54 第三話「夢見るように夢見たい」 見舞い
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それからの私は朝食を食べてから、じりじりしていた。
それはもちろん病院へのお見舞いだ。だけどひとりで行くのはなんだかだったし、園絵や有紀、そして瞬くんと行くのがスジだと思ったからだった。
「……おはよう。今日も朝からお見舞いに行こうと思うんだけど」
園絵から電話が来たのは午前八時半過ぎだった。
「うん。いいよ」
私はできるだけ平静に保った声を出したつもりだった。実は行きたくて行きたくて仕方なかったなんて恥ずかしくて言えないからだ。
それに不安もあった。
確かに手術は成功した。だけどその後の経過しだいで容態はどうにでも変化することなんて、素人の私でも知っているからだ。だからとにかく声色だけには気をつけた。私が動揺すればそれは園絵たちにも伝染するからだ。
「有紀と瞬くんにはどうするの?」
私はそう尋ねた。すると園絵は少し考えて答えた。
「瞬は私からする。だから有紀には、みすずから伝えて」
「うん。わかった」
そこで電話は切れた。私はすぐさまに有紀に電話する。
「もしもし、私。みすず」
「おはよう」
コールすると一度で有紀が出た。有紀もすでに起きていたらしい。私はちょっとびっくりした。呼び出し音の間に深呼吸を繰り返そうと思っていたからだ。
「きょ、今日も総合病院に行こうと思うんだけど。……さっき園絵から電話があったんだ。で、瞬くんには園絵から連絡してもらってるの」
私がそう経緯を伝えると、有紀はすぐに納得した。
「わかったわ。じゃあ九時半くらいには病院に到着できるから、そこで待ち合わせしましょう」
「うん」
私はそう答えて電話を切ろうとした。すると有紀が、待って、と言って来たのだ。
「……ねえ、みすず。心配だろうけれど、気をしっかり持ってね」
「……え? わ、私は大丈夫だよ」
私はぎくりとした。だけど平気を装った。でも有紀には通用しなかったようだ。
「あのね、……みすずの声、ちょっと震えてるよ」
「……」
「知っての通り、私も入院してたから。……私のときもお父さんとか、お母さんとか家族がみんなとても心配してるのがわかってたんだ。だから、みすずの気持ちはわかるつもりよ」
そう言ってくれたのだ。私はなんだかうれしくて、びっくりしてしまって、涙が自然にあふれてきた。
「……う、うん。有紀。ありがとう」
私はそう言って電話を切った。
……私はひとりじゃないんだ。
そんな当たり前のことを改めて思い返したのだった。
そして午前九時半。
私が到着すると、すでに園絵や有紀、瞬くんはやって来ていた。
「ごめん。私がいちばん遅かったね」
私が謝るとみんなは別に平気と答えてくれた。そして病院のロビーへと入って行く。
「五階の五○一号室だ。ちゃんと調べておいた」
そう瞬くんが言った。おそらく瞬くんはおじいさんにすでに訊いていたのに違いない。
私たちはエレベーターに乗って五階へと到着した。そしてナースステーションで来院名簿に記入する。続柄はもちろん『友人』と書いた。
「鬼塚順平さんは、面会謝絶とは言わないけれど、病室の中では静かにしてくださいね」
年配の看護師さんがそう告げた。私たちは全員うなずいて了解の意思を伝えた。
……やっぱりまだ安心しちゃいけないんだ。
私は気持ちを新たに引き締めた。確かに昨日、大手術したばかりなのだ。そうそう簡単に回復する訳じゃないのは確かだろう。
「個室なんだね?」
五○一号室は個室だった。入り口のプレートには『鬼塚順平』としか書かれていなかったからだ。
「別に俺が裏から手を回した訳じゃないんだぜ。……鬼平の容態が容態だから自然にそうなっただけだ」
瞬くんがそう説明する。
「そうなの? ……私はてっきり瞬がおじいさんにお願いしたとばっかり思ってた」
園絵がそう言う。確かに私もそう思った。
「鬼平の状態が状態だからな。……俺が言い出す前に、じいさんたちがそう手配してくれたんだ」
瞬くんが裏話をしてくれた。私は正直頭が下がる思いだった。
「あ、ありがとう……」
気がついたら私はお礼を瞬くんに言っていた。
「だから俺が理由じゃないんだって……」
そう言って瞬くんは笑顔を見せてくれた。
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私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




