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夢見るように夢見たい  作者: 鬼居かます
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48 第三話「夢見るように夢見たい」 神頼み

【毎日昼の12時に更新します】



 

 ――そして夢を見た。




 気がついたらいつもの屋上にいた。

 それはもちろん私が毎日昼寝する学校の屋上で、そのときも辺りに人影がなかった。




 ……いや、いた。




 正確にはそれは人じゃなかったけれど、人の形をしていたのだ。




 ――鵺っ!




 私は身構えた。それは真っ白で大きさは人と同じくらい、そして目も鼻も口もなくて、四つん這いになって屋上の地面を手探りで進んでいた。




「……なにしてんだろう?」




 私は決して警戒心を解いた訳じゃない。だけどその鵺から敵意とか憎悪とかの悪の感情が一切感じられなかった。

 だから私はしばらく様子を見ることにした。




「……う、う、う」




 鵺は悲しそうな声を出していた。それはまるでなにかを懸命に探しているんだけど、その目的のものがどうしても見つからないように思えたのだ。




「……な、なに探してるの?」




 気がついたら、私は声をかけていた。

 すると一瞬だけ鵺の動作が止まる。そして頭をあげて辺りを見回したのだけど、私には気がつかないようで、またしばらくすると手探りで地面を探し回っているのだ。




「……う、う、う」




 私はそのもの悲しい声に胸が張り裂けそうになる。なんだかとっても心の一部を刺激するのだ。




「ねえ、いっしょに探してあげようか?」




 思わず私はそう言って、鵺に近づいていた。すると鵺はまたしても一瞬動きが止まり、声の主である私を探そうとする。




「私なら、ここにいるよ」




 そう言って私はそっと鵺に手を差し出した。そのときには私には鵺に対する警戒心はまったくなくなっていたからだ。




「……う、う、う」




 鵺は私に気がついたようで四つん這いのまま、手を差し伸べてくる。私はそっとそれに触れた。

 ……いや、触れようとした。だけど触れなかった。




 鵺の身体はどうやら霧か煙みたいなものらしく、私の手はすり抜けて鵺の白い霧の中へと差し込まれただけだった。私の手の先はその心臓辺りで姿を消している。




「……冷たい」




 それが感想だった。まるで氷の塊にでも指先を突っ込んだかのような冷たさが伝わってくる。私は思わず手を引っ込めてしまった。




 その行為に対して私は罪悪感みたいなものを少し感じた。

 やさしい手を差し伸べるつもりだったのに、想定外のことが起きたので私は鵺を拒絶してしまったのだ。それが私には自分自身の行為が、ただの偽善者の行為に思えてならなかった。




 すると鵺はまたなにかを探し始めて、両手で地面を探していた。




 そのときだった。




「あっ! あぶないっ」




 私が叫んだときは遅かった。鵺はするりとフェンスのすり抜けてそのまま落下してしまったのだ。




「ああっ!」




 私はフェンスをよじ登り向こう側へと降り立った。そして屋上の縁から下を見下ろした。だけど白い鵺の姿は見えなかった。




 ――そして目が覚めた。




 外はもう薄明るくなっていた。

 私は目覚めが悪く、二度寝ができそうもない理由からと、もう一つの理由から家をそっと抜け出したのであった。




 そして到着したのは近くの神社だった。その神社は、私の近所ではかなり大きな神社で、夏祭りのときにはたくさんの露店が出て賑わうお社だった。

 だけどこんな秋の早朝には人気(ひとけ)はまったくなかった。




 私は鳥居をくぐり、石畳を踏みしめて拝殿の前に来た。早起きの鳥たちがそこかしこで鳴き声をあげている。そこで五円玉を出してお賽銭にした。そして両手を合わせて深々と頭を下げたのだ。




 お願いしたのはもちろん鬼平くんの容態の回復だった。若いときのお父さんが骨折したお母さんに対してそうしたように、私も神様にお願いしようと思ったのだ。




 そのときだった。




「お嬢さん。おはようございます」




 振り向くとおじいさんの神主さんが立っていた。ほうきを片手に境内を掃除していたようだ。




「おはようございます」




 私も返事をすると神主さんはするすると私の近くまでやって来たのだ。




「なにかお願いごとがあるんですね?」




「はい」




 私は答える。




「だけど、それでは神様にはお願いが届きませんよ」




「え?」




 私はなんのことだかわからなかった。でもお願いが届かなければ来た意味がない。




「拝み方のことです。お嬢さんがしたように両手を合わせるのはお寺で仏様に拝むときです。神社で神様にお参りするときは二礼二拍手一礼と言って、二回頭を下げて、二度手を打って、最後に一礼するのが正しいのですよ」




 そう言って神主さんはお手本を示してくれたのだ。私はそんなことは今まで全然知らなくて、神社でもお寺でも同じように拝んでいたのだ。




「そ、そうなんですか……? じゃ、じゃあどうすればいいんでしょうか?」




「二礼二拍手一礼でやり直せば、お願いは叶うと思いますよ」




 そう言ってくれたのだ。そこで私は神主さんが教えてくれたように二回頭を下げるやり方でやり直した。するとどこで願いを唱えればいいのかタイミングがわからないので、最後の一礼のときに深々と頭を下げて、鬼平くんのことをお願いしたのであった。





 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「生忌物倶楽部」連載中


「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中





「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み




 も、よろしくお願いいたします。

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