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星渡りの傭兵は闘争を求める  作者: タック
第一章 ファースト・ザコ
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重要キャラ二人ゲット

 後日、イクサは外をぶらついていた。

 ただそうしているだけでも、他者からのリアクションで今どんな環境かが痛いほどわかってしまう。


(村の住人たちは怯えた眼で、こちらを遠巻きに見てくる。家の窓からも好ましくない視線を感じるくらいだ。それでも何もしてこないのは、後ろ盾にいるバルバロアとザクセンが怖いからか……)


 ここヘンキョー領は、かなり寂れたところだ。

 元は大貴族どころか大陸一の王族であったヘンキョー家のお膝元だったが、時代によって没落に没落を重ねて、今では痩せ細った何もない狭い土地が残った。

 そんな土地がどうなるか?

 地球でも中世に似たような国があったのだが、〝人〟を売るようになる。

 端的に言ってしまえば奴隷、または武力だ。


 そこへやってきたのが、ザクセン傭兵団だ。

 領外で贅沢三昧をしていたバルバロアが金を使い果たして戻ってきたタイミングで、どこかから連れて来たらしい。

 財政難で私兵たちに逃げられ、ろくな武力も有していなかったヘンキョー領は、ザクセン傭兵団に頼ることになった。

 武力としても、とある秘密兵器を有しているらしいので領外へ傭兵として出稼ぎもしてくる。

 その秘密兵器さえあれば、攻撃スキルを使える戦士や、火を出せる魔術師など恐るるに足りない。


(秘密兵器って……たぶん俺も知ってるアレだよなぁ……)


 イクサは現状を整理しながら歩いていて、つい落胆してしまう。

 このまま過ごせば主人公に殺されて死亡。

 かと言って、重要キャラの幼なじみに恨まれていて、しかも力あるバルバロアとザクセンに囲まれている状態ではバッドエンド回避も難しいだろう。

 常識人である現当主と、その妻――イクサの両親も、その二人には頭が上がらない状態だ。


「あれ、詰んでね……?」


 もういっそ立場を捨てて逃げようかと思ってしまうも、よくあるチート能力など与えられていない子供が外の世界で一人生き延びるのは難しいだろう。

 八方塞がりでため息しか出ない。


(いっそのこと、最強の力でも手に入ればなぁ……。たとえば前世で最後に手に入れたラスボス機体と戦艦……。いや、でも……どうやってクリア特典を入手するんだよ……。このヘンキョー星は〝端末〟すらなさそうな田舎の中世ファンタジー世界だぞ……)


「はぁ~……」

「どうした、イクサがため息だなんて珍しいな」

「本当……バルバロア様がやってくる前に戻ったみたいだよ……」


 そこへやってきたのは、パーヴェルスとヴィルヘミーネだった。


「うわっ!? お、俺をまた怒りに来たのか!?」

「……ちょっと来い」


 イクサより背の高いパーヴェルスが、その大きな手で、こちらの手を握ってきた。

 明らかにイクサの貴族特有の手よりもゴツゴツしていて、従者としての仕事や剣術修行などをこなしていることがわかる。

 それにファンタジー世界特有のモンスターと戦うための力強さで、グイッと引っ張ってくる。

 彼がその気になれば、身体能力もザコのイクサはボコられて人生終了だろう。

 人気の無い物陰に連れ込まれて、死を覚悟してしまう。


「オワタ……俺オワタ……。人生オワタ……」

「何をよく分からないことを言っているんだ……? イクサ、聞きたいことがある」

「な、なんだよ?」

「どうして僕たちを助けた?」


 真剣な表情のパーヴェルスと、緊張の面持ちをしているヴィルヘミーネが見えた。

 どうやら殺すために物陰に連れ込んできたわけではないと知って、イクサはホッとしてしまう。


「なんだ、そのことか。幼なじみが困ってたら助けるのは当然だろ」

「い、イクサ……本当に貴方はイクサなの……?」


 ヴィルヘミーネが、まるでモンスターでも見たかのように怯えきっている。

 さすがにそこまで……と思ったが、ちょっと前までの自分(イクサ)は本当に酷かったのを思い出してしまう。


「あー、アレだ。お前たちに言われて反省した」

「そんな軽く……!!」

「まぁ、言葉で言っても信じてもらえるわけないくらいに酷いことをしてたから、行動で示したわけだ。今まですまなかったな」

「う……たしかにイクサがあそこで嘘を吐いてくれなければ、僕たちはザクセンに殺されていた……」

「あの場を強引に逃げることができても、ザクセンが持つ巨人と傭兵団が追っ手としてやってきて、家族と一緒に皆殺しにされてたね……」


 どうやら納得してくれたようだ。


「これまでのことを水に流せとは言わないが、これからは仲良くしていきたいと思っている。……もちろん、大っぴらにやるとお祖母様とザクセンに目を付けられるからコッソリだが……」


 イクサの言葉を聞いて、二人は震え始めた。

 それは恐怖からではなく、感動したためだ。


「ぼ、僕たちの言葉が届いて……反省してくれたんだな……。イクサ、我が親友よ!!」

「うわあああああん!! イクサがやっと昔に戻ったー!!」


 パーヴェルスとヴィルヘミーネは涙を流しながら、イクサに抱きついてきた。

 イクサは精神的な大人の余裕を持って、それを抱き締め返してやる。


(親友っていいなぁ……。まぁ、前世ではいなかったけどな!)


 ちょっと余計なことまで思い出してしまったが、忘れることにした。

ロボゲーにハマるオタクだって、友達がいっぱいいるはず! ……いる……よね……?(自分を見ながら)

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