22.しかし、これって便利でもあって-私が望んでつけてもらった首輪だから-
全43話予定です
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「しかし、これって便利でもあって」
「不満でも?」
と直ぐにクリスに返されてしまう。
「ううん、不満はないの。何と言っても私が望んでつけてもらった首輪だから。あの時は心底安心した記憶がある。[あぁ、これで身も心も縛ってもらえる]って。貴方も同じ気持ちなのでしょう?」
と遮蔽から一瞬出てマシンガンを向けながら模擬発射する。
………………
アルカテイル基地の東側、つまりは帝国領土側には少し広いスペースがある。
元々アルカテイル基地というのは帝国領だった。それを同盟連合が奪い、奪われて、再奪還をかけて現在の領土となっているのだ。ここには空軍基地がある。つまりは航空部隊も存在している。サンド・ギルベルト大尉とカレルヴォ・レイノ大尉の二機、最新鋭機と呼称される三五FDIが常駐している。カレルヴォはつい先日旧トルコの遠征から戻ったばかりである。まあ、もっとも、それを言ったらトリシャだって参戦していたのだが。
そう、滑走路脇に少しスペースがあるのだ。そしてここは初期奪還時にカズが敵レイドライバーと近接戦闘をした[名残り]がある。そう、遮蔽物というか残骸というか、それがそのまま残されているのだ。
はじめは、奪還してしばらくは誰もその件について触れようとしなかった。それはそうだ、ここアルカテイルはホットスポット、つまりは帝国、同盟連合、共和国が国境を接する土地だからである。いつまた奪還されるかも、この基地を放棄するかもしれない、そんな共通認識からそのままにされていた。
しかしながら駐屯が上手くいくと、しばらくして出てきたのが[余分なスペースは減らして兵器を配置してみては?]という案だ。だが、その案はカズの[ここはレイドライバーにとって最前線基地になる。だから、模擬戦を行える場所として残しておきたい]という言葉で残る結果となった。いつしかそのスペースは使えなくなった戦車や車両の[最後の行き場]になっているという訳である。
………………
「えぇ、私はあの時からずっと、エルミダス基地でご主人様と呼んだあの日からずっと、あの方の為になる事だけを考えて生きてきました。だからトリシャさんが隷属するって聞いたときにあんなに取り乱してしまったんです」
とお返しに模擬発射をする。
二体ともマシンガンには実弾が装填されている。もちろん撃って当たればそれこそ被害が出る。それに今は昼間とはいえ基地内でバカスカ実弾を撃っていられるほど余裕などない。そんな暇があれば対空、対地の警戒を厳にしなければならない。
ではこの二人は? それはカズから基地司令に説明済みなのだ。[警戒任務中でも模擬訓練をさせてほしい]と。
もちろん初めは、
[それは大丈夫なのか?]
と心配もされた。しかし、二人の事情を説明すると、
[そういう次第なら]
と許可が出たのである。これが一体だけだったら[ちょっと……]という意見も出ようが、二体で、しかも相互補完しあいながらの模擬戦闘である。結果、それならばという事で今に至るわけだ。
「……その」
トリシャが見せた一瞬の隙、クリスは見逃さなかった。
「脇ブロックに被弾、戦闘は困難です」
とトリシャの[声]がそう告げる。そう、それほどにこのシステムというのは強力なのだ。発声だけでなく、やろうと思えば思考にすら介入が可能なのだから。
「トリシャさん、何か言いかけました?」
クリスが近づいてくると、
「いえ、その、この、この前は、御免なさい」
[この前?]というクリスのちょっとだけわざとらしいリアクションに、
「この前の二人でご主人様に躾けてもらった時の話よ」
やっと言葉に出る。クリスは[もう隠し事はなしですよ、そう誓ったんですから]と言ったあとに、
「いいえ、私こそご主人様にちゃんと使ってもらえたのが嬉しいんです。涙を流すほど辛いことをされても、あとでそれが思い出に代わるんです。そして次もまた使ってくださる。それがとても嬉しいんです」
と返ってきた。
トリシャは[そうね、私たちはもうそういう関係なのよね]と言ったあとに、
「ねぇ、質問があるんだけど」
と問う。
「何ですか?」
というクリスに、
「もしも躰を捨てろ、と言われたら貴方ならどうする?」
と質問したのである。
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