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夢見るように夢見たい  作者: 鬼居かます
26/65

25 第二話「遠い日」 始まり

【毎日昼の12時に更新します】



 

 それからの私はしばらく悪夢を見なかった。

 それは東田先生に指摘されたようにバッドエンドな物語を読んだり見たりしなかったからもあるし、有紀があれ以来、夢に鵺を登場させることがなくなったからだ。




 その有紀だけど、あれから病状がみるみるうちに良くなって、やがて退院して学校に復帰したのはすでに過去のことになりつつあった。




「無事に直りました。またみなさんといっしょに学校生活が送れます」




 そう照れながら、朝礼で挨拶した有紀にクラス全員が拍手で迎えたのを今でも思い出す。




「有紀は悪夢から完全に立ち直ったんだよね?」




 ある休み時間、廊下で偶然に二人だけになった私は鬼平くんにそう尋ねていた。




「うん。……あの事件は偶然が重なった一過性なものなんだ。あれは平沼さんがクラスのみんなに忘れられてしまうんじゃないかと思ったことや、授業の遅れへの心配が生み出した鵺だからね」




 そう鬼平くんは解説してくれた。




 私はうなずいた。

 それはきっと正しいに違いない。私や鬼平くんのように人工的な脳細胞を移植されたというバイオサイボーグではない有紀には、他人と共用する夢を見る能力を持ってはいないからだ。




 そしてその鬼平くんだけど、私と席が近いこともあり、また夢の中の住民と言う共通項もあったことから、私や園絵、有紀、瞬くんとすぐに打ち解けた。




 だけど園絵と瞬くんには鬼平くんの正体は伝えていない。

 それは鬼平くんが一度死んでいて、その後の改造手術でよみがえった人間だと教えることは、私自身の秘密も打ち明けなくちゃならないからだ。




 そして有紀だ。

 有紀は半ば私たちの正体を知っているけれど、私と鬼平くんが夢の世界の住民であることはその後触れてこなかった。




 それは鵺を呼び出してしまったことをクラス全員に隠したかったこともあるに違いないけれど、それ以上に私と鬼平くんの特異体質を言い触らす事態を黙ってくれていたんだと思う。




 ――要するに有紀は空気が読める女の子なのだった。




 そして私と鬼平くんがクラスではふつうを装った。そしてたまに夢の中で会うこともあるけれど、教室内ではむやみに親しくすることはなかった。




 それに私は別に鬼平くんを特別な感情で見ることはなかったし、また鬼平くんも私に対して同様だったからだ。

 つまりなにが言いたいのかと言うと、平凡な毎日が戻ってきたと言うことだ。




 とりたててびっくりする体験もない代わりに、困った事態も起こらない日本中の高校でどこででもあるありふれた日々が続いていたと言う訳だ。




 ……だけど、そんな日は長くは続かなかった。




 ある昼休み。私は日課になっている午睡をしていた。いつもの通り屋上のベンチでひとりで昼寝をしていたのだ。




 ――気がつくと私は街中にいた。




 もちろんそれは夢で、通学路を歩いていた。方向からするとどうやら学校に向かう途中らしい。

 いや……、違った。いつもの通りから一本それた小径を歩いていた。




「……静か」




 つい言葉が出た。

 そこは誰の姿もない古い住宅地で、道の両脇を板塀が続いている。その向こうには大きな屋敷があって、真っ黒な瓦屋根が日の光を浴びて、ぴかぴかと輝いている。




 ……水の音?




 どこからか水の音がした。それは流れる川の音で静かだけど確かに聞こえてくる。

 私は水音を目指した。




 そして見つけた。

 小径を更に一本奥に進んだところに水路と呼んだ方がふさわしいような川があった。




 それは両岸が石垣で固められた川で、石造りの平底の水底に水草がなびいていた。そして大切に飼われていると思われる錦鯉が群をなして泳いでいる。川幅は三メートルほどで、それほど大きな川じゃない。




「きれい」




 私は近所にこんな川があるなんて知らなかった。生まれてからずっとこの街で育ってきたのに、小さい頃はこの辺りに友達もいなかったし、いきつけのお店がある訳でもないので、高校に入るまで近寄らなかったからだ。




「きっとずっと昔からあるんだ」




 私は川辺まで来た。そしてしゃがみ込み日の光を浴びてきらきらと輝く川面をながめる。すると川沿いに植えられている桜並木の下にベンチが置かれてあるに気がついた。




 それは昔からそこに置かれていたようで、木で出来ているのだけど、すっかり角が丸まってしまい色も黒ずんでいた。




 私はそこに座った。

 すると風が吹いて桜の枝とたいした長くない私の髪を揺らす。




 とても静かだった。

 聞こえてくるのは水音と私の息づかいだけだ。見上げると木々の間から木漏れ日が見える。




「……っ?」




 そのとき、なにかの気配を感じた。





本日から第二話の開始です。(`・ω・´)∩


 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「生忌物倶楽部」連載中


「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中





「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み




 も、よろしくお願いいたします。


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