていた。分かっているのと[何とかしたい]のとでは話が違う。


 そこで[襟坂]は、


「今から生体コンピューターを埋め込めないかな」


 と提案してきたのだ。


全43話予定です


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