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第一章 勇者の剣 第四話 放浪の先

ありがとうございます。

この小説に興味をお持ちいただけただけでも、とっても嬉しいです。

今回もまだまだ第一章、勇者の剣の続きです。

お楽しみいただければ幸いです。

「あー…… 始まったか」

「あと、ひと季節だったのにね、残念だね」

なんかおじさんとおばさんは、のんびりとしてる。

「何落ち着いてんだよ! こんな一大事に……」

ハンスは顔を真っ赤にして、こぶしを握り締めてる。


「あれ? ふたりとも知らなかったっけ?」

おばさんがゆっくりと言った。


「勇者の剣には放浪癖があるんだよ」

「は?」

「何っ⁉」


そんな話、聞いてない。

さては……


くすくすくす………

面白いでしょ、あっはー……


また、やったわね‼


今は全員揃ってるから、魔法玉打つわけにはいかないし……


「どういう意味なんだよ、母さん⁉」

「ん? あんた達、本当になんにも知らなかった?」

「そんな話知らない‼」

「聞いてないですよ……」

まぁ、死女神たちの後付け設定だもんね。

私の転生人生を楽しく……なんて思ってるに決まってるじゃん‼


いつか必ず……見てなさいよ、大玉食らわせてあげるから‼


「まあ、なんだ。話すから二人とも落ち着いて」

「父さん、オレどうしたら……」


ハンスは挙動不審になっちゃってる。

おろおろしてるハンスが可愛く見えるよ。


「まず、勇者の剣はなくなったわけじゃないから、慌てるな」

「じゃあじゃあ、どこにある⁉」

「ハンス、少し落ち着きなよ。おじさんが説明してくれてるんだからさ」

「ハンスよりカオルコの方が落ち着いてるのね」


はい、中身は老女ですから。


「候補は五か所、一つはうちの裏山だから、残りの四か所のどこかにあるんだ」


「どこにあるんだ?」

「どこかは決まってないんだ。勇者の剣は気まぐれでな」

「どこを探せばいいのかは、わかってるの? おじさん」

「この墓場の村の中からは出ないで済むよ」


「「えっ⁉」」

ハンスと私は顔を見合わせた。

二人とも青くなってると思う。

だって、この墓場の村、やたら広いの。広大って言ってもいいくらい。


なにしろ王都を除くすべての村や町からの、ご遺体を埋葬しているんだもの。

それでも、まだまだ広い土地が残ってる。


「母さん、地図を」

「あいよ」


おばさんが隣りの部屋から、大きくて丸まった地図を持ってきて、広げる。

て、広げる。

「これがすべて、墓場の村の土地だ。家はここだな、南門のすぐ近くだ」

「家の裏に、印がついてるだろ?」


「同じ印が勇者の剣のあるかもしれない場所?」

「そうだよ、カオルコ」

「で? これのどこにあるんだよ?」

「それは探しに行かなきゃね」


「え?」

「は?」


「放浪癖って言ったでしょ? 気まぐれなのよ」

「「⁉」」

「勇者の剣がずっとそこにあるとは限らないからね」


「……見つからなかったら、どうしよう」

小さくつぶやいたその声とともに、ハンスの血の気が失せて

絶望色の顔になった。


「ちょうど良いだろう」

「そうだね、ひと季節もあるものね」

「おばさん、どういう意味?」


「ハンスとカオルコ、二人で訓練がてら捜しに行けばいいんだよ」

「「えっ⁉」」


こうして、私たち二人は急遽、墓場の村探検の旅に出ることになったんだ。


ハンスは焦っている。準備もほとんどをおじさんに手伝ってもらってるし。

私の準備はおばさんと一緒に、のんびりとやっている。


それはね、死女神さまはそこまでの意地悪はしない確信があるからでね。

なんだかんだ言っても、最後は私の味方だもの。



こうして私たち二人は携帯食や簡単な罠、小刀などを持って……

っていうより、お馴染みの四次元なんちゃらに入れて。

はい、これも後付け設定ね。



「じゃあ、気をつけてな」

「ハンス、カオルコの言うことをちゃんと聞くんだよ」

「なんで、オレの方が年下扱いなんだよ⁉」

「カオルコが旅の心得を一度で覚えたからだろ?」

「オレだって覚えたじゃんか‼」

「ハンス、最初に倒す相手はどれ?」

「………スライム……」

「じゃあ、スライム百匹倒したらどうなる?」

「次の魔物に挑戦してもいい………」


「で? 次に倒すのは?」

「……………」

「……ゴブリンね」

ハンスは頬を膨らませた。

五歳児って、こんな頭だっけ?

あと、ひと季節で六歳―――

まぁ考えたら、スライムもゴブリンも前世では常識っていうくらい有名だったからね。

すねてるハンスは可愛いからヨシ。


「ほら‼ 行くぞ、カオルコ‼」

「はぁい」

照れ隠しで強がるハンスもなかなかいいね。

まぁ、私の恋愛対象にはならないでしょう、たぶん。



「まずは体力つけよ。どこまで行けるか、競争しようよ」

「かけっこならオレの勝ちだな」

言いながらハンスはいきなり走り始めた。

「こら‼ ハンス、まだ話が途中だってば!」

言いながら慌てて追いかける。

モンスターのかわし方、倒し方を相談しなけりゃならないのに……




そして、昼過ぎ。

「村長‼ おばさん‼」

「なんだい? カスバ?」 

「また、生き返り子かい?」


カスバは肩で息を切らしている。

「ハンスとカオルコは?」

「見送りなら遅かったな、あさイチで出発したよ」

「……遅かったかぁ………」

「そんなに見送りしたかったなら、悪かったね」


一瞬の間があった。


「違う‼ 魔物の脱皮が始まったんだ‼」


「なにっ⁉」

「えっ……今日に限って……そんな………」


ハンスの両親とカルバは真っ青

で、母親は膝から崩れ落ちた――――

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。

書きながら、死女神さまたちの余計な心遣いに、翻弄される主人公たちのシーン。

私は気に入っているのですが、いかがでしたでしょうか?


次回は二週間後になります。

毎月、第二、第四土曜日の昼過ぎに投稿予定しております。


次回もぜひ遊びに来てくださいね。

ありがとうございます。

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