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夢見るように夢見たい  作者: 鬼居かます
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49 第三話「夢見るように夢見たい」 お見舞い

【毎日昼の12時に更新します】



 そして帰宅する途中だった。

 空はすっかり明るくなっていて、今日は晴れそうな一日の始まりだった。




 私は今日晴れたのが、ちょっとうれしかった。晴れはいい日である。だからもしかしたら鬼平くんの意識が戻るかも知れないと思ったのだ。




 そして家にはこっそり戻った。それは神社にお参りに行ったことをお父さんやお母さんにばれるのが恥ずかしかったし、他の人に話してしまうと御利益が減ると思ったからだ。




 そして朝ご飯を食べた後だった。




「九時に病院で直接待ち合わせようと思うんだけど……」




 園絵から電話があったのだ。私はそれに返事をした。すると園絵は有紀や瞬くんにも伝えてくれると言う。私には園絵のそんな行いがうれしかった。




 そして午前九時きっかりに総合病院に向かったのである。




 待合室はすでに混んでいた。今日は土曜日なのに外来の診察があるらしい。風邪で来院している人や松葉杖をついた人、足腰が悪そうなお年寄りなどが目についた。




「……やっぱり面会謝絶だって言われたわ」




 受付に行って鬼平くんのことを尋ねてくれた有紀が、がっかりした顔で私たちのところへと戻ってきた。




「で、でも仕方ないよね。……なんて言ったって集中治療室だもん」




 私は気落ちしながらも、できるだけ元気に言ってみた。果たして効果があったのかはわからないけど、みんなはうなずいてくれた。




「でも、治療室の前まで行ってみるか?」




 瞬くんがそう告げた。私もできるだけ鬼平くんに近い場所の方が祈りが通じると思ったので、うなずいた。

 そして私たちはエレベーターに乗って、集中治療室の近くの廊下まで来たのである。




「……もしかして順平のクラスの人たちですか?」




 廊下に設置されたベンチに座っていた中年の男女がそう尋ねてきた。




「はい。そうです」




 私が代表して答えた。見ると鬼平くんの両親だとわかった。お父さんにもお母さんにも鬼平くんの面影を感じることができたからだ。




「この度は大変なことになって……」




 有紀がそう言うと、鬼平くんの両親は深々と私たちに頭を下げてくれた。




「順平のためにわざわざ来てくださってありがとうございます」




 鬼平くんのお父さんがそう言った。




「……ま、まだ意識は戻らないんですか?」




 私はいちばん大事なことを怖々と尋ねた。すると鬼平くんのお父さんもお母さんも残念そうに首を横に振った。




「まだ、戻りません。でもこの病院の先生たちは一生懸命やってくれています」




 そう答えたのだ。




 園絵、有紀、瞬くん、そして私はなんて言ったらいいのかわからなかったので、頭を深々と返すしか仕方なかった。




「……さきほど先方のご両親と生徒さんが来てくれました」




 鬼平くんのお母さんがそう言った。先方の人たちとは鬼平くんにボールをぶつけてしまった二組の男子とその両親だろう。




「とても丁寧な方々で、順平のことを心配してくれました」




 そうお母さんは付け加えた。恐らく鬼平くんのご両親は今回の件は事故としてすっかり納得していて、相手を恨むなどこれっぽっちも思っていない様子だった。




 ……鬼平くんのご両親らしいな。




 私はそう思った。鬼平くんは誰かを恨んだりねたんだりする性格じゃない。それがご両親を見てもそうだと思ったからだ。




 そのときだった。




「……あ、いけね」




 瞬くんがあわててスマホを取り出した。見るとマナーモードでぶうぶう電話が鳴っている。




「病院なのにスイッチを切るのを忘れてた……」




 そして瞬くんは、鬼平くんの両親に頭を下げると大急ぎで階段を降りて行った。おそらくたぶん電話に出るために違いない。




 そして残された園絵と有紀と私は、鬼平くんの両親に頭を下げてこの階のロビーへと向かった。そこにはベンチがいくつも並んでいたけれど、一階の外来のベンチと違って私たち以外の姿は見えなかった。




「……鬼平くんのご両親、できた人たちだね」




 園絵がぽつんと言った。




「そうね。全然恨んでいないみたいだわ。まったく取り乱していないし……」




 有紀もそう答える。私にはなぜだかそれがうれしかった。二人とも鬼平くんのご両親がいい人だと思ってくれたからだ。




 そしてしばらく私たち三人はぽつりぽつりと会話をしていた。それは鬼平くんに関するものだったり、なんでもない他愛もないものだったりとしたけれど、長く続く話題にはならなかった。




 ……みんな鬼平くんが心配なんだな。

 私はそれが痛いほどうれしく感じられた。みんな鬼平くんに友情を感じてくれているのがうれしかったのだ。





 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「生忌物倶楽部」連載中


「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中





「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み




 も、よろしくお願いいたします。

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