17.ここは……すごいな-神父さんよ。この通路は何処へ繋がってるんだ?-
全43話予定です
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その通路は手掘りで掘ってあった。これだけの坑道を作るのに一体どれだけの月日を費やしたのだろうか、ここが帝国領であるのを加味すれば、当然だが重機のようなものは使用できない。となれば必然的に手掘り、となるのだが、
「ここは……すごいな」
思わずマタルが感嘆の声を上げる。それほど苦労の跡が見られるのである。手掘りゆえの平坦ではない道の作り、中腰を余儀なくされる高さの天井、そして一人しか通れないであろう通路の狭さ。どれをとってもそんなに多人数で作業できるものではない。
「これも皆で協力して作ったものだ。全部出来上がるには五年、いや七年はかかったか。それも信徒の協力を得て実現したものだ」
神父の言う信徒とはもちろん横のつながりの事であろうというのは直ぐに分かる。
「なぁ、神父さんよ。この通路は何処へ繋がってるんだ?」
とマタルが聞けば、
「この区画の外れの下水施設、そこに繋がっているのだが……」
「が?」
――何だ? ……もしかして!
「出口も見張られてる可能性がある、と?」
考えがそのまま口に出る。
「そうだ。散っていったものの中にはここの掘削を手伝ったものもいる。それらの信徒が口を割っていないとも限らない」
それはつまり、拷問を受けたのち死亡したというのを意味している。しかし、この国の警察組織であればそれくらいは平然とするであろうことを、マタルは、いやマタルだけでない、神父も脱出する時点でその可能性に気付けなかったのだ。
「どうする?」
流石にマタルとてこれ以上の案は地元民でない限り出てこない。マタルはライトを口に咥えると、腰に差していた銃を取り出して初弾を装填する。いわゆるオートマチック拳銃というやつである。昔でいう[東側諸国]が採用していた拳銃で、現在はどの国も使用していない、ある意味骨董品のような銃である。
これにはちゃんと訳がある。まず、出物が[東側諸国製]という点だ。もしもマタルが力尽きた時、その亡骸から証拠を押収された場合にまず真っ先に当然持っていかれるこの銃が[西側諸国製]だったらどうか。それはつまるところ現在の同盟連合を疑われる結果につながる。同盟連合とのつながりは是が非でも避けたいのだ。だからこそこんな古い銃を敢えて手に入れて持ってきたのだ。
――銃の扱いはあんまり慣れてないからなぁ。
こんな時でも少しだけ冷静な自分がいるのにマタルは少しだけ驚いていた。
そんなマタルに、
「これはある種の賭けだ」
と神父は告げてから、
「もう少し行くと道が左右に分かれている。それぞれ別の下水溝に繋がっている。そして、もしかしたらどちらかは大丈夫かも知れない」
「かも知れない?」
当然そう返すと、
「信徒の中には国外に逃げ延びたものもいる。難を逃れて現在はスラム街に身を潜めているものも。掘削に関わった全員とも帝国の警察に捕まった訳ではないのだ。そしてその中には」
「掘削を一人ないし数人で行っていたやつらか。どちらなんだ?」
その辺りはマタルだってなんとなく分かる。その彼に、
「誰がどこを担当していたのかまでは分かっていないんだ。ただ、可能性の話をしている。最終的な出口の掘削は一人でやるように伝えたのだ。そしてそれを信徒が忠実に実行していればあるいは」
とまで出た言葉が詰まる。
――どちらかに[アタリ]が入ってる可能性、か。どのみちこの狭い通路だ、もしも正面から来られたらひとたまりもない。それに両方が[ハズレ]の可能性だってある。
「……まぁ、何とかなる、か。やってみて、その時に考えればいい」
とマタルが言うと、
「強いんだな、お前」
と神父が感心したように言う。その神父にマタルは、
「こうでもなきゃあやってられねぇよ。それに、後悔ならあの世でも出来る。前進するのは今でしか出来ないからな」
――引いたくじの結果については誰も恨んだりはしないよ。それよりも今は可能性に賭けよう。
マタルは右側の通路に向かって進んでいった。
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