表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星渡りの傭兵は闘争を求める  作者: タック
第二章 ラスト・ボス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/31

エピローグ 私の大好きな星渡りの傭兵さん

 レッドウルフのコックピットの中、イクサは少女に言った。


「ヘンキョー領に帰る前に、エリの依頼をこなさないとな」

「依頼……?」

「広い世界を見せてやる」


 レバーとペダルを操作して、機体を急加速させる。

 普通なら強烈な重力を感じることになるのだが、コックピット内はエーテルで満たされていてパイロットへの負担は0に書き換えられている。

 王都を離れ、森を低空ですべるように飛んで行く。

 木々の天辺をかすりそうになっているが、慣れてきた操縦でギリギリを維持している。

 葉が舞い踊り歓迎してくれているようだ。


「わっ、一瞬でこんな遠くまで……」

「まだまだ」


 次は湖の上を飛ぶと、水面にレッドウルフの姿が映り込んでいる。

 飛沫が上がり、波がザァッとVの形に広がっていく。


「渡り鳥たちと一緒に飛んでる!」

「何か餌でも持ってくれば良かったかもな」


 それからも陽炎揺らめく砂漠や、吹雪が視界を遮る氷山、大きな海の上を飛び回った。


「世界って……広いんだね……!」

「それじゃあ、この星は見て回ったな」

「え? この星……?」


 イクサは進む方向を横から、上へと変更した。

 海からドンドン遠ざかり、雲を突き破る。


「た、高い! イクサ!」

「もっともっとだ!」

「これより上に行ったら……天国? 私、うまく行けるかな……?」


 エリは震えていた。

 イクサは片手だけレバーから離して、エリを抱き締めてやった。


「天国なんて存在しないさ」

【イクサ、エリの身体はもう……たぶん最初から……】


 オペ猫はコックピット内を常にスキャンしているから気が付いたのだろう。

 イクサも気が付いていた。

 エリの身体は体温が低くなってきていて、脈も弱まってきている。

 強く抱き締めながら、機体を上へ上へと向かわせていく。

 雲を抜けてから、段々と風景が暗くなってくる。

 夜になったのではない。

 進行方向の事象を書き換えながら大気圏を脱出したのだ。


「すごい……ここは……?」

「宇宙だ」

「宇宙……とても静かなところ……」

「星渡りの傭兵は、この宇宙を越えてやってくる」

「じゃあ、イクサも……?」

「ある意味そうかな」


 地上で見るよりも眩しい太陽、遠くに煌めく星々が瞬いている。

 360度、コックピット内の視界すべてが宇宙だ。

 エリは手を伸ばして、星を掴もうとしているようだ。


「わぁ……キラキラしてる……綺麗……」

「あの星すべて……とは言わないが、結構な数に人間が移住している。それも見せてやりたかったけど……」

「ごめんね」


 エリも、もう自分に残された時間がないことに気が付いているのだろう。


「でも、最期に見ることができて嬉しかった」

「どういたしまして」

「ありがとう……私の大好きな星渡りの傭兵さん……」


 エリは満足そうに目を閉じて、静かに眠った。

 イクサは前世で主人公として何百、何千とこなしたが――これは特別なモノとなった。

 それでもやりきったので、いつもの言葉を呟いた。


「依頼達成」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の評価欄☆☆☆☆☆をポチッと押して
★★★★★にしてくれると応援になります!

いつも読みに来て頂き、ありがとうございます!

「ブックマークに追加」も便利なのでオススメです!
― 新着の感想 ―
[一言] ゲーム内の視点ではやっぱりバッドエンドで終わりになるのですね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