27 第二話「遠い日」 千葉美佐子
【毎日昼の12時に更新します】
やがて風が吹き桜の花びらが舞った。
そして花びらは川面に落ちる。すると川は一面、桜色に染まって花筏となっていた。
「きれい」
私は季節外れのこの現象を楽しんでいた。
みると鵺は微動だにせず立ったままで、更に見ると桜の枝からは新緑の葉が次々を開いていくのがわかる。
「夏?」
やがて桜は緑に覆われた。すると蝉の鳴き声が聞こえてきたのだ。
だがやがてそれも終わり、落葉し、再び裸になり新芽が吹き出すのが見えた。
「季節が進んでるの?」
どうもそんな感じだ。
対岸では一年があっという間に過ぎているようで、気がつくとまた桜が満開になっている。
「鵺の登場も悪くないのかな?」
私はまったく動かずに立ち尽くしている対岸の鵺を見て思う。桜の一大ショーを見させてくれたのが鵺の様な気がしてきたからだ。
――それからしばらくしたときだった。
どうやら私は別の夢を見始めたようで、気がつくと桜並木が見えなくなっていたのだ。
「……どこ?」
私は木々に囲まれた空間にいた。
頭上の枝から木漏れ日が降り注いでいて、小鳥の鳴き声がする。
私は仰向けに草むらの上で寝ていた。そして起き上がると辺りをうかがった。
「……いないみたい」
鵺はなぜかいないようだった。
私は安心する。すると次はここがどこか知りたくなった。するとすぐに場所がわかった。
「あ、……、公園だ」
そこは駅前の公園だった。
私は普段来ないけど、友人たちが通学路として使っている場所で、何回か私も来たことがあるので風景を憶えていたのだ。
私は植え込みを抜けて通路に出た。そして角を曲がると公園の外柵が見えた。
「あれ?」
外柵の先を見るとそこに座る長い髪をポニーテールにした少女がいた。
少女はなんだか物思いにふけっている。
私はそっちに向かって歩いた。
日差しは強くて日向だと汗が浮かんでくる。私は少女と同じ木陰へと移動する。
その女の子は私と正面に向き合っている状態なのだけれど、心ここにあらずって言った状態で、私のことなんか眼中になくて深くため息をついていたのであった。
「……はあー」
その女の子はそう言って遠くを見つめていた。
その顔はきれいで美少女と言って差し支えない。
「な、なにしてるの?」
気がつくと私はその少女に話しかけていた。
その女の子は私と同じ都立大沼東高校の制服を着ていた。
「……え?」
するとその女の子はそのときやっと目の前にいる私に気がついたようで、ちょっとびっくりしているみたいだった。
「……あ、ごめんなさい。私ぼんやりしていたから」
その女の子はあわてて立ち上がる。
「ええっ? ……ここはどこかしら? 私、教室にいたはずなんだけど」
少女は周りの風景が公園の中なので驚いているようだった。そして私をまじまじと見つめていた。
「……同じ高校よね? えっと何年生なの?」
女の子はそう私に尋ねてきた。
今は昼間で学校にいるはずの時間なのに、私がこんな街中にいるのを訝しんだに違いない。
「え? 私は二年だけど」
「そ、そうなの? じゃあ私と同じね」
そう女の子は答えるのだけど、私はこの少女を見た憶えがない。そしてそれは女の子も同様だったようだ。
「わ、私は千葉美佐子。五組なの」
「私は浅井みすず。一組だよ」
私はそう答えた。
「へえ、一組なんだ。だから私は浅井さんを見た憶えがないんだね」
「そうだね。私も千葉さんを見たことないもん」
千葉さんがそう言ったので私も正直に答えた。
一組と五組は同じ階だけどお互い校舎の端っこなので、顔を合わせる機会もないんだろうと納得した。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




