17 第一話「夢か現か幻か……」 様子見
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その晩、私は悪夢を見ないようにベッドに転がって本を読んだ。
『不思議の国のアリス』だった。
アリスが白ウサギを追いかけて不思議な国に迷い込んでしまい、チェシャーキャットと出会ったり、お茶会に呼ばれたり、と、子供の頃から何度も何度も読み返した物語だけど、改めて読むとなかなかおもしろかった。
そして目覚めたらお姉さんのいる木の下にいたと言う結末まで読み進むと、ふと考えさせられた。
――アリスの不思議な冒険はすべて夢だった。
だとすると私が経験したサイボーグであることや、東田先生や鬼平くん、そして化け物も実はすべて夢の出来事で、今の私も実は夢の中なんじゃないかと夢想してしまうのであった。
確か似たような物語が昔の中国でもあったはず……。
蝶になった夢を見ている自分だけど、実はこれは蝶が見ている夢なのじゃないかと言う話で、確か「胡蝶の夢」とか言う題名だったと思う。
――夢か現か幻か――
私が十七歳になって見始めた夢は、あまりにもリアルな世界だ。
だから今、こうして本を読んでいる自分が実は夢の中の自分で、鬼平くんと会ったり、化け物に追いかけられる自分が現実なんじゃないか? と、どっちの世界が夢なのか自信がなくなっていた。
……そんなことを考えていたら、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
だけと眠りながらも、これは夢なのか、現実なのかわからずに何度も目を覚ますことを繰り返していた。
それが返って幸いだったのかも知れないけど、その夜は夢を見なかった。
その日の朝は少し寝不足気味だったけど、しっかり目が覚めたと思う。
それから私は朝食や身支度を済ませて家を出た。時間はぎりぎりになってしまったけど、走らなくても遅刻にはならない程度の登校だった。
そして校門をくぐり、昇降口で上履きに履き替えて階段を登って廊下を歩いた。
「おはよう」
こうして教室のドアを開けたのである。そのときちょうど始業のチャイムが鳴ったのだ。
「う、嘘……」
――鬼平くんが立っていた。
「ど、どうして鬼平くんがいるの……?」
私はそう言うと固まってしまった。
教壇のところに鬼平くんが立っていた。そしてその姿はいつもの見慣れない制服じゃなくて、この大沼東高校の制服だった。
「僕にも、よくわからないんだ」
鬼平くんが、私を見てそうつぶやく。
そして見渡すとクラスのみんなは席についていた。
だけどまたしてもみんなは眠っていたのだ。全員が全員、机に突っ伏している。そしてよくよく見るとうなされているようで、額には汗がうかんでいる。
「……」
私はなにか言おうとした。
だけど鬼平くんがすっと腕を上げたので、その方角へと視線を送る。
鬼平くんは窓際を指さしていた。するとそこには黒い霧か煙の塊が生まれ始めて、だんだん大きくなっていく。
「……ぬ、鵺っ!」
私は、ぞぞぞと怖気がする。
……ど、どうして鵺が?
そして気がつくとバッグを放りだして鬼平くんの後ろに隠れてしまっていた。
そして鬼平くんの背後から、鵺をのぞき見る。やっぱり鵺はどんどん人型へと形を変えている。
「お、鬼平くんっ! 逃げようよっ!」
私は鬼平くんの肩を揺さぶる。だけど鬼平くんは少しも動く気配を見せない。
「ど、どうしたのっ?」
私は疑問に思って尋ねた。
「少し様子を見よう」
「ええっ!」
私は驚いてしまった。それはもちろん一分一秒でも早く教室から逃げたかったからだ。
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私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




