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39.き○こたけ○こ総選挙並みじゃねぇか!

 



「頭派か尻尾派? そのアンケートを取るってのか?」

「あぁ、そうだ。ぶっちゃけどうでもいいだろ?」

「まぁでも面白そうっちゃ面白そうだけどな」


 はぁ、片桐栄人。こいつもある意味あっち側の種類の人間だって事を忘れてたよ。

 平和な1日の始まり、平和な朝、それは昨日までと何ら変わりはなかった。

 ただ、心配なのは本当に桐生院先輩がアンケート用紙を完成させて、ヨーマが校長と担任の先生方に話をつける事が出来たのか……それに尽きる。


「でも、昨日決まった事なんだろ? いくら葉山先輩でもそんな急には準備できないんじゃないか? それに、校長とか担任の先生達がこんな急な依頼を引き受けてくれるかだって、普通だったら有り得ないと思うけど」


 確かに栄人の言う通りではある。いくらヨーマであっても急な提案を校長たちが受け入れるとは考えにくい。少なくとも1日で返事をするには余りにも急すぎると思う。最低でも1週間は他の先生方との協議の上で返事。それが普通じゃないかな? けど、相手はあのヨーマ……それでも可能な状態にしてしまう様な気がしてしまう。


「そうだと良いんだけどな……」




 なんて予想は、


「月城君、予定通り朝のホームルームでアンケート渡すって」


 席に着席早々の……日城さんの一言で木っ端微塵に吹き飛んだ。


 あぁ、やるんだ。昨日の今日で決めた事が可能になったんですね? ヨーマの奴どんな手を使えば先生方の協力を得られるんだ、何にせよ恐ろしい事に違いはない。


 そして、そんな日城さんの言葉に返事が出来ないで居た時だった、


 ガラガラ


「はい、おはよー」


 いつもの声と共に颯爽と現れる高倉先生。だが、俺の視線は一点に集中していた、脇に抱えるプリントの束に。

 あっ、あれアンケートじゃないか? マジか、日城さんが言ってた通り本当に準備万端じゃねえか!


 教壇の前に立ち、脇に抱えていたプリントを置くと、これまたいつもと同じように高倉先生の声が教室へ響く。


「はーい、じゃあホームルーム始めます」




「という事で、今日の予定は以上かな。あっ、そうだ。新聞部の方からアンケートの方が届いてました。全員に答えて欲しいとの事ですので、ちゃんと書いてねー。ちなみに用紙の方は明日の朝のホームルームで集めるから宜しく」


 本当に準備しちゃったよあの人達……よく間に合ったな? まぁ、出来たものはしょうがない。回収という仕事を全うするだけだ。


「見て見て? あなたはたい焼きをどこから食べますか? だって」

「なにそれー、あっ本当だ」

「なんかどうでもいい様なアンケートじゃね? そういえば、たい焼きってどこから食べてる?」

「言われてみたらそこまで深く考えたこともなかったなぁ」

「私頭からだぁ。てか普通頭からじゃないの? お店の人から受け取る時とか尻尾掴んで貰うしね」

「確かに私もー」


 おっ、頭派結構居る感じなのか? でもなぁ、そういう事話してると……


「えっ、あたし尻尾から食べるけど? 出来立てってカリカリしてて美味しいじゃん?」

「わたしも尻尾からかも」


 やっぱりなぁ。出るよね、尻尾派の意見が……


「えっ、マジ?」

「マジだけど?」


 ん?


「お前は尻尾からか?」

「いや、頭だろ?」


 んー?


「嘘!?」

「マジ?」

「有り得なくない?」


 ザワザワ、ザワザワ


 あれっ? なんか雰囲気が……?


「皆で討論するのは良いけど、授業はちゃんと受けろよ? じゃあホームルーム終わり。授業の準備しろよー」


 えぇ! 高倉先生? この状況分かりますよね? 分かってますよね? それなのに普通に終わってんじゃないよ!


「有り得ないって!」

「そっちの方が無いって!」


 あぁ、なんでだ? くだらないアンケートのはずだろ? そうだ、何皆熱くなってんだよ、まるでヨーマ達みたいだぞ?


 ガヤガヤ


 ん? 気のせいか? ホームルーム終わった位から妙に廊下の方もざわついてるような……


「なぁ、片桐はどっちなんだ?」

「そうだ! どっちなんだ?」

「えっ、俺?」


 はっ! おい、栄人分かってるよな? お前さっきどうでもいいって言ってたよな!? しかも自分の立場分かってるよな?


「俺は……」


 分かってるよな?


