14 第一話「夢か現か幻か……」 体調不良
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「な、なんで目が覚めないのっ?」
私は大声で鬼平くんに尋ねる。
「……これはみすずさんの夢じゃないんだろうね」
「ええっ! ……じゃあ、誰の夢なの?」
「もちろん僕の夢でもない。これは他の誰かの夢なんだ」
「誰かの夢?」
「ああ。だから僕たちは屋上から落ちても目覚めないんだろうな」
鬼平くんが冷静なのはいい。
だけど私にはそれがちょっとばかり不満だった。これは悪夢なのだから、少しはいっしょに怖がってくれてもいいと思ったのだ。
「あの黒いものは誰かが生み出した鵺なんだ。だから僕たちにはどうしようもない」
「ええっ! ……じゃあ、どうすれば?」
そのときだった。どすんと重い音がしたかと思うと、地面がずしんと揺れたのだ。
「ひっ……!」
振り返った私は絶句した。
黒いものが地面に降り立っていたのだ。あの黒いものは私たちを追って屋上から飛び降りて来たのに間違いない。
「あくまでも僕たちが目当てらしいね」
「ど、どうすればいいの?」
「どうしようもない。僕たちには逃げることしかできないから」
「捕まったらどうなるの?」
「わからない。ただ愉快な結末じゃないことだけは確かだろうと思う」
私たちは校庭を走った。
「手立てがない訳じゃない」
通用門の扉を開けながら、鬼平くんがそう告げた。
「なに?」
「僕たちにできることはない。
だけどこの悪夢を見ているヤツが目を覚ますとか、僕かみすずさんが誰かに起こされるかすればいいんだ」
「そ、そうなの?」
私は希望がわいてきた。だけど鬼平くんの顔は冴えない。
「でも、夢ってのは現実の時間の進み方と異なるんだ。
夢の中で何日も続けての大冒険をしていても、現実時間の経過はごくわずか。……数秒程度じゃないかとも言われているんだ」
「ええっ! じゃあどうしよっ!」
そのときだった。
かすかな音が私に聞こえてきた。それはこの緊迫した場面にはあまりにも平和で懐かしい音だった。
――チャイム!
それは昼休み終了を告げるチャイムの音で、この夢世界ではなくて、現実世界の音だったのだ。
「……」
私は目覚めた。
そこは元の屋上で私はベンチに横になっていた。
「助かったんだ……」
私は立ち上がる。だけど足元はふらついていて、そして額には汗が浮かんでいた。
その後、教室に私は戻った。
ドアを開けるとき、一瞬戸惑いがあった。さっきの悪夢は正夢で教室の中では眠り続けるクラスメートと、あの黒いお化けがいるかもしれないと思ったからだ。
だけど、そんなことはまったくの杞憂で教室の中では次の授業に備えて机を戻し、教科書を広げるみんなの姿があったのだ。
「みすず。……顔色悪いよ」
園絵が私に声をかけてきた。
「う、うん……」
私はそれ以上答えることができなかった。
まさかお化けに追っかけられる夢を見ていて、鬼平くんと逃げ回っていたなんて恥ずかしくて言えないからだ。
だけど、あの悪夢は相当ショックだったようで、頭がぼーっとしてきて、なんだか熱っぽくなってきた。
「浅井、お前、風邪じゃないのか?」
私を具合の悪さに気がついたらしく、瞬くんが私に話しかけてきた。
「……だ、大丈夫」
私はそう答えた。だけどその声に元気はない。
「保健室、行った方がいいんじゃない?」
保健委員を務める安藤さんがそう話しかけてきた。
私は断ったが、園絵も瞬くんも頑として譲ってくれない。
そして結局、園絵に付き添われて保健室へと向かうことになったのである。
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私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「いらぬ神に祟りなし ~少子化問題解決します~」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




