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夢見るように夢見たい  作者: 鬼居かます
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31 第二話「遠い日」 告白

【毎日昼の12時に更新します】



 

 ほぼ初対面の私に、なぜ悩みを相談するのかの理由がわからないけど、きっと夢の中で会う異次元の友人だから気軽なんじゃないかと考えることにした。




「なに? 悩みって?」




「うん」




 すると千葉さんは少しうつむいて考え始めた。私は仕方なく黙って待つことにした。




「……あ、あのね。実は、す、好きな人がいるの」




 しばらく経ってから千葉さんがそういきなり告白した。私は驚いてしまってしばらく固まってしまっていた。 




「……す、好きな人?」




「うん。……でも煮え切らないのよね」




「それって千葉さんが? ……そ、それとも相手の人が、ってこと?」




 すると千葉さんは私を真っ直ぐに見た。顔はちょっと赤かったけれど、その態度は凛としていた。




「うん。……確かに相手もだけど、私もなのよね」




「ふーん。……でもお互いに好きだってことは確かめたんでしょ?」




 すると千葉さんはちょっと困った顔になった。




「それが……、まだなの」




「そ、そうなんだ。で、でも仲はいいんでしょ?」




「うん。仲はいいのよ。ケンカもしてないし、電話だって毎晩するくらいだわ」




「……それなのに確認してないんだ?」




 私がそう尋ねると千葉さんはうつむいた。そして靴のつま先で地面にぐりぐりと丸を描き出す。




「うん。……私から気持ちを尋ねてもいいのよ。……それはわかっているつもりだわ。だけど、……怖いのよ」




「怖い?」




「うん。……もし断られたらどうしようって思ってしまうの。

 ……あの人とは同じクラスだから、断られても毎日顔を合わさなければならないでしょ? そのことを考えると、どうしても二の足を踏んでしまうのよ」




「……」




 私にはその千葉さんの気持ちがわかる気がした。

 好きな人がいる。そしてその人が同じクラスと言うのは理想的な展開だ。どうしてかと言えば、毎日姿や声を見聞きできるし、接近できる可能性だって高いからだ。




 だけど、……その逆の不安もある。




 それは千葉さんが指摘したように、もし告白して断られたら、お互いに気まずい毎日が続くのだ。それは学年が変わるまでずっと日々苦しまなくてはならない。




「……だ、誰か他の人に訊いてもらうとかは?」




 私はそう千葉さんに尋ねた。




「他の人?」




「うん。誰かお互いに親しい人を間に挟んでさ、その人に確かめてもらうの」




 私は自分でも名案だと思った。そういう関係の人物が仲を取り持ってくれたら、気持ちの確認はしやすいし、もし万が一ダメだった場合でもダメージは最低限だと考えたからだ。




 だけど、千葉さんの顔は冴えなかった。




「……でも、いないのよね」




「い、いないんだ」




「ええ。クラスに親友はいるの。でも私たちの仲はお互いに秘密にしているから、クラスではあまり話をしないから。……電話や外で会っているだけなの」




「そうなんだ」




 私はちょっとがっかりした。せっかくのアイディアだと思ったからだ。だけど該当する人がいないんじゃ仕方ない。




「……ねえ、どうして浅井さんはこんなに私に親切にしてくれるの?」




 突然、千葉さんが尋ねてきた。




「あ、……うん。えーと、私、ちょっと他人には言えないけど、特異体質なんだ」




「特異体質?」




「うん。……夢がふつうの人よりもずっとリアルに感じられるの。だからできるだけハッピーエンドな物語しか読まないようにしているし、夢の中でもできるだけ幸せな気分でいたいからなんだ」




「へえ、そうなの」




「うん。……ホントはとっても人見知りなんだけど、夢の中だと私、大胆になれるんだ。だから会ったばかりの千葉さんとも親しく話せるし、なんとか応援したいって思ったんだよ」




 私がそう言うと千葉さんは楽しそうに笑った。

 だけど……、私には千葉さんにどうしても伝えられない点があった。




 ――鵺だ。




 千葉さんは、ここが夢じゃなくてパラレルワールドと言った。だとしたら鵺の心配はない。

 でも私は川向こうにいて桜を狂い咲かせるグレーの鵺をさっきも見ている。

 確信はないんだけれど、今までの経験から言って鵺が登場するのはいつも夢の中だった。




 だとしたら、ここはやっぱり千葉さんの夢世界……?

 夢世界だったとして、あの鵺が千葉さんに関わりがあった場合は……?




 ……だったとすると、千葉さんが恋愛のことで心配が溜まり不満が爆発してしまうと、今はおとなしいあの鵺が豹変して暴れ出すかも知れないのだ。あのときの有紀のように……。




 だから私は先回りして鵺を防ごうと無意識に思ったずるい性格なのかもしれない。




 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「生忌物倶楽部」連載中


「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中





「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み




 も、よろしくお願いいたします。

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