第一章 勇者の剣 第五話 不穏な嵐
ご覧いただきありがとうございます。
この物語は、ひとりの少女が「死」と「再生」に向き合いながら歩む、
少し不思議で切ない冒険譚です。
気軽に楽しんでいただけるとうれしいです。
カスバが告げたその頃―――
「ていっ‼」
「ナイス! ハンス」
ハンスの一撃をくらったスライムは、鳴き声も上げずに一瞬光った後に消える。
「だいぶ腕も上がってきたよね」
「今、どれくらい?」
「ちょっと待って……と」
私はハンスの魔物カウンターを確認する。
「いま、八十九だね。あと、十一かぁ」
「カオルコの数は?」
「同じだよ、交代でやってるから同じじゃなかったら、ヘンじゃん」
「あ、そっか……」
ハンスの性格なのかなぁ……
自分で考えるってこと、しないんだよね。
「ん? カオルコ、空がヘンだぞ?」
「え?」
まだ昼間なのに暗い雲が広がってきてる。
カオルコちゃん、聞こえてる⁉
カオルコ、結界のベールを、急いで‼
「‼」
「ハンス、伏せて、目をつぶって耳を塞いで‼ 早く‼」
暗い雲はどんどんと広がって近づいてくる!
『きらりべ』
魔法を唱え、あわい銀色のベールが私たち二人を覆った。
その直後。
ものすごい爆音と爆風がビリビリと二人を襲った。
轟音と暗闇の雲は、何度か繰り返し、私たちを襲った。
その間、私は震えるハンスを上から抱きしめ、魔法が途切れないように結界のベールへ魔力を流し込む。
どれくらい経ったのだろう?
音が静まってから、しばらく動けず…………
そっと目を開ける。
見えたのは不自然なほどの青空。
それは何事もなかったかのように、ただそこにあった。
ハンスに目をやると、丸まったまま緊張して震えている。
まだ耳を塞いでいるし、ギュッと目をつぶっている。
『ゆらりこ』
………すぐにハンスはすーすーと、穏やかな寝息を立て始めた―――
さて、どうかな?
私は、そっと銀色のベールの外へ、人差し指を近づける。
『ちいさもり』
『さしらべ』
ガードとサーチの重ねがけだ。
空は青くて静かだけれど、用心に越したことはない
…………ツッ―――
人差し指が結界のベールを超えた。
……
痛くもかゆくも熱くも冷たくもない……のに……
何だろう? この違和感は……
見えている世界は今までと同じなのに、何かが違う。
これは第六感だわ―――
それから太陽が真上から傾いたころに来るまで、ハンスは寝かせておいた。
昨夜は興奮してあまり寝てないみたいだったから、ちょうどいい。
その間に、私はタブレットで調べる。
検索に悩む。
その結果、素直に、
空に黒い雲……とかまんま状況を打ち込んだ。
「…………………」
これはやばいかも。
この先、魔法も使わざるを得ない。
私ひとりなら何とでもなるけど。
ハンスがいる。
いきなり魔法を見せると、ハンスは混乱してしまうだろうな…
…
あと、ひと季節だったのに……
「あっ‼」
「ん……カオルコ……?」
ハンスが目を覚ました。
「なんで、オレ寝てたんだ?」
「訳を話すから、落ち着いてくれるかな?」
「ん……なんか、カオルコ顔が怖いぜ?」
「あ、ごめん」
いけない、いけない。
私の方が緊張してる。
「ちょっと待ってて」
すーはー、すーはー、すーはー……
「?」
「告白したいの」
「えっ⁉ カオルコ……」
あれっ⁉
ハンスが真っ赤になってうつむいて。
なんか、ひどい勘違いしてる⁉
「あ、ごめん、言い方が悪かった」
「ん?」
今度はきょとんとしてる。
まだ顔色はピンクだ。
ちょっと可愛いかも――あっ‼
違う違う‼
ラブコメやってる場合じゃないでしょ、私‼
「あのね、今まで黙ってたけど」
読んでいただいてありがとうございます。
とってもうれしいです。
この作品は毎月第二・第四土曜日の午後一時頃に更新予定です。
ぜぴ、また覗いてみてくださいね。
ありがとうございます。




