52 第三話「夢見るように夢見たい」 術後
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――そこで私は目が覚めた。
時計を見るといつの間にか夕方近くなっていた。今日はお父さんもお母さんも仕事なので、家には誰もいないのだ。
「……なんか食べなきゃ」
私は正直、食欲は全然なかった。だけど食べておいた方がいいと思ったのだ。そしてキッチンを探すとカップラーメンが現れた。
私はお湯を沸かしてそれを食べた。別に味は感じなかった。
……手術はどうなったんだろう?
それだけが頭にあったからだ。すでにあれから何時間も経っている。
やがて夜になった。まずはお母さんが帰って来た。パートが終わったのである。
「鬼塚くんはどうなったの?」
お母さんが開口一番にそう質問してきた。やっぱりお母さんも心配で、仕事をしながらもずっと気になっていたらしい。
「脳の中に悪性の腫瘍が見つかったの。それで意識が戻らない可能性があるんだって……。でも、東田先生が手術してくれることになったんだ」
私はそう答えた。口が震えてるのが自分でもわかった。
「……悪性の腫瘍。心配ね。……でも、深い事情はわからないけど、東田先生なら大丈夫じゃないの?」
「う、うん」
私はそう答えた。自分でも歯切れが悪いと思ったけれど、お母さんはやっぱりそこを突いてきた。
「みすず。……東田先生を信用してないの?」
「ううん。……そんなんじゃない。も、もちろん信用してるに決まってるでしょ?」
するとお母さんは時計を見て、うなずいた。
「……手術に時間がかかってるのね?」
「……うん」
「……でも、大手術なんでしょ? みすずが小学生のときの手術もかなり時間がかかったわよ」
「……そ、そうなの?」
「ええ。……だからお父さんもお母さんも、心配で寝ずに待っていたわ」
私はその言葉を聞いて少し安心した。時間が長引いているのは悪い結果とは限らなくて、それだけ大変な手術だから時間がかかっている証だと思ったからだ。
「……あら? お昼はカップ麺だけなの? ……気持ちはわかるけど、みすずはまだ成長期なんだから、ちゃんとしたご飯を食べなきゃダメよ」
台所に行ったお母さんが私の食べ残しを発見し、私にそう注意した。私は素直に謝った。
やがてお父さんも帰宅した。
お父さんも、お母さんと同じように心配してくれていたけれど、お母さんに話した内容と同じことだけを告げた。するとお父さんも先生を信用して安心しなさいと言ったのだ。
そしてそのときが来た。
私のスマホに着信があったのである。
「……じいさんから連絡が来た」
瞬くんだった。
「ど、どうなったの……?」
私は勢い込んで尋ねていた。気持ちが焦り、心臓がバクバク動いている。呼吸もなんだか苦しい。
「安心しろ。手術は成功した」
「……ほ、本当っ!」
私は叫んでいた。そして同時に涙が両目から次々とあふれ、頬を伝ってスマホを濡らす。
「大手術だったらしい。……だが、無事に終わった。……後は意識の回復を待てばいいらしいんだ」
「……」
瞬くんは興奮していた。口調にそれが伝わってくる。だけど私は流れ続ける涙とともに嗚咽してしまって、うまく返事ができなかった。
「あんまり長話はできないんだ。園絵や平沼にも伝えなきゃならないからな」
そう言って瞬くんからの電話は切れた。瞬くんは彼女である園絵よりも先に私に連絡してくれたのだ。私にはその気持ちがとってもうれしかった。
そしてその夜。
ベッドに入ったときには気持ちは落ち着いていたけれど、それでも感情は高ぶっていたみたいでなかなか寝付けなかった。
それでもやがていつの間にか眠りへと落ちていったのだった。
――そして夢を見た。
私は青い空の下で気がついた。見回すとそこは見慣れた学校の屋上だった。そしてベンチに座っていたのだ。
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私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




