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夢見るように夢見たい  作者: 鬼居かます
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29 第二話「遠い日」 不在

【毎日昼の12時に更新します】




「五組の千葉……、美佐子?」




 休み時間だった。私は園絵と会話をしていた瞬くんを捕まえて千葉さんのことを尋ねていたのだ。




「うん。五組にそんな人いるのかな? って思ったの」




 すると瞬くんは腕組みをして考え込んでいた。瞬くんは生徒会委員をしている関係上、顔が広いので同じ学年の人ならだいたい憶えているからだ。




「いたかなあ? ……ごめん。ちょっと俺の記憶にはないな」




 瞬くんはすまなそうな顔をする。




「五組に直接行ってみればいいんじゃない?」




 私の夢の事情を知っている園絵がそう言った。




「う、うん。……そうなんだけどね」




 私は煮え切らない態度でそう答えた。

 もちろん園絵が言う通りに直接、二年五組に行ってみるのがいちばんだ。だけど私は知らない人しかいない場所に行って声をかけるのが、どうしても苦手だった。私は部活もしてないことから、他のクラスの人たちをほとんど知らない。




「僕もいっしょに行ってあげようか?」




 すると鬼平くんがそう言ってくれた。




「ええっ! いいの?」




「別にたいしたことじゃないじゃん。行って、千葉さんと話すだけでしょ?」




 そう答えてくれたのだ。




「ありがとう。じゃあいっしょに行ってくれる?」




 私はそう言って鬼平くんと廊下に出た。そして五組へと向かったのである。




「……あのー」




 思わず小声になる。

 私は五組のドアの前で声を出した。ドアはすでに開いていて教室の中がすっかり見えていたけれど、大勢の生徒がいるので目的の千葉さんの姿は探し出せない。

 こうなると実は人見知りな私は無力になってしまうのだ。




「あのー。このクラスに千葉さんて言う女子の人はいますか?」




 すると鬼平くんが大声でそう叫んでいた。どうやらウジウジしている私に業を煮やして代わりに質問してくれたらしい。




 すると五組のクラスの人たちが一斉に私と鬼平くんを見る。私は思わず真っ赤になってしまって、足元を見てしまう。




「千葉? ……いないけど」




 すると近くにいた男子生徒がそう答えてくれた。名前は知らないけど、顔には見覚えがある人だった。




「千葉美佐子って人なんだけど……」




 重ねて鬼平くんがそう質問する。




「いないな。……間違いなく五組の生徒なのか?」




 五組の男子生徒はそう尋ねてきた。




「ほ、本人が五組って言ったのよ……。髪が長くてポニテにしている女の子なの」




 私はその生徒に直接言ってみた。するとその生徒は残念そうに首を振る。




「本当にいないんだ。なんならクラス名簿を見せようか?」




「あ、いや。……いないってわかればいいの。……ありがとう」




 私はそう言ってぺこりと頭を下げた。そして廊下へと戻る。




「本当に五組って言ったのかな? みすずさんの勘違いってことはない?」




 鬼平くんが確認するようにそう言う。




「うん……。間違いなく二年五組って言ってたよ。別に私に嘘をつく必要はないんだし」




「……そうするとまったくの夢物語なのかな?」




「夢物語?」




「うん。……完全なる夢。千葉さんと言う人と共有した夢でもなくて、まったくのみすずさんの夢想ってこと」




「……それって、ふつうの夢ってこと?」




「うん。……僕やみすずさんは確かに特別だけど、いつもいつも変わった夢ばっかりを見ている訳じゃないってこと。……ふつうの人と同じでふつうの夢を見たってことじゃないのかな?」




「……うん」




 私はそう答えたけど、私は公園の外柵に座っていた千葉さんの顔をリアルに憶えているし、そのときに肌に感じた暑さもしっかり記憶している。




「でも、夢の中で出会う人は現実世界でも会ったことがある人って言うから、どこかで一度は実際に会っているんじゃない?」




 鬼平くんはそう言う。




「うん。確かにそれは私も聞いたことはあるけど……、千葉さんは違う気がする」




 私と鬼平くんが最初に出会ったのは夢の中でだ。そのときはお互いに以前に会った記憶は一切なかった。だけど有紀が入院中に見た夢の鵺が原因で、親しくなって、現にこうして今も会話している。




「もしかして予知夢かも」




 突然、鬼平くんがそう言った。




「予知夢?」




「うん。僕と初めて出会ったときと同じで、これから千葉さんが五組に転校してくるとか、その後に自殺未遂事件が起こったり、全校集会が行われたり、屋上が閉鎖されるってことかも知れないよ」




「あ、そうか。……そうかもね」




 私は納得した。




 私が十七歳の誕生日に東田産婦人科医院に行く前に東田先生の姿を夢見ていたし、鬼平くんとのことだって予知夢と言えば予知夢には違いない。だから今回もそうだと思ったのだ。




「だったら、今、無理しても千葉さんは見つからないよ」




「そうだね」




 私はそう答えた。そして次の授業が始まる前に鬼平くんと一組の教室へと戻ったのであった。

 その後、私はいつもと同じ時間を過ごした。授業を受けて、夕方になって帰宅したのだ。





 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「生忌物倶楽部」連載中


「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中





「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み




 も、よろしくお願いいたします。


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