20 第一話「夢か現か幻か……」 飛行
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やがて鬼平くんはぐんぐん空へと昇っていき、空中でくるりと逆さまになると、両手を地に立つ私へと伸ばしてきた。
「捕まってっ!」
「……えっ?」
逆さまになった鬼平くんの顔を見つめる。
……でも。私は躊躇していた。それは空に浮かぶのが怖かったし、今履いているのは制服の短いスカートだからだ。
「は、早くっ!」
「……で、でも」
そうせかさせるけれど、怖さと恥ずかしさはそうそう隠せない。
そのときだった。
「グボボボボーッ!」
雄叫びが響いてきた。
見ると鵺が校舎を出てきたのが見える。私は戦慄する。恐怖で膝ががたがたしている。
「まずい。さらに巨大化している」
「う、うん」
鵺はさらに大きくなっていた。すでに校舎三階分は背丈が達している。
「捕まってっ!」
「うんっ!」
私は鬼平くんの手に捕まった。
だけどスカートの裾が気になってしまったので片手だったから、自分の重さで指が離れる。
「両手で捕まってっ!」
後ろを振り返ると鵺は私たちに気がついたようで、その巨大は足でのっしのっしと近づいてくるのがわかる。
……ひっ!
私は鬼平くんの右手と左手に手を伸ばし両手で捕まった。
そして鬼平くんが高度を上げたことで私ももふわりと浮いた。
でも鬼平くんはどうにもしっくりしない様子だ。
「えーと。……言いにくいんだけど、しがみついてくれるかな?
そうじゃないともっと高く飛べそうにないんだ」
「ええっ!」
私はためらった。いくら緊急事態とは言え、やっぱり乙女としての恥ずかしさがある。
だけど今、振り落とされたら大変なことになる。鵺はすでに私たちをターゲットにしているからだ。
鬼平くんは逆さまの姿勢を止めて頭を上に足を下にした。
「……んんっ」
私は目をつぶって鬼平くんの胸にしがみついた。その身体は温かくて広くて大きかった。
そして鬼平くんは更にふわりと空へと昇って行く。
「……あっ!」
私は怖くて目をつむった。身体をふわりとした浮遊感が包む。
「もう大丈夫だから、目を開けて」
鬼平くんの言葉に私はこわごわとまぶたを開いた。
「……き、きれい」
私は風景に目を奪われた。足元の景色がミニチュアみたいにきれいだった。
「……重みを感じない。たぶん、みすずさんも飛んでいるんだよ」
「ええっ?」
見ると鬼平くんがうなずいていた。
確かに私も身体の重さを感じていない。そしてうながされるままにそっと片手を鬼平くんから離す。
「ほ、本当だ。……飛んでる」
私も空を飛んでいた。
鬼平くんの身体から離れても地面に落ちることはなかった。
だけどやっぱり怖さがあったので、右手で鬼平くんの左手をしっかり握っている。
やがて上昇を終えた鬼平くんが私の耳元で声を出す。
「駅はどっち?」
「右の方。後はずっと真っ直ぐ」
私は右手で行き先を示す。
「飛ばすからっ!」
私が答えると鬼平くんはそう言って身体をぐんぐん加速させる。
やがて駅前の商店街が見えた。
振る返ると鵺の姿はなかった。どうやらまいたらしい。私は安堵のため息をつく。
「右に踏み切りがあるから。そこから見えるのが市立病院」
「わかった」
鬼平くんは空中でターンを決めると、そのまま踏切上空を通過する。
そしてそこにそびえる白亜の病院へと到着した。私たちは足元から、ふわりと着地する。
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私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




