善人 しょうもな度☆1
今まで書いた中でも一番お気に入りのショートストーリーです。
男は、老いて死んだ。そして気づくと何も無いところに立っていた。何か変だ。ふと気配を感じて振り返ると、スーツを着た男が立っていた。
「君は死んだ。そして私は神だ。少し面談をする。これが何に影響するかは内緒だけどね」
こちらの反応などお構いなしに彼は質問を始めた。
「君は自分を善人だったと思うかい?それとも悪人だったと思うかい?」
不思議とそんな強引さやうさん臭さににいら立つことも疑問を覚えることもなく、目の前にいる男を神だと思い、男は答えた。
「もちろん善人でした。私は良い事を沢山してきました。恵まれない子ども達への寄付をしたり、災害の時、ボランティアに行ったりもしましたよ」
男は自分の人生に自信があった。せっかく神の御前にいるのだ。良いところはアピールしたい。
「ああ、そうか」
しかし彼は興味がなさそうに返事をした。何故聞いたのだろう。そして彼は続けた。
「なら、この次に生まれ変わるとして、何をやっても報われない善人か、どんなに悪いことをしても咎められず、罪も意識せず生きる悪人になるか、どっちがいい?」
男はすぐさま答えた。
「そりゃもちろん、善人です。罪を意識しない悪人なんて、有り得ない」
すると神は、先ほどとは違う、興味のありそうな顔でこう言った。
「あれ、意外だね。前世の君は後者を選んだようだけど」