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夢見るように夢見たい  作者: 鬼居かます
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23 第一話「夢か現か幻か……」 無意識

【毎日昼の12時に更新します】





「夢? ……これは私の夢なの? ……今、浅井さんに起こされたような気がしていたんだけど」




 すると平沼さんは、本当かしら? と疑問を口にしていた。




「つねってみる?」




 私がそっと手を伸ばすと平沼さんはうなずいた。

 だから私は平沼さんのほっぺに触れた。ひんやりとした肌の感触が伝わってくる。そして私は平沼さんの頬をつねった。




「……本当ね。痛くない」




「でしょ?」




「じゃ、じゃあこれはやっぱり夢の中なの?」




「うん。……複雑かもしれないけど、これは平沼さんの夢の中なの。

 私は他人の夢に入り込むことができるの」




「そ、そうなの?」




「うん。……信じてもらえないかもしれないけど、今から話す内容を信じて」




「なにかしら?」




 平沼さんはベッドから上半身を起こした。そして私に向き直る。




「あのね……。いきなりだけど、妖怪の鵺って知ってる?」




「鵺? ……聞いたことはあるわ。

 ……確か、夜中に出る怪物よね? 猿の頭を持っていて、身体は虎だったかしら……?」




「うん。確かに伝説ではそうなっているけど、実際の鵺は悪夢に現れる化け物のことを言うのよ」




「悪夢に出てくる化け物? ……そ、それって」




 そこでなぜか平沼さんは絶句した。額からは汗がしたたり落ちている。




「ど、どうしたの?」




 私は思わず尋ねていた。




「あ、あのね。……私、真っ黒くて大きな化け物をときどき夢に見るの。鏡を見ると写っているのが私じゃなくて、真っ黒い化け物の姿をしているの……」




「そ、それが鵺よっ!」




「ええっ!」




 平沼さんが驚いた顔になった。そして私は理解した。

 『鵺』は平沼さんの夢に関連しているのだ。いや、やっぱり平沼さん自身が鵺の発生源だったのだ。




 そのときだった。




「大丈夫?」




 鬼平くんの声がした。振り返ると苦笑を浮かべた鬼平くんが病室の入り口に立っていた。




「こっちよ」




 私が手招くと鬼平くんがやって来た。




「ど、どうしたのっ? それっ?」




 鬼平くんは額から血がしたたっていた。ぽたりぽたりと床に赤い染みができる。




「うん。鵺にやられたんだ」




「だ、大丈夫っ?」




 私は思わず鬼平くんに走り寄る。そしてハンカチを差し出した。




「うん。だから今、こうしてここにいるけど。

 ……鵺はとんでもない化け物だね。僕をつかむと頭から壁に何度も叩きつけたんだ。……夢じゃなければ死んでたと思う」




「い、痛くなかったの?」




 すると鬼平くんはまたもや苦笑を浮かべる。




「痛いよ。……激痛で死ぬかと思った」




「そ、それで鵺は?」




 すると鬼平くんは安堵の表情を浮かべた。




「消えた」




「き、消えたの?」




「ああ。……突然、消えたんだ」




「……良かった。消えたんだ」




 私は安堵のため息をついた。

 すると今まで無言で私と鬼平くんのやりとりを見ていた平沼さんが話しかけてきた。




「あ、あの。……浅井さん、その人は?」




「うん。鬼平くん」




「……おにへいくん?」




 平沼さんは私を真っ直ぐに見て、疑問を口にした。




「うん。この人は鬼平くん。

 私と同じで他人の夢の中に勝手に現れる人なの。今回、鵺退治を手伝ってくれたの」




「鵺退治?」




 平沼さんはきょとんとした。

 当然だ。平沼さんには訳がわからない話に違いない。




「あ、あのね。

 ……納得いかないかもしれないけど、鵺は平沼さん自身なの……」




 私は平沼さんに熱心に説明した。

 平沼さんが夢を見るとクラスのみんなが実際に教室で眠りこけてしまうこと、そして『鵺』が現れて、学校で大暴れをしたりすることだ。




 私は一生懸命話した。

 そしてその間、平沼さんはひとことも口を挟まなかった。だけど青白い顔色をいっそう青くしていた。




 やがて平沼さんが口を開いた。




「……私が鵺だってことはわかったわ。……でもどうして私、そんな夢を見たんだろう」




「おそらく無意識なんだろうね」




 鬼平くんが平沼さんにそう言った。




「無意識?」




「うん。平沼さんは無意識に学校やクラスメートに対して不満やら不安を感じてたんじゃないのかな? ……そしてそれが結果としてクラスの連中を集団睡眠させたり、その夢の中に鵺と言う怪物を登場させてしまったんだろうね」




「不満や不安……。そうかもしれないわ」




 すると平沼さんは両手で顔を覆った。そしてすすり泣きだしてしまった。




「ど、どうしたの?」




 私は突然泣き出してしまった平沼さんの肩に手をそえた。その肩は細かく震えていた。




 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「生忌物倶楽部」連載中


「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中





「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み




 も、よろしくお願いいたします。

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