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夢見るように夢見たい  作者: 鬼居かます
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46 第三話「夢見るように夢見たい」 憔悴

【毎日昼の12時に更新します】




「……大丈夫よ」




 私はそう答えたけれど、園絵も有紀も頑として首を縦に振らない。




「みすず。……顔が真っ青よ」




 有紀がそう言って私の手を取る。私は自分では平気なつもりでいたけれど、どうやらかなり精神的に参っているみたいだった。




 そして結局、私は園絵と有紀に付き添われて帰宅した。

 お母さんはその姿を見て、心配したけれど事情を園絵と有紀が説明してくれたので、納得した様子だった。




「……みすず。夕ご飯ができたわよ」




 お母さんが部屋のドアのノックした。私は帰宅してからずっとベッドに横たわっていたのだ。




「あら、制服に皺がつくわよ」




 お母さんがそんなことを言った。私はそんなことにちっとも気が回らずにいた。そしてもしそのことに気がついたとしても着替える元気なんて、なかったに違いない。




「……お母さん。集中治療室に入院するって、実際はどうなの?」




「……その鬼塚くんのことね。……お母さんにはわからない。でも、みすずが小学校の時に手術したときは、そこに入ったのよ。でも元気になって退院したじゃない。だから……」




 安心しなさい、って言いたいのだろう。私はお母さんの言葉を先読みした。

 正直、ご飯を食べる元気も食欲もなかったけれど、私はお母さんが私に気を遣ってくれているのがわかったので、ベッドから起き上がることにした。




「……着替えるから」




 私がそう言うと、わかったわ、と言ってお母さんがドアを閉じてくれた。そしてその後、自分では急いだつもりだったけれど、実際はのろのろとした動作で私は楽な服に着替えていた。




 そして階下に降りてリビングに入った。




「とにかく胃になにかおさめなきゃダメよ」




 そう言ったお母さんが用意してくれたのは、うどんだった。食欲もなく気力もない私にはその食事の味よりも、気を利かせてくれたお母さんがうれしかった。




「……集中治療室っ!」




 夜になって一階から帰宅したお父さんが、そう大声で言って、その後絶句したのが聞こえてきた。どうやらお母さんがお父さんに鬼平くんのことを伝えたらしい。




 そしてその後だった。




「……みすず。話がある」




 そう言ってお父さんが私の部屋をノックしたのだ。




「……みすず。お母さんから話を聞いた。……みすずはその男の子が好きなのかい?」




 突然、お父さんがそう言った。私はびっくりしてベッドから上半身を起こした。お父さんが私の恋愛に触れたことなんて初めてだったからだ。




「……ううん。わかんない。でも……」




「心配なんだね?」




「うん」




 私は正直に答えた。するとお父さんは私の頭をなでた。私は瞬間、びくりと反応してしまう。それはお父さんに年頃になってから触れられるなんて経験がなかったからだ。だけどそれはちっとも嫌じゃなくて、とっても暖かい気持ちがした。




「……実は、お父さんもお前くらいのときに同じ経験をしたんだ」




 お父さんが床にどっかりとあぐらをかいてそう言い始めた。お父さんが背広姿のままでそんなことをしたのは初めてだったし、私に部屋に座るのも記憶にない。私はちゃんと改まった話だと思って、ベッドに座り直した。




「同じ経験?」




 私が尋ねるとお父さんが深くうなずいた。




「お父さんが十七歳だったときに、お母さんが大怪我をしたんだ。階段から落ちて足首を骨折したんだ」




 初耳だった。びっくりした。




「そのときに実はお父さんはお母さんが好きだった。……だけど告白できない状態だったんだ」




「ど、どうして?」




 するとお父さんは少し照れた顔になった。




「告白して振られたらどうしようって考えていたからだ。……だけどお母さんが入院したことを知ったら、いても立ってもいられなくて、翌日に病院にお見舞いに行ったんだ」




「……へえ、そんなことがあったんだ?」




「ああ。それで病室に行ったらお父さんの方が顔色が悪いってお母さんに笑われた。それからお父さんは毎日、神社にお参りに行ったんだ」




「神社に?」




「ああ。神頼みだ。……それまで神様なんて信じていなかったけれど、お母さんが退院して、松葉杖が取れるまで毎日欠かさずにお参りを続けたんだよ」




「……」




「だからお母さんが元気に戻ったときは、お母さんは神様のお陰だと言ってくれた」




「……そしてつき合い始めたんだ?」




「……ま、そ、そのことはお母さんから聞きなさい」




 そう言ってお父さんは答えを濁した。だけと私にはその話がちょっとうれしかった。





 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「生忌物倶楽部」連載中


「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中





「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み




 も、よろしくお願いいたします。

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