33 第二話「遠い日」 自然に
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――そう。
確かに園絵と瞬くんの場合は出会いがふつうとは違った。
家ももともと近所で幼稚園のときから顔見知りだったし、小学校も中学校も同じでいっしょに成長してきた幼なじみなのだ。
だから年端もいかないときから、互いの家に遊びに行く間柄だったし、異性を意識し始めた年頃のときにちょうど相手が目の前にいたと言うのが正解だろう。
でも、それでもきっかけの言葉はあったはずだ。そう思った私は更に突っ込んでいた。
「で、でもさ、告白とかしたんでしょ?」
私は園絵と瞬くんを見た。
「……こ、告白なんて、あったかな? 別になかった気がするんだけど」
「俺も憶えていない。……気がついたら、お互いにそう言う気持ちになっていただけだ」
そう二人は答えたのであった。
でも、園絵も瞬くんも視線をあからさまにそらしていたし、言葉の切れも悪いので、私は絶対に隠し事をしていると思ったのだった。
「嘘でしょ? ……絶対にどっちかがどっちかに告白したから正式につき合い始めたんでしょ? ……まさか照れ隠し?」
私がそう言うと、それは図星だったようで、園絵も瞬くんも下を向いてしまった。
「……みすずさん。人前だから言いにくいんじゃないのかな? 僕と平沼さんと言う他人もいるしさ。そういうことは後で廊下ででも行ってこっそり尋ねた方がいいんじゃない?」
すると鬼平くんがそう言った。
「そうね。……そういうお話は当人たちにとっては大切な秘密だから、他人の前では言いづらいんじゃないかしら?」
有紀もやんわりとそう口にした。
「……あ、そうだね。……ごめんね」
私は鬼平くんと有紀が言うのが正論だと思ったので、正直に非礼をわびた。
だけど園絵と瞬くんはそのことは全然平気だったみたいで、互いに顔を見合わせた後、園絵から口を開いてくれた。
「……お互いを意識し始めたのは小学校五年くらいからなの。……毎日登校するし、下校もいっしょだったから会話をする機会も多かったし」
「ああ。……確か中学校に行くときだった。そのとき園絵の両親が園絵を私立の中学校に行かせるつもりだったんで、俺たちお別れになるって思ったんだ。それがきっかけだったかな?」
「うん。……結局、私立には行かないことになったんだけど、瞬くんとは別々になっちゃうから。……だったら付き合おうかってお互いに自然に言い出した感じだったと思う」
園絵も瞬くんも照れながらそう教えてくれたのだ。
「……自然に?」
私は疑問を感じた。男と女が付き合うのはそれなりの覚悟があるはずだ。例えそれがまだ子供の頃だったとしても、それなりの気構えがなくては決心はつかないはずだ。
「うん。ホントに自然だった」
「ああ。今となってはどっちが先に言い出したのかさえ、憶えてない」
そう言うのだ。
それからは園絵と瞬くんのつき合い始めの頃の話になって、私たちは大いに盛り上がった。私も鬼平くんも有紀も、園絵と瞬くんの過去の失敗話を笑顔で聞いていたのだ。
そして昼休み後半。
私は日課である屋上へと向かった。その日は曇り空で空はすっきりしてなかったけれど、雨も降りそうもないので私は人気のないベンチに座った。
「お邪魔だったかな?」
声に振り返ると鬼平くんが立っていた。
「別に大丈夫だよ。……今日はなんだか盛り上がっちゃったんで、実は眠気はないの」
「じゃあ習慣でここに来ちゃっただけなんだ?」
「うん」
私は答えた。そして鬼平くんの言葉を待った。わざわざこんなところまで来るにはなにかの理由があるに違いないと思ったからだった。
「……お弁当のとき、恋愛の話をしたよね? あれって、みすずさんが今朝見た夢と関係あるんじゃないのかな?」
突然、そう言い出したのである。
「わ、わかった?」
「うん。……今日のみすずさんは朝からどこか上の空だったしさ。……例の千葉美佐子さんのことじゃない?」
「ええっ……! ど、どうしてわかるの?」
「うん。新しい別の夢ならば、そこで出会った人のことを話すと思った。でも、そんなことは言わないで、いきなり恋愛の突っ込んだ内容を聞き始めたから、その千葉さんと夢の中でなにかあったのかな? って考えたんだ」
私は驚いていた。鬼平くんの推理にびっくりしたのだ。
「うん。……千葉さんの夢を今朝見たの。でね、千葉さんはある人の気持ちを知りたいんだって」
「相手の人と脈はありそうなの?」
「うん。お互いになんとなくそんな素振りみたいなんだけど、千葉さんは告白して断られたらどうしようって思ってるみたい」
「みすずさんは、その千葉さんが好きな人と会ったの?」
「ううん、会ってないの。ただ相談されただけ」
「それで園絵さんや松田に恋愛のきっかけを訊いたんだ」
「うん」
私はうなずいた。そして思いっきり伸びをする。
「……でもね。私が考えても仕方ないかも。……だって千葉さんは実在するかどうかわからないんだよ」
「そうだね。五組にいなかったからね」
「うん。……千葉さんは千葉さんの夢はパラレルワールドに繋がっているんじゃないかって言ってた」
「パラレルワールド?」
「うん」
そう答えた。私が今いるこの世界と同じように、千葉さんが実在する異次元があって、私と千葉さんは夢を媒介にして出会ったんじゃないかと言う千葉さんの仮説のことを全部説明したのだ。
すると鬼平くんは黙って腕組みをしていた。そして私の話が終わるまでひとことも口を挟まずに真剣に聞いてくれていたのだ。
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私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




