15.形ばかりの礼拝はしなくてもいい、入っていいぞ-待たせたかな?-
全43話予定です
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目的の場所というのは、なんの変哲もない一般の建物と遜色ない造りをしていた。ただ一点違うところといえば、入り口に十字架が飾られているというところだろうか。
そう、ここは教会なのだ。
帝国は宗教までは制限していないのである。中東とそこが大きく違う点といえばそうなるのだろう。向こうではイスラム教が多数を占めている。国単位で礼拝の時間が設けられているくらいだ。だが、帝国はその辺りは緩いのである。これは独裁国家にしてみれば少し珍しいのかもしれない。大抵は特定の宗教を強要したり、逆に特定の宗教をいわば[スケープゴート]にしてその結束を保つというのが多いからである。現に今までの独裁国家にはそういったものが見られがちであった。だが、ここは帝国の本土、今までちらちらと話題に上がっている[大陸の国々]である。思想はさすがに統一、または反乱分子は弾圧粛清の対象になろうが、宗教までは問わない、というのが実情なのだ。
だから、
「形ばかりの礼拝はしなくてもいい、入っていいぞ」
マタルが入り口の十字架に対して体の前で十字を切っていた時にそんな声がするのだ。
――おっと、見られてたか。それじゃあ早速。
マタルにしてみれば宗教などは何でもいいのだ。特定の信仰があるわけでもない。いわゆる[神様だってカネで買えれば、自分の都合で動く]と考えているからだ。そんなところにも彼の価値観である[ニンゲン]に対する考えが染み出ているというところだろう。マタルにしてみれば神というものは、[ニンゲン]というものは、決して自分を助けてはくれない。都合の良いときはは利用され、都合が悪くなれば見捨てられる存在なのである。
だから平然と十字架の前で十字をきれたりするのである。それはマタルもまた利用することに抵抗がないといえるだろう。
「待たせたかな?」
とマタルが声をかければ、
「待ちなどはしないさ。なんせ、ここは私の家だからな。お前が仲介者の言っていた例の人物で間違いないか?」
とその人物に尋ねられる。
「ああ、オレは……」
とまで言いかけたところで手で制される。
「お互いに名乗りはなしでいこう。そのほうがお互いの為だ。私は今のところ信徒と呼ぶし、お前はオレの事を神父と呼んでくれればいい」
――なるほど、これは信用できそうだ。
実はマタルは聞かれても本当の名前は言わないつもりでいた。それは目の前の神父が、マタルにとって直接[知らない相手]だからである。知らない相手には知らない名前を言っておけばいい。正直、相手の素性が知れない分だけ危険の可能性が排除できない。そういったシチュエーションでは、万一情報が漏れた時のために偽名が必須である。
相手はそんな事情を知っているのだろう。だから自分も名乗らなければ相手に名乗らせもしないのだ、と。
「オーケー、そうしよう。で、神父さんよ、用件というのは分かってるか?」
とマタルが尋ねれば、
「ああ、聞いている。この国の内情を知りたい、そうだったな?」
と返される。
「そうだ。その話を聞きに来た。説法ついでに聞かせてくれるか」
そんな切り返しをすれば相手は[ハッハッ]とひと笑いし、
「なかなか見どころのある信徒だな。いいだろう、私が知っていることを教えよう。だが、神もタダでは動かんぞ?」
と来るので、
「もちろんそれも用意してきた。だが、今はまだその時じゃあない。内容と、その価値が釣り合えばもちろん惜しげはないさ」
と答える。それはそうだ、マタルは[情報]が欲しいのであって[噂]を欲しているわけではない。彼の雇い主は[内情を探って]と言っていた。それは世間話や噂話を欲しているわけではないのは重々承知している。
「では話をするとしようか」
そう言うと神父は語り始めたのである。
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