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22.そして伝説へ

 



 待て待て! 聞いてないぞ? アンカーが200メートルなんて! てか言えよあのクソイケメン委員長!


「早瀬さん頑張れ!」

「おぉ! 速い!」


 ん? あぁ、さすが早瀬さんだな。合宿に呼ばれるだけの事はある。あれ? そういえば早瀬さんって何の種目やってんだろ? ってそんなの考えてる場合じゃない! 自分の事に集中しろ!


 100メートルならさっきの感じで行こうと思ったけど、200メートルなら話は別! 全速力で走れるのは40メートルが限界って誰かが言ってたから、ペース配分めちゃくちゃ大事! 


 とりあえず最初の50で8割、そこから7割に落として、残り100から9割、残り50で全速力……よしこれでいこう。この雰囲気にテンションが上がるのは分かるけど、最初から全速力で行ったら絶対バテるし、それだけは注意しないと!


「頼む! 紫抜いてくれー」

「行けー! そのまま伊藤に渡せば勝ちだぞ!」

「よっしゃ! 任せろ!」


 なるほど……こいつが伊藤か。身長は俺とあんまり変わらないな。それになんか自信たっぷりで、こんな状況にテンション上がってるって感じだな。

 紫と青は膠着状態……1位は紫。それから1メートル位離れて黄色か……って!


「早瀬さんやべぇ!」

「結構差なかったか?」


 あれ? 結構早瀬さんヤバくないか? 普通に黄色を抜いてしまったんだが……。まぁ、その分俺も打倒伊藤に近付いた訳か。


「月城君! 頑張って!」


 うわっ……日城さんからそう言われると、ものすごいプレッシャーなんだが? まぁ、やれるだけやるけどね。


 でも、なんかホントにこんな感覚久しぶりだな。

 そうだ、思い出せ……試合を。ボールを追いかけていた時の事を。


 自分でも、足は速い方だと思ってた。サッカー部でもそれを活かして最初はフォワードやってた。けど、下手くそだったから何度も何度もオフサイドになって、結局サイドのポジションになった。


「伊藤君お願い!」

「はいよ!」


 パスだって、ここに来れるだろって思って出すけどそこに味方は居なくて、絶望的にパスも下手くそだった。


「ごめん! 頑張って!」

「おう!」


 シュートを打とうとしても、他にフリーな選手がいるからパスを出すことの方が多くて、ポジショニングだって下手くそだった。


「早瀬さん行け!」

「こっちゃんあと少し!」


 足元とかはそれなりだったけど、その他は全然下手くそで、戦力になってたかどうかすら分からない。けど……ボールに追いつく事だけは誰にも負けなかった。負けたくなかった。


「月城君! お願い!」


 それだけは……誰にも譲れなかった。だから、俺の唯一まともだった足が役に立つなら……やれるだけやってやる!


「任せて」


 皆の思いが詰まったバトンが、自分の手の平に乗っかる。それをしっかり握りしめると、俺は目の前を振り向く。

 1位は伊藤、その距離は約2メートル。その目標に向かって、俺は思いっきり地面を蹴飛ばした。


「行け! 月城君!」


 ペースに注意して、最初は8割! そして伊藤は……ボールだ。サッカーボールだ。それに追いつけ、他の人に取られないように!


 それにしても、あの伊藤ってやつ本当に速いな! 栄人が言うだけはある。全速力のスピードは分からないけど、あれが余力の残してる走りならかなりまずい。とりあえず、50まで来たから少しスピード落として体力温存! マジかよ? あいつ全然スピード落ちねぇな。


「すげぇ! 伊藤! このままだったら余裕だぞ!」

「佐々木君頑張って!」


 伊藤が差をつけ始めた……俺も2位の奴には追い付いてるし、100メートル位で抜けそうか? どうせなら直線の方が抜きやすいよな? コーナーだったバランス崩しそうで怖い。現に慣れてる栄人ですらぶつかってこけた位だからな。よし、この辺で少しスピード上げろ!


「月城! 抜けー!」

「2位になれるよ!」


 よし、こいつはもうバテてるな。ならこのまま……よっと!


「よっしゃ! 2位だ」


 後は、大本命伊藤ただ1人! ん? さっきよりスピード落ちたのか? 少し遅くなった気がする。とはいえ俺も足に疲れ出始めてる。行けるか?


 このままのペースで、スピード上げるの早めたら絶対持たない! 我慢、我慢。


「月城! 差縮まってるぞ!」

「伊藤なら大丈夫だ! ラストスパートがある!」


 イケメン委員長うるさいよ! 元はと言えばお前がコケたからこうなったんじゃねぇか! お前1ヶ月新聞部の手伝い決定な!


 よっし! だんだん背中近付いてきた! 目安の残り50も後少し、頼むバテてくれ……ラストスパートなんて止めてくれ!


「頑張って! 月城君!」

「頑張って!」


 日城さんに早瀬さん……君達めちゃくちゃ速かったよ。もしかしたらそんな姿に感化されたかもしんないなぁ。なんか女の子に頼りっぱなしってのもダメな気がするし、今日位は根性見せるか! だからこそ、絶対伊藤を抜きたい!


 残り50メートル、行け!


 太腿が痛い。胸が苦しい。あのまま高校でもサッカーやってたら、まだ余裕だったのかな? 

 皆大きく口開いてるけど、もはや何言ってるか聞こえないよ。ただ、目の前に居る……いや、あるサッカーボール目指して、全力で走るだけだ。


『お前オフサイド分かってる?』

『お前俺達の事見てる?』

『お前シュート打つ気ある?』


 分かってるし、見てるし、打ちたいって気持ちもあった。


『お前速すぎ』

『さすがにパス追いつけないよ』

『自分で打ってもいいんだぞ?』


 友達はそう言ってくれた。けど、それは本音だったのかな? キャプテンで友達だから、本音が言えなかったのかな?


『下手くそ』


 あぁ、そうだよ。俺は下手くそだった。ただサッカーが好きだから、下手くそなりに頑張った。けど、そんな俺でも1つだけ誇れることがあった。それが……


 誰よりも早くボールを追いかける事!


 さぁ、追い付け……追い付け!

 よし! いつもならここまできたら合格点。でも、今日は違う! 一歩この先へ、ボールを……ボールを追い越せ! 


 諦めるな!

 ボールを追い越せ……追い越せ!


 追い越せ!!!



 パンパン!



≪白熱しました、1年生による学年対抗リレー! 優勝は……≫




≪紫組です!≫




次話も読んで頂ければ嬉しい限りですm(_ _)m

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