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夢見るように夢見たい  作者: 鬼居かます
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08 第一話「夢か現か幻か……」 南洋の島

【毎日昼の12時に更新します】



「……みすず。なんだかぼーっとしてるけど?」




 午後の授業が終わった休み時間。

 後ろの席から園絵が私に声をかけてきた。




「……あ、……うん」




 私は昼休みに見た夢を思い出していたのだ。

 あのときクラスのみんなはなにかにとりつかれたかのように熟睡していた。クラス中、机に突っ伏して熟睡していたのだ。




 だけど、現実にはみんな起きていて、午後の古文の授業を受けたのだ。

 ……そして夢に現れた謎の男の子。

 あの人は夢の内容がすべてお見通しみたいだった。




「……鬼平くんか」




「誰、それ?」




 私のひとり言に園絵が反応した。

 私はあわてて取り繕う。




「ううん。……なんでもない。ただ夢を見てただけ」




「また昼休みに昼寝してたの?」




「うん、屋上でね。……そしたら知らない男子が現れたのよ」




「男子? ……へえ、それって未来の彼氏じゃない?」




 なぜだか真っ赤になっていた。




「や、止めてよ。だって全然知らない人だったんだよ」




「ふーん。……で、どんな夢だったの?」




 園絵はなぜだか意味深な顔をする。




「うん。クラスのみんなが眠っていた夢」




「なにそれ?」




「うん。私が知らない男の人と教室に来たら、園絵も瞬くんもみんな熟睡してたのよ」




「ふーん。変な夢だね」




「うん。……まあ、夢だからね」




 私はそう言った。そしてそれは本心だった。

 夢であればなんでもあり得る。だから夢の内容に意味なんてある訳ないと思っていたからだ。




「でも、それ御利益あったかも」




 園絵がいたずらっぽく笑った。




「どうして?」




「うん。だって午後になってから、私、全然眠くないもん。

 ふつうお腹がいっぱいになったら眠くなるじゃない? なのに、全然平気」




「そう言えば、あくびしてないね」




 私は辺りを見回した。

 だけどただのひとりもあくびをしている人はいなかったのだ。お弁当の時間にあれだけ蔓延していたあくびがなくなっているのだ。




「きっと、みすずが夢に見てくれたからよ。みんな一眠りした気分になったんじゃない?」




「だとしたら、いいんだけどね」




 そんなこんなでその日は終わった。




 ■




 私は帰宅した。

 私は部活には入っていないので、午後五時前には自宅に帰って来ていた。

 そして夕食前には勉強を始めていた。内容は明日に小テストがある地理だった。




「へえ、……きれい」




 私は地理の教科書に載っている一枚の写真に目を奪われた。

 見ると太平洋諸国の写真として小山が二つあり、そこに三本のヤシの木が生えているきれいな島の写真があったのだ。




 そこはエメラルドグリーンに透き通る海と真っ青な空、そして白い雲が写っていて、まさに南洋のパラダイスだと思った。




「パラオ共和国……」




 写真の説明にはそう書かれてあった。私はそれがどこにある国かもわからない。




 ――気がつけば、私は南の島にいた。また眠ってしまったらしい。




 目を開けたら真っ白なビーチに横たわっていて、見上げると三本のヤシの木が青い空を背景に立っていた。




 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「生忌物倶楽部」連載中


「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中





「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み




 も、よろしくお願いいたします。

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