涙を刻むカレンダー
誰もが一度は欲しいと願う「時間」
あの頃の大切な思い出、幸福で輝かしい未来
絶対に手に入らないはずの時が手に入る
涙を刻む、魅惑のカレンダー
彼女達はそれを手にすべく剣を交える
参加権に自身の時間を払って
「リア!どうして戦うの!」
リアの足元に何人もの少女達が横たわっている
「私にはどうしても戻りたい過去があるの……」
「過去…?」
「子供の頃、私の妹は車に轢かれて亡くなった」
「飲酒運転による事故だった……」
「なんてことのない交通事故」
「けどそれで、私の大切な妹が奪われた!」
「私はあの日に戻って、妹を救いたい!」
「その為には涙を刻むカレンダーが必要なの!!」
リアが剣を握って正面から突っ込んでくる
ガキンッ!
なんとか攻撃を剣で防ぐ
「リア…私と出会った日のこと覚えてる?」
「毎日一緒に遊んだ思い出や修学旅行の思い出……それと喧嘩したときの思い出」
「リアは…覚えてる?」
「…私はきっとあなたを殺せなかったんだと思う」
「今の私にはあなたとの記憶なんて一つも残ってないもの」
「そんな……」
「あなたが私にとって、どんな人かは分からない」
「おかげで何の躊躇いもなくあなたを殺せる」
ザシュ!!
リアが剣を振り下ろして少女を切り裂く
「ごめんなさいね」
「…………いいよ」
「え…?」
「レミちゃん、助けられるといいね……」
「どうして…妹の名前を…」
「そりゃだって……」
少女は口を動かすが声が出ない
「待って…あなたは一体…!」
「…………」
少女は笑顔を浮かべた後、眠るように目を瞑り、息を途絶えた
ポタ…ポタ…
「え……」
リアの目から涙が流れる
「どうして…私…」
「名前すら…思い出せないのに……」
「後悔も罪悪感も感じない為に記憶を消した…覚悟だって決めた…そのはずなのに……」
「どうしてあなたを特別に思ってしまうの」
「…………」
その問いに返答がくることはない
全ては終わった後なのだから
「おめでとうございます」
空から突然、声が聞こえてくる
「あなたが涙を刻むカレンダーを勝ち取りました」
「さあ、あなたの望む時間は?」
「…………」
「私の望む時間は……」