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夢見るように夢見たい  作者: 鬼居かます
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51 第三話「夢見るように夢見たい」 手術

所用により6月28日(水)までお休みさせていただきます。

誠に申し訳ございませんが、どうぞよろしくお願いいたします。



 

 ところが大勢の先生たちの反応は違った。




「東田先生の手術に立ち会わせてください」




 背の高いお医者さんがそう叫んだ。




「見学させてください」




 するとひげ面の先生も続いたのだ。




「ぜひ先生の執刀を拝見したいんです」




 こんな依頼だったのだ。

 すると先生はにっこりと笑顔を見せた。




「かまわないわよ。……すぐ始めるから準備してください」




 そう答えたのだった。

 どうやら東田先生は本当に伝説のお医者さんみたいで、この病院の外科医さんたちが、こぞって見学したがっている様子だったのだ。




「……すごい先生なんだね?」




 園絵が私に尋ねてきた。




「うん。……でもこれほどとは思わなかったよ」




 私は正直、驚いていた。

 確かに東田先生は幼い頃の私と鬼平くんを助けてくれたお医者さんだ。だけどこれはある程度の世界に一定数はいる存在、……つまりAクラスのお医者さんだと思っていたのだ。

 だけど東田先生はたぶん間違いなくSクラスの医師なのだろう。




「……あら、みすずさん」




 通路を歩く東田先生が私に気がついた。




「はい……」




「大丈夫だから。……きっと鬼平くんを取り戻すから」




「お、お願いします」




 私は思わず大声で叫んでしまっていた。きっと先生なら約束を守ってくれると信じていた。

 そして東田先生は通路の奥へと姿を消した。……大勢のお医者さんたちを引き連れて。




 それからの私たちはいったん帰宅することにした。




「……手術室の前で待ちたい」




 と、私が言い出したのだけれども、それだと鬼平くんたちのご両親の邪魔になるからと園絵や有紀、瞬くんに諭されたからだった。




 私は自宅に戻るとなんにも手につかなくて、結局、ベッドで横になった。外はいい天気で空が抜けるようなほど青い。




 ――そしていつしか私は夢を見ていたのであった。




 気がつくとやっぱり学校の屋上の上だった。

 そこで私は我に返ったのだけれども、やっぱり制服姿でベンチで横になっていたのだ。




 空はさきほどまでの晴天とは打って変わって真っ黒い雲がもくもくと広がっていた。




「……雨?」




 すると空からぽつりぽつりと降り出したのであった。

 私は屋上から避難しようと思って立ち上がる。そして歩き出したときだった。




 ――鵺がいた。




 給水塔の脇に今朝見た真っ白い鵺がうずくまっているのが見えたのだ。

 私はどうしようかと一瞬躊躇した。だけど気がついたら鵺の方へと走り出していた。あの鵺には悪意とか邪悪とかを一切感じなかったのを思い出したのだ。




「……ど、どうしたの?」




 私が近づいたとき鵺はやっぱり四つん這いになって地面でなにかを探していたのだ。だけど私が声をかけたことで一瞬、動きを止めて私の方を見た。




 もちろん鵺は目も鼻も口もないので、はっきりとは言えないんだけれど、それが私には振り返ったように感じたのだ。




「なにを探しているのかな?」




 私は再び尋ねてみる。すでに雨は大粒になっていて、真っ白なコンクリートの屋上に黒い大きな染みをぽつりぽつりと作り始めている。

 だけど鵺は私にはなにも答えずに、またしばらくすると地面でなにかを探し始めているのだ。




「なにを探しているのかわかったら、いっしょに探してあげられるのにね」




 私は鵺がかわいそうになって、ついそんな言葉まで言ってしまっていた。




 そのときだった。




 ――鵺がうめき始めたのだ。




「……う、う、う」




 今朝も聞いた苦しそうな声を出すと、鵺は頭を両手で抱えて動けなくなってしまったのだ。




「ど、どうしたの?」




 私は尋ねるけど、やっぱり鵺はうめいているだけだ。

 私はそっと手を差し伸べた。するとやっぱり鵺の身体は霧か煙みたいな感じなので、その頭の中へと私の手がすっぽりと埋まってしまったのだ。




「……冷たいね」




 やっぱり今朝方と同じように鵺の身体は冷たかった。私がそうしていると鵺は少し苦しみが安らぐようで、うめくのを止めた。

 だけど私は本当に手が冷たくなってきたので、また、つい手を抜いてしまったのだ。




「……う、う、う」




 すると鵺はまた両手で頭を抱えてうめき始めた。私はどうしたらいいんだろうと考えた。だけどそのときだった。

 鵺の身体が一瞬光ったかと思うと、ふっと姿を消してしまったのだ。




「……あれ?」




 私は辺りを見回した。だけど鵺は完全に消えてしまっていたのであった。




 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「生忌物倶楽部」連載中


「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中





「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み




 も、よろしくお願いいたします。


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