30 第二話「遠い日」 悩み
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そしてその夜だった。
私は楽しみにしているドラマを見終わると、早めにベッドに入った。その日は別に宿題はなかったし、授業の復習は夕食前に終わらせてしまっていたからだ。
そして眠りは早かった。
夢の始まりは水音だった。
「……あ」
私は瞬時に気がついた。ここは前回の夢でグレーの鵺に出会ったところだ。
私は音を立てぬようにして辺りをうかがった。
「……いた」
鵺だった。姿形からして前に会った鵺のような気がした。鵺は対岸のベンチに座っていたのだ。
「なにしているのかな?」
私は鵺を様子見た。鵺は私に気がつかないようで、じっと足元を見て静かに座っていた。
そして桜並木はやっぱり季節がおかしいようで、開花と落葉を繰り返していたのだった。
私はそれを見ていると気が遠くなるような感覚に襲われた。
そして目の前が暗転する。
――「あれ? 浅井さん?」
気がつくと私は誰かに起こされていた。見ると私の顔をのぞきこむ千葉さんがいた。
「あ、私、また夢見てるのかな?」
そう千葉さんが言ったのだ。
私は辺りを見回した。そこは昼間夢見たときと同じ公園で、私はベンチで横になっていたのだ。見ると私も千葉さんもやっぱり大沼東高校の制服だった。
「夢? そうかも」
私は上半身を起こしてベンチに座り直した。するとその横に千葉さんが座る。
「私ね、あれから一組に行って、浅井さんを探したの。……だけどあなたはいなかったわ」
「うん。存在していないってことだよね」
「そ、そうなの。……ねえ、これってどういうこと?」
私も私が千葉さんを五組まで行って捜したってことを話した。そしてそれだけじゃなくて自殺未遂事件も全校集会もなかったことを説明した。
すると千葉さんは驚き顔の後、少し考えこんでいた。
「……これってパラレルワールドなのかしら?」
「パラレルワールド?」
どこかで聞いた言葉だ。だけど私にはその答えがすぐには浮かばなかった。
「うん。並行世界ってこと。SF小説の世界ではよくあることなの。つまり私と浅井さんは別の世界の人間で、お互いに違う次元に存在する大沼東高校の生徒ってことじゃないのかしら」
「ああ、……そういうことね」
納得した。
現実にパラレルワールドが存在するかどうかなんてわからないけど、これは元々、夢の世界なのだ。だからそういうこともあり得ると思ったのだ。
「でもリアルよね。……私には浅井さんが実在するとしか思えないわ」
「それは私も同じだよ。今、私の目の前にいる千葉さんが私の世界では実在しないなんて思えないんだけど」
私はそう言って笑った。すると千葉さんも真夏のひまわりのような笑顔を見せてくれた。
「ねえ、私たち友達になれそうかしら? なんだか気が会うような感じがするのよ」
「そうだね。……うん、きっと親友になれると思うよ」
私は心底そう思った。同じ制服を着て、同じ学年って言うことだけじゃなくて、それ以上に千葉さんとの会話からも、お互いがお互いに物を言えるような関係になれると思ったのだ。
「……実はね。悩みがあるの」
そう突然、千葉さんが言ってきた。
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私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




