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27.いくらなら出せる?-これなら?-

全43話予定です


曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)

※特に告知していなければ毎日投稿です


 マタルが人型の話を出しても女は眉一つ動かさなかった。煙草を咥えて吸っている。


 ――おいおい、シカトか……。


「いくらなら出せる?」


 咥えた煙草を一旦離すと、視線はマタルに向けずに、向こうはイエスでもノーでもなく値段の話をしてきたのだ。


「それは、何か掴んでいるって捉えていいのか?」


 マタルが聞けば、


「いくらなら出せる?」


 女は同じ言葉を繰り返した。


 マタルはざっと手持ちを計算する。現金の類なら少しはもっている。煙草もそれなりに持ってきた。酒は……流石に邪魔になるから持っていないが。


 ――どれだけ出せば聞き入れてもらえるか。いや、元々情報なんて持っていない可能性だってある。ここはスラム……いや、さっき逃がしたって言ってたな。という事は……。


 思考が頭を駆け巡る。そんなマタルの頭には、ふとポケットの中に入っている一枚のカードが思い浮かんだ。


 ………………


[ここぞって時に使ってくれていいよ]


 マタルの雇い主からはそんな話をされた記憶がある。


[これは?]


 とマタルが聞けば、どうやらクレジットカードの一種のようである。帝国でも、同盟連合でも、あまつさえ共和国でも使えるとの事だ。


 マタルが不思議そうに見ていると、


[三国は戦争してはいるものの、なにも物流がすべて止まっている訳じゃあない……のは知ってるか、その支払いに必要なものといえばお金、だよね。右手で互いに銃を突きつけあっていながら左手では物のやり取りをしてるんだ。だから、この国にあるはずのない有名銘柄のブランデーだって、紅茶だって手に入るという訳さ]


 それはマタルも聞きかじっことがある。軍事と商業は別物という話だ。もちろん、一時的に国境封鎖なんてのもあるにはあるが、それにしたって他国へのアピールという側面が大きい。封鎖した一週間後には普通に物のやり取りをしている、なんてのが日常なのだ。


 そんな中で、物のやり取りが増えるにつれて、その代金として暗に共通した価値のものか必要となった。つまりはどの国でも使える貨幣である。だが、いまだ形だけになりつつあるとはいえ戦争状態にある三国が[自国の貨幣に全幅の信頼を置け、他国の通貨を全面信頼せよ]とはとてもではないが言えないのもまた事実である。


 ならどうするか。


 それは共通の貨幣を使おう、というものだ。


 貨幣といっても仮想通貨のようなものだと考えてもらえればいい。昔から仮想通貨は存在するが、それを全世界的に仕様変更したもの、と考えてもらえればいい。貨幣などの[現物]が動かない分だけ、一見すると価値がなさそうに見えるが、実際の運用ではこれが真逆の効果を示した。三国がそれぞれ三国の貨幣でない、中立の貨幣制度というのが全世界的に世間ではウケたのだ。


 二〇五〇年のこの時代、それは二〇〇〇年代前半に比べてネットも、技術もそれなりに進化している。ネットだけでいえばこのスラム街にもあるくらいだ。そう、行き倒れているスラムの住人でさえ端末さえあればネットにアクセスできる。


 データとしてのみ存在し、誰もその価値を改変できない、それでいて確かに価値があるというその貨幣制度は言葉の壁以上に人種間を軽々と越えて存在し得たのである。


 そんな貨幣にアクセスするカード。雇い主の話では[それなりのモノなら大体買える]額が入っているそうである。そんなカードの存在を、ふと思い出したのだ。


 ………………


「これなら?」


 マタルはそう言ってポケットからそのカードを出して女に渡す。


 女は無言でそれを受け取るとスキャナーにかざし、ほんの少しだけ表情を変えた。それは言われなければわからない程度の揺らぎというべきなのかもしれない。たが、マタルにはその表情は確かに見て取れたのだ。


「なるほどね。あんたのバックは……そういう事かい」


 と一言言ってから、


「あんたの聞きたい話は分かった。人型の話なら持ってる」


 そう告げたのだ。


全43話予定です


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