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01.新たな船出!できると思ってました

 



「良い天気だなぁ。まさに新たな船出に相応しい日だ」


 気持ち良い日差しに、心地よい風。その風に乗っかる春のにおい。4月独特の雰囲気が一気に味わえる今日という日が、入学式日和なのは間違いなかった。


 そんな祝福を全身に浴びながらのんびり歩いてると、俺と同じ制服を来た生徒がちらほら増えてくる。このタイミングでここに居るって事は、間違いなく1年生。それも外部組ってことは一目瞭然だった。

 それに中等部とか制服違うしね。


「結構、外部組も多いんだな」


 ただ例外もある。学校に近付くにつれてだんだんと増えてくる車、車、車。黒塗りピカピカな長いやつ。エンブレムがついてるやつに、ゴツイやつ。一目で分かるその高級感が、どこか階級の違う世界へ迷い込んだような気にさせる。そんな上流階級の方々の行く末はどこなのか、大体は考えなくても分かるけど。


「うっわ、さすが通学組はやばいなぁ」


 目の前に見えるデカイ建物、というか群? そこに向かうのは間違いない。それなりに高い塀の上から、さらにこっちを覗いてる建物には、いつ見てもため息が出る。


 いつ見てもでかいよな……。

 高級車にでかくて綺麗な建築物。その光景は悔しいくらい似合っていて、俺からしたらテレビの中の話だった。けど、この方々にとっちゃこれが当たり前で日常で、これから始まる単なる1日の始まりに過ぎない。


 それもそのはず、目の前にそびえるのは『私立鳳瞭(ほうりょう)学園』。幼稚園から小・中・高・大学までその全てが広大な土地に存在するこの学園は、有名一流企業への就職率全国トップレベル。さらに全国大会優勝経験、出場常連の部活動が数多くあり、まさに文部両道を掲げる名門校。


 そして今日から俺が新たな船出を迎える場所なのだ。

 えっ? なんで俺みたいな奴がこんな名門校に入れたかって? ふふふ、それは……


「うおっ!」

「きゃっ」


 それは突然の衝撃。

 だが、それを上回る右腕の柔らかい感触と甲高い声。ただその刹那、背中にうっすらと寒気が走る。


 幸い、そこまで強い衝撃じゃなかったから少しぐらつくだけで事は済んだ。が、右腕の柔らかい感触は一瞬で跳ね返されるように消えてしまう。


 なんだなんだ?

 そして正体不明な衝突物を確認しようと、目を向けた先に居たのは、


「いったた……」


 パンツ丸見えで尻餅をついている女の子だった。


 おっ、ピンク!

 神様がくれたご褒美に、思わず目が眩む。仕方がない、これが男の本能。それに神様のご褒美を無下には出来ない。存分にそれを……


「ちょっと、あんたぁ」


 一瞬で隠れてしまったご褒美に、聞こえてきた悪魔の声。


 えっ? この声……。

 恐る恐るその声の主を拝見しようと顔を上げた時だった、さっきと比べ物にならない寒気が全身を駆け巡る。


 口、呼吸が速くなる。

 目、瞬きすらできない。

 鼻、鼻の上にぶわっと汗が浮かび上がる。

 鼓動が早くなる、呼吸が速くなる。寒い、苦しい、早く逃げないと逃げないと!


「うわぁぁぁ!」


 その全てが一気に爆発した瞬間、俺はなんとも情けない声を叫びながら、一目散に駆けていた。それはもう100メートルで世界新が出せそうな位の勢いで。とにかく離れたかった、逃げたかった。


 なんであいつが……なんでここに……

 頭の中はぐちゃぐちゃで訳も分からずただひたすら走り続ける。


 俺は女性恐怖症……だった。だったってことはもちろん克服した。克服したはずなんだ。


 彼女以外は……




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