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夢見るように夢見たい  作者: 鬼居かます
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16 第一話「夢か現か幻か……」 患者

【毎日昼の12時に更新します】


「鬼平くんはね、この医院の患者なの」




「ええっ! 男の子なのになんですかっ?」




「ええ。……だって、あなたと同じ理由で来院してくるんだから、ここしか担当医はいないの」




「ええっ! そ、それって……」




 私は驚いた。すると東田先生はゆっくりとうなずいた。




「そうよ。あなたと同じなの。……鬼平くんも小さい時に事故で脳を損傷したの。だから私が手術して脳を再生させたのよ」




「そ、それって私と同じ生体サイボーグってことですか?」




 尋ねながら私の口の中はからからに乾いていた。




「……ええ、そうよ。みすずさんよりも少し前に手術したから、彼の方が覚醒は早かったわ」




「か、覚醒ってなんなんですか?」




 すると東田先生は私をじっと見た。そして口を開く。




「人工脳細胞による副作用。つまり夢の世界の住民になってしまうってこと。……だから彼もあなたといっしょだった夢はしっかり憶えてるし、あなたとは実際に会ってなくても夢ではつながっている。……つまりはもう出会っているも同然なのよ」




「ええっ!」




 びっくりした。

 だけどそれで納得できた。鬼平くんはやっぱり実在していて、それでいて私とは夢の中で初めて知り合ったのだ。だから私と会話した内容も憶えているし、話のつじつまも合っている。




「みすずさんと鬼平くんは夢の中の世界では、すでに知り合い以上の存在になっているのよ。……あなたはコンピュータのゲームは好きかしら?」




「は、はい」




 私は答えた。

 確かに私はゲーム機をいくつか持っているし、パソコンでもよく遊ぶ方だ。




「だったらわかりやすいわね。彼とはオンラインゲームで知り合ったバーチャルな仲間ってこと。ただそのバーチャル世界がインターネットの中じゃなくて、夢の中だと言うことなのよ」




「そ、そうなんですか?」




「ええ」




 そして東田先生はにっこりとした笑顔を見せてくれた。




「……鬼平くんとは実際に会えるんですか?」




「ええ。……だけど私からはその住所や電話番号は教えられないわ。個人情報に関するから医者である私には守秘義務があるのよ」




「わかりました」




 私は仕方なくうなずいた。




「実際に会いたかったら、夢の中で彼に尋ねればいいんじゃない?」




「あ、……そうですね」




 東田先生の答えに私はうなずいた。……そうなのだ。確かに夢の中で鬼平くんに尋ねればいいだけの話なのだ。




「……あの、(ぬえ)って、なんなんですか? 鬼平くんは誰かと共用する夢を見させている人物、もしくはその人物が具現化させている存在って言ってましたけど……」




「そうよ。……だからみすずさんが夢に見たお化けはその夢を見させている誰かが作り出した鵺ね」




「……その鵺に捕まったりしたら、やっぱり良くないことが起こるんですか?」




「実際に殺されるってことはないのよ。……だけどいつまでも夢から覚めない可能性はあるわ。……現実世界の誰かに起こされれば夢だから覚めることはできるけど、後味は悪いわよ」




「ど、どうしてですか?」




「その夢を見させている人物がみすずさんや鬼平くんをターゲットにしている可能性があるから。……だからこれから何度もその悪夢を見る可能性は高いのよ」




「じゃ、じゃあ、どうすればいいんですか? 鵺を退治する方法ってあるんですか?」




 ……確か大昔の言い伝えでは弓矢で倒したって話だったと思う。だけど私にはそんなものは使えないし、だいいち持ってもいない。




 すると東田先生はそんな私のこともわかったようで、首を横に振る。




「……それは私にもわからないわ。その鵺に弱点があれば可能だけど。……いちばん効果的なことは、その夢を見させている人物に会って、その夢を見るのをあきらめさせるのが確実ね」




「夢を見るのをあきらめさせる……」




「ええ。その人物が鵺を登場させるのはなにかが原因なの。その人物の心や気持ちに訴えて、その不安や不満を解消させるのがいちばん確実な方法なの」




「そ、その人物って誰なんですか?」




 すると東田先生は首をゆっくり横に振った。




「それは私にはわからないわよ。近くにいる誰かかも知れないし、どこか遠くの外国の人だって言う可能性だってあるもの。……でもまったく見知らぬ誰かがみすずさんに悪夢を見させるなんて考えにくいから、意外と近い関係の人かも知れないわ」




「近くの人……」




 私はしばらく考えた。だけどそんな人物は思い当たらなかった。

 確かに私は聖人でも賢者でもないから、知らない間に誰かにうらまれることをしたかも知れない。でも、そんな相手は想像もつかないからだ。




 私はその後、東田産婦人科医院を出た。

 熱の原因はやっぱり悪夢から来たストレスだったみたいで処方箋も出されなかった。




 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「生忌物倶楽部」連載中


「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中





「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み




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