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夢見るように夢見たい  作者: 鬼居かます
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58 第三話「夢見るように夢見たい」 飛翔

【毎日昼の12時に更新します】



 

 ――走った。




 すると驚いたことに、走る速度が現実世界とは異なっていた。




 私は決して足が速い訳じゃない。だけどそのときはどんどん加速していって、クラスの誰よりもはもちろん、オリンピックに出られるくらいにスピードがついていたのだ。そして速度はそのままじゃなく加速は更に進み、あっと言う間に鬼平くんの鵺に追いついていた。




「ねえ、行こう。……どこへでも行きたいところにいっしょに行くよ」




 私は鵺に話しかけた。すると鵺はうなずいたように見えた。




 鵺は校庭の外柵をすり抜けた。私は柵に登って道路側に降りる。見ると鵺はずんずんと住宅街を進んで行く。私もそれを追った。




 そして人通りが多い繁華街に出る。




「……待って。もう」




 鵺は実体がないので通行人を素通りして、ずんずん進んでいく。私は人波をかきわけて追いすがるけど、鵺との差が見る見る開いていくので大変だった。




 そして駅前に来たときだった。そびえる駅舎前に到着した鵺は驚いたことに、ふっと宙に浮いたのだ。




「ええっ……!」




 私は焦った。だけど鵺はそのまま空中に浮かんだまま、どんどん高度を上げたのだ。




 ……どうしよう?




 このままでは見失いそうだった。




(やってみる?)




 私は地を蹴った。




 ……浮いてる。




 驚いたことに私も空を飛んでいた。ふわっと言う浮遊感があって、地面からの距離が見る見る離れて行くのがわかる。




「飛べるの?」




 私は以前に何度も空を飛ぶ夢を見たことがある。だけど今回の夢は昔見た夢よりも、ずっとリアルで空気を切り裂いて、どんどん浮かんでいくのが実感できる。




「追いつけるかも」




 見上げると、遙か先にいる鵺との距離が見る見る縮まって行くのがわかる。

 そして私は鵺に追いついた。




 私は眼下を見下ろした。すでに人々はごま粒ほどの大きさになって、道行く自動車もミニカーサイズにまで小さくなっていた。




「空から見るとこんななんだ……」




 私は後方を振り返る。すると高校の敷地も見えた。四角い校舎もグランドも箱庭みたいに感じられた。




「行こう。どこまでも……」




 私は鬼平くんの鵺を追って雲が浮かぶ大空へと飛翔を続けるのであった。

 そしてやがて眼下の町並みはとっくに飛び去って、山を越えて次の街、次の街へと越えて行った。




「……海だ」




 今、どのくらい速度が出ているのかはわからない。だけと気がつけば私は海上に出ていた。埠頭や港に押し寄せる波頭が真っ白になって続いているのが見える。



 

 そして沖合には漁をする漁船の群れや、ゆっくりと航跡を引きながら動いている貨物船が見えた。その周りにはウミネコだろうか……。真っ白い鳥の群れがぐるぐる飛び回っているのが見える。




「やっぱり南なんだ……」




 天気はいつのまにか晴天になっていて、私は位置する太陽から鵺が進む方角が南だと理解した。私はひたすら前方を飛ぶ鬼平くんの鵺の後を追う。




 ……いったいどれくらいスピードが出ているんだろう?




 しばらくの間、海の上にはなにもなくて、いったい鵺と私がどれくらいの速度で飛んでいるのかはわからなかった。




 だけどやがてなにかが見えた。




「……島だ」




 地理に疎い私はその形や配置から、その島が何島かはわからない。だけど大小いくつもの島々で構成されるその島にも漁村や港があることから生活の様子がわかった。




 そしてあっと言う間にその群島を飛び越した。そうとうスピードが出ている様子だった。

 やがて鬼平くんの鵺は高度を更に上げた。私もそれを追う。そしてとうとう雲の上まで到達してしまった。相当の高さまで来ているのは私でもわかる。



 だけど風は感じるけど寒さはいっさいわからない。そんなとき途中で飛行機とすれ違う。大型の旅客機だった。

 その航空機とはすごいスピードですれ違ったので乗っているパイロットや乗客から私たちの姿が見えたかどうかはわからなかった。




「あれ……?」




 やがて鬼平くんの鵺は速度を緩めながら、ゆっくり下降し始めた。私もそれを追う。そして雲の下に出た。




「うわあ……っ!」




 眼下に広がったのはエメラルドグリーンの珊瑚礁だった。その広さと美しさに私は思わず驚きの声をあげてしまう。




「すごいきれい……」




 まるでそこは宝石箱のようだった。島々には熱帯の植物があざやかなグリーンを見せていて、打ち寄せるさざ波は真っ白な砂浜へと到着しているのが見える。




 そして鬼平くんの鵺は目標を見つけたようで、ひとつの小さな島へと、どんどん高度を下げて行く。




「待って……」




 私も同じように下降した。そして鵺が小さな島に降り立つのを確認して、私もそこへと着地した。




「……どこ?」




 私は辺りを見回した。

 そこは白い砂浜に囲まれた小さな島で小山が二つあり、そこに三本のヤシの木が生えていたのだ。




「ええっ……! も、もしかしてっ……!」




 私は思わず叫んでいた。




「……スリーココナッツアイランドだよ」




 見ると鬼平くんがいた。

 鬼平くんが制服姿で立っていたのだ。辺りをうかがうと鵺は姿を消している。

 たぶん……、いやきっと鵺が鬼平くんになったのだ。





 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「生忌物倶楽部」連載中


「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中





「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み




 も、よろしくお願いいたします。

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