47 第三話「夢見るように夢見たい」 真実の告白
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「……このことは東田先生は知っているのか?」
突然、お父さんがそう尋ねてきた。
「ええっ? ……どうだろう? わかんない。でも、なんで?」
「……鬼塚くんという子は頭を打って意識をなくしたんだろう? そしてお前と同じで東田先生に診てもらっていたんだろう? だからこのことは先生にひとこと言って置いた方がいいんだと思うんだ」
私はお父さんの言葉に衝撃を受けた。確かに鬼平くんは頭を打ったのだ。だとすると確かに東田先生に教えておいた方がいいに違いない。
「……でも、どうして鬼平くんが東田先生に診てもらっているって知ってるの?」
私は疑問に思ったことを口にした。お父さんがそのことを知っている訳がないからだ。するとお父さんはリビングを指さした。
「あ、お母さん……」
私は急に赤くなった。
確か以前に鬼平くんのことをお母さんに話したことがあるからだ。だけどそこまでお父さんが知っていると言うことは、私が常日頃学校で起こったことをお父さんはお母さんに聞いているに違いない。
だとすると私が鬼平くんのこともよくしゃべると言うことも、すっかりばれている訳で、そういうこともお父さんは百も承知なのを知ったのだ。
「お、お父さんは嫌じゃないの?」
「なにがだい?」
私はちょっと気まずくなった。
「……だ、だって娘が年頃になったときに男の子のことを話題にすると、父親はふつう不機嫌になるって話だよ」
するとお父さんは笑顔を見せてくれた。
「それは一般的な父親だろう? お父さんは仮にお前がその男の子を家に連れてきても平気だ」
「そ、そうなんだ……」
私は驚いていた。常日頃、勉強しなさい。早寝をしなさい、って、口うるさいお父さんが、実はそんな物わかりのいい人だったなんて思わなかったからだ。
「お父さんはみすずを信頼しているからな。……もし、その子が好きなのなら、大事にしなさい」
そう言ってお父さんは部屋を後にした。
残された私は、しばらくぼんやりしていたけれど、やがてスマホを手にしていた。それは園絵や有紀に電話するためだった。
二人は私を心配してくれて家まで送ってくれたのだ。そのお礼がまだ済んでいないことを思い出したのだ。
「……そう、元気になったのなら、大丈夫よ」
園絵はそう言ってくれた。そして次に電話した有紀の反応も同じだった。そして二人とも明日、病院に行ってみようと言ってくれた。明日は土曜日で学校は休みだからだ。
「でも、集中治療室だよ。きっと面会謝絶だよ」
そのことも私は園絵と有紀に伝えた。だけと二人ともまるで話を合わせたかのように、わかっているけど、家にいるより安心でしょ? と言ってくれたのだった。
そして私は深呼吸した。
それはこれから電話をかける相手に大事な話があるからだった。そしてその相手は瞬くんだ。
「……もしもし、私、みすず」
「ああ。……大丈夫か? 園絵もお前のことを心配してたぞ」
私が電話をかけるといつもと同じ口調で瞬くんが答えてくれた。
「あのね……、ちょっと大変なお願いがあるんだけど……」
私がそう話を切り出した。
「大変なお願い? なんだ? できることならなんでもするぞ」
すると瞬くんはそう言ってくれたのだ。
「あのね、……東田産婦人科医院って知ってる?」
「東田産婦人科医院? ……どっかで聞いたな。……ああ、お前の家の近くの産婦人科だな?」
「うん」
どうやら瞬くんは知っている様子だった。
「あ、あのね。……実はそこの先生が私と鬼平くんのかかりつけのお医者さんなの」
「……ほ、本当なのか? だ、だって産婦人科なんだろう?」
瞬くんの驚いた声が聞こえてきた。私はちょっとの間、迷ったけれど、やっぱり話をしようと覚悟した。
「あのね、……驚かないで聞いて欲しいんだけど」
「ああ。言ってみてくれ」
「実は……。私と鬼平くんは一度死んでるの。……そしてそこの東田先生の手術で生き返ったの」
「……ど、どういうことだ?」
怪訝そうな声が電話機から漏れてきた。私は懸命に言葉を考える。
「あ、あのね。……私と鬼平くんはただの人間じゃないの。バイオサイボーグなのよ」
「バ、バイオサイボーグ? ……なんだそれ?」
私は説明した。
私も鬼平くんも交通事故で一度死にかけて、そして脳に人工細胞を移植されたことで生き返ったこと、そしてその副作用で夢の世界で他人にはない能力を発揮すること、そして今だに定期的に東田先生の診察を受けていることだ。
時間にして三十分くらい話していたと思う。私はすっかり口の中が乾いていて、つばを飲み込もうにも飲み込めない状態だった。
「……話はわかった。つまりお前と鬼平の頭の治療には、その東田先生が必要だってことだろう?」
「うん」
「わかった。じいさんに頼んでみる」
「ほ、本当っ?」
私はうれしくて舞い上がった。思わず大声で叫んでしまったのである。
「……だけど、話してみるだけだ。……病院ってのは結構閉鎖的で、そう簡単にこちらの思い通りにならないことが多い。……特に先端医療に関してはそうなんだ」
「……そ、そうなんだ」
私は瞬くんのおじいさんに頼めばなんとかなると思ったから少しがっかりした。理事長である瞬くんのおじいさんならば、鶴の一声で解決すると思ったからだ。
「まあ、そう心配するな。ウチの病院の脳外科医もそうそう悪い訳じゃない。俺たちがわいわい騒いだところで、明日あたりひょっこり鬼平が意識を取り戻す可能性だってあるんだ」
「そ、そうだよね」
私は言われてそう思った。確かに鬼平くんが担ぎ込まれた総合病院は、ここいら辺りではいちばん大きい病院なのだ。だからお医者さんも設備も一流のものがそろっているのは素人の私でもわかる。
「とにかく寝ることだな。寝不足だとお前まで倒れちまうぜ」
そう瞬くんは励ましてくれた。私はそのお礼を言って電話を切った。
そして眠りにつこうとした。
だけど、やっぱり鬼平くんのことが気になって、全然眠くなれなかった。だけど、悶々とした時間を我慢していたら、やがていつしか眠りについていた。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




