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16.神父の話-こりゃあ、困った話を聞いちまったもんだ-

全43話予定です


曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)

※特に告知していなければ毎日投稿です


 神父の話というのはマタルにとっては確かに得るものが多かった。


 まず、帝国は二国間協定は頭にないという点だ。これは共和国の主任の話とも一致する。主任は帝国の[て]の字も口にはしなかったからだ。主任にはそれなりに信用を得ているマタルをしても帝国の二文字が聞けなかったのは、そもそもそんな話自体がハナからなかったからであろう。


 ただ、レイドライバーの供与というのは眼中にあるようである。その見返りは共和国領である旧イランの領土の一部の借款である。旧トルコはダメだったが、その隣に道を開けばよい、そう考えているようである。これならば大陸の生産力をそのままアフリカ大陸まで持ってこられる。


 ――こりゃあ、困った話を聞いちまったもんだ。


 マタルでなくともそう思えるほど、神父の語った話というのはとても重要なものなのだ。それは一国を動かすのに十分すぎるほどに。


 そしてもう一つ。それは帝国が共和国に対するレイドライバーの貸与を諦める条件である。その条件というのが、


「これが分からないんだ。正確には、知っている人間はいたが、接触する前に処されたというべきか」


 ――おいおい、そこは肝心だろうに。


 とは思ったが、


「それはオレの顔を見ても足らない、という事か?」


 ダメもとで聞いてみる。しかし、


「金額がどうの、という話ではない。純粋にそこから先の情報網がないのだよ。今言った情報だって何人の犠牲が出たか。それほどに今の帝国は危険だ。何かをしようと動こうとすればするほどリスクが飛躍的に高まってくるんだ」


 神父はそう言って十字を切る。その行為は、本当に何人もの人間がいなくなったのだろうというのが伝わってくる。そしてマタルはだからこそ分かっている。この世界で信用に足る人物は、それも重要な情報に触れられる人物というのはどんなに重要なのか、と。


「これ以上は探そうとしても難しいと思う。それでも調べがしたいというなら」


 神父はそういうと一枚の紙きれをマタルに手渡した。


「これは?」


 そう聞くマタルに、


「最後の綱、というところだろう。その人物がいなくなっていればもう手はない」


 と告げながら、


「どうやらここまでのようだな」


 明らかに口調が変わる。


 ――マズい、囲まれてるのか。


 そんな相手の機微にすぐに対応したのが分かったのだろう、


「この像の裏側が抜け道になっている。そこから、早く」


 と指示される。[あんたはどうする]とマタルが聞けば、


「警察がここを調べたのであれば、私はもうどこに行っても追われる身だ。それならいっそ先に逝ったものの為に最後まで祈ろうと思う」


 と来た。だが、そんなマタルは、


「オレは賛成できないね。それならあんたも一緒に逃げるべきだ。ましてやその手段があるのなら」


 ――オレはまだあんたを[仲間]とは認定していない。だが、少なくとも貴重な情報源だ、簡単には死なせられないんだよ。


 マタルはそう思いながら、


「いくぜ、一緒に」


 と神父の手を引いたのである。


「この世にもそんな人間がいるとはな。裏家業というのは案外義理堅いんだな」


 と問うたその言葉な、


「仲間が信用おけなくてどうする。信用しないのは[ニンゲン]だけでいいんだよ」


「[ニンゲン]?」


 どうも聞きなれない言葉だったらしい。そんな神父にマタルは、


「どうも東洋の言葉らしいぜ。人を指す言葉らしいが、オレは蔑称で使ってる」


 そう言うと、宗教の象徴であるその像の裏側に回り込む。するとスライド式のレバーがひっそりと隠されていたのでそれを操作する。これなら確かにここに裏口がある、という情報を知らなければ見落としてしまうだろう。


「ところでこの戸は通路側から操作できるのか?」


 と尋ねれば、


「ああ、通ったあとに戸締りは必要だからな」


 と返ってくる。


 ――んじゃあ、とっととずらかりますかね。


 マタルは[早く]と言いつつ神父を先に行かせた。


全43話予定です


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