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夢見るように夢見たい  作者: 鬼居かます
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61 第三話「夢見るように夢見たい」 キス

【毎日昼の12時に更新します】





「わ、私とキスして」




「……へ? ……ええっ……!」




 すると鬼平くんは瞬間に顔が真っ赤になった。まるで頭から湯気がわいているんじゃないかと思うくらい動揺し始めたのだ。




「……い、今、な、なんて言ったの?」




「だ、だから私とキスして。……わ、私のこと嫌い?」




 すると鬼平くんは真下を向いてしまったのだ。




「き、嫌いじゃないよ。……い、いや。……す、好きだよ。初めて夢に見たときから、ずっと好きだった」




 そう言ってくれたのだ。私は恥ずかしさが吹き飛んだ。こうなると私は大胆だ。




「じゃあ、キスして」




 そして鬼平くんに近づくと、顔を上げてそっと目を閉じたのだ。




「……」




 見えなくても鬼平くんの息づかいが聞こえてきた。その呼吸は不安定で相当血圧が上がっていそうな気配だ。私の唇にだんだん近づいてくる鬼平くんの気配。




 ……そのときだった。私はあることにひらめいたのだ。




 私はぱっちりと目を開けた。すると一瞬でうろたえた鬼平くんの顔が間近にあった。




「ちょ、ちょっと待って」




 私は鬼平くんの頬に手を当てた。




「な、なに? ……ひょっとしてやっぱり僕とじゃ嫌なのかな?」




 鬼平くんが苦笑するのが見えた。




「ち、違うの。……私はキスして欲しいよ。で、でも今キスしちゃったら、鬼平くんは現実世界に戻って来ない気がするよ」




 すると鬼平くんは、はっとした顔になる。




「わ、私、現実世界に戻ってみる。そして鬼平くんを呼ぶから……(つづきはその後で……)」




 後半の言葉は声にならなかった。やっぱり言葉にすると恥ずかしい。だけど鬼平くんには、それが十分に伝わったようだった。




「……う、うん。わかった。……じゃあ、戻って僕を起こしてくれるかな?」




「うん」




 私は鬼平くんに右手を差し出した。すると鬼平くんは握手してくれた。私はひとつうなずくと地面を蹴った。そして真っ青な空へと昇って行った。




「夢から覚めるには、元の学校の屋上がいいと思うの」




 私はそう叫んだ。すると鬼平くんがうなずくのが見えた。




 私は空を飛んだ。北へと北へとできるだけ急いで向かったのだった。




 学校の場所がわからないということは、なぜかなかった。それは来た道を戻るだけだからと言うことじゃなくて、行きたい場所を念ずれば、それがどっちの方角かは簡単にわかったからだ。




 ここは夢の中。現実世界の常識は当てはまらない。




 ――そして、学校の屋上へと戻った。屋上のコンクリートの床にすとんと着地したのだ。私は辺りを見回した。もちろん鬼平くんの鵺の姿はない。




「お願いだから。……みすず、起きて」




 私はベンチに横になり、そっと目を閉じた。眠るのには苦労しない私だけど、夢の中から目覚めようなんて思ったのは初めてだった。




 ……ちゃんと起きられるかな?




 私はちょっと不安だった。だけど病室のベッドで横たわっている自分の姿を思い起こすと、ふっと意識が遠くなった。




 ――そして私は目が覚めた。




「……みすず」




 私が目を開けると、私をのぞき込む園絵の姿があった。そしてそれだけじゃなくて、有紀も瞬くんも鬼平くんのお母さんも、そして当然、東田先生もいた。




「鬼平くんと夢で会ったよ」




 私がそう報告すると、みんなの顔に笑顔が浮かぶ。




「そ、それでどうなんだ? 鬼平は目を覚ますのか?」




 瞬くんがそう尋ねてくる。




「……うん。きっとたぶん」




 私はそこでみんなを見回して、東田先生と向き直った。




「先生。……お願いがあるんです」




「なにかしら?」




「はい。……えーと、みんな、ちょっとの間でいいから、この病室から外に出てもらいたいんです」




 私はそう言って真っ赤になった。私の言葉が意味するのは、この部屋で私と鬼平くんだけにして欲しいとお願いしているのがわかるからだ。




 すると東田先生は、にっこりと笑顔を浮かべた。




「わかったわ。……さあ、みなさん、外に出ましょう」




 東田先生はそう言ってくれた。そして園絵も有紀も瞬くんも、そして鬼平くんのお母さんも、もちろん東田先生も廊下へと出てくれて、ドアをきっちり閉めてくれたのである。




「……お、鬼平くん」




 私はそっとベッドから降りると鬼平くんに近づいた。




「……」




 私はかがんで静かに目をつむっている鬼平くんにそっと……、キスをした。そして鬼平くんを見守り続けた。




 ……帰って来て。




 私はそうしてしばらく待ち続けていたのであった。




 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「生忌物倶楽部」連載中


「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中





「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み




 も、よろしくお願いいたします。

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