19 第一話「夢か現か幻か……」 やはりこれも夢
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私たちは昇降口に来ていた。
「ちょっと待って」
そのとき突然鬼平くんが私を呼び止めた。
「なに?」
「うん。……これは本当なのかな?」
「ホ、ホントって?」
私はかなり慌てている。
鵺がいつやって来るのかわからないのだ。だけど鬼平くんは辺りを見回してなにかをゆっくり観察しているみたいなのだ。
「うん。……これはやっぱり夢なんじゃないかな?」
「ええっ! ……だ、だって」
私は頭を巡らせる。
今朝はちゃんと起きたはずだ。朝ご飯だって食べた記憶があるし、歩いて登校している途中で赤信号で横断歩道を渡れなかったりしたし、ドーナツ屋が百円セールを開催していたので、学校帰りに立ち寄ろうと思ったりしたし、校門で他のクラスの女子と挨拶だってしたからだ。
「……し、信じられないよ。あれも、それも、これも、全部、夢なの?」
「うん」
鬼平くんは大きくうなずいた。
「確かにこの夢はあまりにもリアルだよね?
でも、現実世界に鵺が登場するなんてないと思うんだ」
「う。……だ、だって」
私の耳にはズシンズシンと階段を降りる地響きが聞こえている。
もちろん鵺だ。こんなにも怖くてこんなにもリアルでこんなにも現実的なのに、鬼平くんはこれを夢だと言うのだ。
「うん。信じられないよね?
……実は僕もそう。これは現実じゃないかと頭も目も耳も皮膚も思ってる。……だけど絶対にこれは夢だと、僕の理性が訴えるんだ」
「理性?」
「うん。……平沼さんのところに行こう。そして試してみたいことがあるんだ」
そう言うと鬼平くんは駆けだした。あわてて私は後を追う。
「た、試すってなに?」
「うん。これが夢であることの証だよ。……市立病院はどこなの?」
走って校門を出た鬼平くんが尋ねてきた。
「駅の向こう。けっこう距離があるよ」
小高い丘の上にある大沼東高校から、眼下の町並みが見える。私は景色に指を指す。
「大きなビルは駅前にできたショッピングセンターだよ。でね、病院はその向こうなの」
すると鬼平くんは市内を一通り見下ろすと、うん、とうなずいた。
「空から行こう」
「ふえっ? ……そ、空?」
声が思わず裏返ってしまった。
だって、空って……。思わず青い空を見上げてしまう。もちろん高校にヘリコプターはないし、近くに空港もないのに。
「うん。これが夢ならば、きっとできると思うんだ」
そう言った鬼平くんは右手を高く掲げた。そして手のひらでなにかをつかむようにゆっくりと握る。
「……うん、いけそうだ」
「へっ? ……な、なにが?」
なんだかわかんなくて、つい尋ねてしまう。
「僕の足元を見てみてよ」
「ふえっ?」
私は言われるままに鬼平くんの足元を見た。
「う、浮いてる……」
確かに鬼平くんの身体は中に浮いていた。
地面からたった数センチだけど、間違いなく両足は地から離れている。
「やっぱりこれは夢なんだ。だから僕は飛べるんだよ」
「う、うん」
私は改めて鬼平くんを見上げる。
確かに鬼平くんは空を飛んだ。じゃあ、これはやっぱり夢……?
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私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




