24 第一話「夢か現か幻か……」 鬼塚順平
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「……あ、あのね。……私、心配だったの」
「心配? なにが?」
「うん。……こうして長く入院していると、クラスのみんなが私のことを忘れちゃうんじゃないかとか、学校の授業に追いつけなくなっちゃうんじゃないかとか……」
その言葉に納得した。
私は小さいときに交通事故で死にかけて入院したけれど、そのときに平沼さんと同じような思いをしたからだ。学校に行ったら自分の席がなくなっていた夢を何度も見た憶えもある。
「そ、そんなことないよ。……クラスのみんなは平沼さんをちゃんと憶えているよ。それに勉強だって、平沼さんは頭がいいんだから、すぐに追いつくって」
私は懸命に繕った。
それはもう二度と平沼さんに『鵺』になって欲しくなかったし、平沼さんが心配する疎外感を少しでも和らげてあげたいと思ったからだ。
「……あのさ、こうしたらどうだろう? みすずさんが平沼さんにクラスの近況を伝えればいいんじゃないのかな?」
鬼平くんがそう言った。
「近況? なにを?」
「うん。クラスの連中の様子をスマホで撮影したり、授業の内容……。そうだね、例えばノートを見せたり、テスト用紙を持ってきたりするんだ」
「そっか、そうだよね。……うん。私、これから毎日、平沼さんをお見舞いに来る」
「ええっ! ……そんなの大変よ」
平沼さんは驚き顔で私を見た。だけど私は深くうなずいていた。
――そこで目が覚めた。安心したので夢から起きたらしい。
気がつくと、そこは私の部屋のベッドの上だった。
時刻は早朝で、やっぱり私は夢を見ていたらしい。
「……あっ!」
私はそこでひとつ忘れたことに気がついた。それは鬼平くんの住所だった。どこに住んでいるのか知らないけど、一度実際に会ってみたいと思っていたからだ。
だけどそれから毎晩夢は見たけれど、鬼平くんが登場することはなかった……。
私はそれに寂しさを感じていた。女慣れしてないところや、私のことを子供扱いするちょっと意地悪な存在だけど、いっしょに危険な場面をくぐり抜けた戦友みたいな友情も少しは感じていたからだ……。
それからの私は毎日のように市立病院へ平沼さんをお見舞いした。
もちろんクラスのみんなの顔や声、そして平沼さんの様子をSNSを使って相互に伝えた。そして授業の内容を黒板から書き写したノートと、先生にもらったテストの問題用紙も持って行った。
平沼さんの顔には笑顔が戻り、みるみるうちに元気を取り戻していった。
授業のノートやテスト用紙も真面目に見てくれたので、遅れてしまった学力はすぐに取り戻したようだった。
そしてやがて、平沼さんは無事に退院できた。
そして平沼さんが登校した日。
その日のクラスの歓迎ぶりは半端じゃなかった。みんな平沼有紀さんの登校を心から喜んでくれたのだ。
「有紀、良かったね」
「うん」
有紀は真夏のひまわりのような笑顔を見せていた。
そして昼休み。私はいつも通り園絵と瞬くんと、そして仲良くなった有紀と食事をいっしょにした。
――「あれ、久しぶりだね」
気がつくと私は眠っていたらしい。そして何日ぶりかの懐かしい声に起こされたのだ。
そこには鬼平くんが苦笑しながら教壇横に立っていたのだ。見ると制服は都立大沼東高校のものだった。
「鬼平くんっ!」
私は大声で叫んでいた。
気がつくとここは教室で、私は自分の机に突っ伏して、いつの間にか眠っていたのだ。
「……確かに僕は前の高校でも鬼平と呼ばれてましたけど」
みんなの視線が一斉に私に注がれて、私は急に真っ赤になってしまう。
見るとここは午後のホームルームで、壇上には担任の山形先生がいて、そしてその横に鬼平くんが苦笑して立っていた。
「……と、言う訳で今日から転校してきた仲間だ。みんな仲良くするように」
そう山形先生が話を締めくくった。
私は黒板を注目した。するとそこには『鬼塚順平』と書かれてあった。
本日で第一話が終わりました。
明日から第二話となります。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




