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夢見るように夢見たい  作者: 鬼居かます
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28 第二話「遠い日」 夢と現実

【毎日昼の12時に更新します】




「……驚くかもしれないけど、ここは夢の中なんだよ」




 私はそう千葉さんに説明した。

 すると案の定、千葉さんはびっくりして、目をぱちくりさせていた。




「え? ……これって夢なの?」




「うん。だって千葉さんは教室にいたはずなんでしょ? だからこれはたぶん千葉さんの夢なんだよ」




「そ、そうなの? ……そっか。今はお昼休みだから私、寝ちゃったんだわ。……私はお弁当を食べ終わるといつも眠くなって寝ちゃうのよね」




 そう千葉さんは笑った。その笑顔はどことなく憎めない感じがした。




「へえ、私も同じだよ。私は屋上のベンチでいつも昼寝するんだよ」




 すると千葉さんは、「えっ?」と、声を出し、少し怪訝そうな顔をした。




「屋上? 屋上って立ち入り禁止じゃなかったっけ?」




「え? ……そんなことないよ。あんまり行く人はいないけどドアの鍵は開いてるし」




「そ、そうだっけ?」




「うん」




 私は答えた。だけど千葉さんはまだ納得していない様子だった。




「だって事件があったじゃない。……三年生が受験ノイローゼで自殺未遂で飛び降りようとした事件」




「ええっ! ……そんなの聞いた憶えないよ」




 私は驚いてそう答えた。これは嘘偽りなく初耳だったからだ。




「ホントに? ……だって全校集会も行われたじゃない?」




「……知らない。いつのこと?」




「ええっ! 先月よ」




 そう千葉さんは答えたのだ。だけどもちろん私にはそんな記憶はない。だから私はぽかんとしていた。そして千葉さんも私同様に目をまんまるにしていたのだった。




 ――そこで目が覚めた。




 昼休み終了のチャイムが鳴ったのである。




 私は寝る前と変わらずに屋上にいた。そして空に広がる白い雲が流れて行くのをぼんやり見ていた。

 ……自殺未遂? ……全校集会? すべて知らない出来事だった。




 そのときだった。




「みすずさん? もう授業が始まっちゃうよ」




 振り向くと鬼平くんが立っていた。どうやら心配してわざわざ来てくれたらしい。私は鬼平くんのこういう自然な親切が好きだ。




「あ、ありがとう。……ちょっとぼんやりしてたから」




「また夢見てたのかな?」




「うん」




 鬼平くんといっしょに階段を降りながら、私は今見た夢の内容をいつのまにか話してしまっていた。




 鬼平くんは私と同じ夢見るサイボーグだ。

 だから言いやすいのはあるんだけど、それ以上に鬼平くんが聞き上手なので、ついつい話してしまうのだ。




「鵺がまた出たんだね? でも、それについては大丈夫じゃないかな?」




「ど、どうして?」




「だって、別に危害を加えられた訳じゃないんでしょ? それにみすずさんが言う見えないバリアーが守ってくれているみたいだし」




「そうかな? じゃあ、気にしないことにする」




 私は頷いた。すると鬼平くんはちょっと首を傾げた。




「でも、もう一つは気になるね。……五組に行って確かめるのがいいんじゃない?」




「五組に?」




「うん。だって、千葉さんって人は五組にいるって言ったんでしょ? ……それに自殺未遂事件とか全校集会のことは、僕は知る訳ないし」




「あ、そっか」




 うっかりしていた。鬼平くんは転校して来たばかりなのだ。先月のことを知っている訳がないのをすっかり忘れていたのだ。




 私は今すぐにでも二年五組に行きたいと思ったけれど、午後の授業はもう間もなく始まるのだ。だから仕方なく一組の教室へと戻ったのだった。




「……ねえ、先月にこの学校で自殺未遂事件があったとか、全校集会があったとか、……そんなことはないよね?」




 授業が始まるまでのわずかな時間に私は後ろの席の園絵に話しかけていた。すると園絵は教科書やノートを出す手を止めて、私を見た。




「自殺未遂? 全校集会? ……なにそれ?」




 園絵はきょとんとした顔で私を見た。




「ううん。……ごめん。私、さっき見た夢の話をしただけ」




 半ばそうだろうとは思ったけど、やっぱりそんなことはなかったのだ。




 すると園絵はくすくすと笑い出す。




「寝ぼけたのね。……みすずらしいって言えばみすずらしいけど」




 そう言うのだ。




「だよね……」




 私はそこで考え込んでしまった。




 もちろん千葉美佐子さんと話したのは夢の中の話だ。だけどあまりにもリアルだったので、現実世界のことと混同してしまったのだ。




 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「生忌物倶楽部」連載中


「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中





「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み




 も、よろしくお願いいたします。

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