「尻尾からかな?」


 あぁ……バカ野郎! お前このクラスの委員長なんだぞ? 悔しいけど皆お前を頼りにしてるんだぞ? そんな奴が尻尾派なんて言ったら尻尾派は盛り上がり、頭派は肩身狭くなる可能性も考えられる。それ位察しろ!


「ほら見ろ! 片桐は尻尾派だぞ!」

「よっしゃぁ!」


 ほらぁ!


「嘘……」

「片桐君が尻尾派だなんて……」


 ほらぁ! やっぱりこうなるんじゃねぇか!


「月城君? これで分かったでしょ?」


 この憎たらしい声に、己の危険信号である寒気……そっちを見なくても誰だか分かるし、どんな顔してるのかすらハッキリしてる。

 うわっ……めんどくせぇ。ゆっくりと俺の方へ近付いてくるその姿。それに焦点が合った時、目の前に居たのはドヤ顔で俺を見下ろす日城さんだった。


「片桐君が尻尾派それすなわち、頭派は少数ってことよ? 頭派の月城君」


 なんだこいつ、なんかいつも以上にムカつくなぁ。見ろ、クソイケメン委員長もなんか軽く引きつってるぞ?


「なに? て事は日城さんも尻尾派なのか?」

「もちろん、尻尾派一筋よ」

「おぉ!」


 おぉ! じゃねぇから! こいつが尻尾派でも1票は1票だから!


「それで月城君? 3組で頭派は何人なのかしら?」


 いやいや、何人って……おぃ! 自主的に窓際に集まってくるんじゃねぇよ! 12、3人位か?


「ふふっ、少ないわね。これじゃぁ私達尻尾派の……」


 なんかヒーロー物で悪役幹部の女って感じの喋り方だなおい。


「待って!」

「誰!?」


 ん? 誰だ? 勢いよく席から立ち上がった……女子? しかも真ん中辺りだから凄く目立ってますよ?


「私も……」


 あれ? ちょっとまって? なんか聞いた事ある声なんですけど? 見覚えのある髪型なんですけど? まさかだよね? そんな事するキャラじゃないもんね? 違うよね?


「私も頭派です!」


 その言葉と共に、その人物は日城さんを指差す。


「なっ、なんですって?」


 日城さんが驚くのも無理はない。その人物は到底こんな事をするはずもない、それはクラスの面々なら知っている。だが、事実その人物は、するはずもない行動をしていた。


「ふふっ、まさかあなたが立ち塞がるとはね……」


 不意に出た日城さんの笑顔。それは単純に楽しんでいるのか、それとも焦りを振りほどいてるのか……それは誰も分からない。ただ、そんな風にも見えてしまうのは確かだった。


「ごめんね恋ちゃん。これだけは譲れないの……たい焼きは頭から食べるって事だけは!」


 ははぁ……止めてくれよ、止めてくれよぉ。君そんなキャラじゃないじゃん? 大人しくてお願いされたら断れない、優しい大和撫子キャラじゃん? だから止めてよぉ……早瀬さん!


「いいわ。ただ、このクラスは尻尾派有利に変わりない」


 だから、このクラスで多くても……


「このクラス……ではね。でも、この3組で目立ってるのは栄人君だけじゃないよ? 栄人君が3組に大きな影響力を持っているなら、こちらには3年生に影響力を持つ人物が居るんだよ?」


「出鱈目ね。そんな人物このクラスには……あっ! まさか!」


 勝手に話を進めてんじゃないよ! それにしても3年生に影響力? 一体誰のこ……


「分かるよね? 月城君だよ」


 はっ?


「確かに、一定の部活動のキャプテンからの期待値は高い……まさかそれを利用するなんて……」


 いや、利用してないよ? する気もないよ?


「それに……」


 それに?


 ガラガラ


「おっ、おい! こっちで尻尾派は何人なんだ? うちの組人数が少なくて肩身が狭いんだ!」

「隣のクラスはこちらとは逆……つまり今分かる限り票は半々です」

「くっ……」


 あのーだから勝手に話を……


「さすがこっちゃん。なかなかやるわね! これで面白くなってきたわ」

「まだ始まったばかりだよ……決着は明日の朝。それまでに……」


「勝つのは頭派!」

「勝つのは尻尾派!」


 あの……なんなのこの展開? いや、くだらないアンケートじゃん? それに何マジになってんの? おい! 睨み合ってんじゃないよ! 仲良く仲良く! あぁなんでこんな展開になってんだよ!


「指揮をお願いね? 月城君?」


 えぇ!? 早瀬さん……どうしたのさ? 大体キャラが変わるってのは後半辺りってのが定番でしょ? 早すぎだって! 


 そして妙に自信に満ち溢れた目で俺を見つめないでくれ!



 

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