表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クソザコ復讐鬼  作者: 雨竜三斗
5/31

1-5 恩返し来校

「なにもなかったな」


昨日の夜もなにかされると思ったのだが、

なにもなかった。


されてもおかしくなかったことを想像しながら、

朝食と昼の弁当の準備を要領よく進める。


「強いて言えばまた変な夢を見たくらいか。

 またイチロウとの話の話題にしよう」


ヨシキはそうつぶやいてコーヒー牛乳を空にした。


「嫌がらせするなら隣から大きな音を出しまくったり、

 ピンポンダッシュしたり、

 いろいろできると思ったんだが」


そんなこともなく、今も平和な朝を過ごしている。


「やっぱり、本当はいい子なんじゃないか?

 だから本当に迷惑になることはしてこない」


壁越しに隣の部屋を見た。

もちろん静かなものだった。


アマノのことを気にしながら家を出た。

エレベーター、マンションの出入り口、通学路で隠れられる場所など、

ヨシキの思いつくイタズラや嫌がらせができそうなところを気にするが、

そこにアマノの姿はない。


「夜になにもなかったから、

朝はなにかしてくると思ったが、なにもないな」


本当に何事もなく学校にたどり着いた。

安心したような、拍子抜けしたような気分をため息といっしょにはいて下駄箱を開ける。

すると、


「上履きがない」

 空っぽだった。


「これが今朝の『復讐』だな。

そもそも下駄箱になにかするのは定番だったな。忘れてた」


なんだかおもしろくなってきたヨシキは、

ニヤリとしながら下駄箱を見渡した。


上から順に見ていくと、

先日まで使っていなかった場所に名札がついている。


「ここはアマノのか」


何気なく開けてみた。

中にはアマノの小さなローファーだけしかない。


「隣も使ってなかったはずだが……」


こちらも確認してみた。

そこにはさらに小さなローファーだけ。

アマノも体が小さいが、これでは小学生の靴だ。

誰のかは分からないが、少なくとも今は用がない。


さらに見ていくと、

一箇所中途半端にフタが開いている箇所がある。

そこは今度こそ使ってないはずの空きで名前も書いてない。


 中を開けると、

「あった」


「って!

 どうしてそんなにすぐに見つかるの!?」


するとどこからともなくアマノが金切り声を上げてやってきた。

他の生徒たちの視線を集めるが、

ヨシキもアマノも気にしない。


「こんな近くに隠すからだろ。

 なんならゴミ箱に放り込むとかしたらどうだ?」


そう言いながら上履きを取り出して履き替えた。

アマノがズガズガと音を立てながら迫ってくるが、

特に気にしないし構えない。


「そんなひどいことできるわけないでしょ!」


 ヨシキをにらみながら意外な声を上げた。

「はあ?」


「ひとのものを勝手にゴミにするなんて……

 よくそんな悪いこと思いつくわね」

「はあ?」


思わず同じ反応を繰り返した。

そうしたくなるほど、

おかしなことを言われたとヨシキは思っている。


「もしかして、いややっぱり、

 復讐したいとか思ってるのに、

 本当に悪いことできないのか?」


先日からずっと思っていたが、

よいよそうとしか思えなくなってきた。


アマノからしてもこの問いかけは不思議なようで、

キレイな歯をむき出しにしながら返してくる。


「違うわよ!

 あたしにひどいことした陰陽師に復讐するために、

 ムカつくほど似ているあんたの嫌がることするの!

 復讐よ! 復讐!」



「とは言っても、復讐にしてはゆるくないか?

 これじゃ好きな子にかまってほしくて、

 イタズラする男子小学生みたいだぞ」


何気なくヨシキはたとえとして言った。

だがアマノはどう捉えたのか分からないが、

顔を真っ赤にする。

さらに信じられないようなものを見ている顔になっていく。


「好きな子にイタズラ!?

 そっ、そんなわけないでしょ!」


 アマノはそう言い放って走り去った。


「なんなんだ?」



「よう、モテ男」


今日もイチロウのほうが先に来ていたようだ。

顔を合わせるなりそんな挨拶をされた。


「モテてるわけじゃない。

 しょぼい復讐をされてる男だ」


「なんかあったか?」


「ああ、まず昨日帰ると家の前にアマノがいた」


「おいおいおいおい。

 ホントにストーカーされてたのかよ」


イチロウがでかい目をさらに見開いて聞いてきた。

羨ましいという感じと、

心配された感じが混ざった声だ。


「どうにも俺の部屋の隣に引っ越してきたらしい。

 家に帰るなりまた絡まれた。

 幸い、家の前で張ってただけで、

 買い物とかはつけてなかったようだ」


ヨシキはわざとらしく、安心の息をついた。

パンツのことがバレてなければあとはどうにでもなる。


「なんとうらやましい。

 俺ならば生活のすべてをさらけ出してもいいのに」


「加虐願望に加えて露出狂趣味まで目覚めたか」


「いいや、ドン引きされながら嫌な顔で踏まれたい。

 その口実として俺の生活を晒したいんだ」


「分かったもういい」


ヨシキは手のひらをイチロウの口に向けた。

するとイチロウは物足りないと言いたげな顔をしてから、話題を戻す。


「それで今朝はどうした?

 いっしょに学校来たのか?」


「至って平和だ。

 アマノは俺より早く登校して俺の上履きを隠してた」


するとイチロウはすぐにヨシキの足元を見た。

ヨシキの上履きは、イチロウのよりもキレイだ。

ヨシキは大型の休みがなくても上履きを持ち帰って磨いている。


「はいてるじゃん」


「その言い方だと、

 俺がまるでノーパン容疑があるみたいな言い方だな」


「そんなヤバイヤツいるかよ。

 ぜひとも女子でお目にかかりたいぜ」


「イチロウの趣味はいい」


「ノーパン女子は全人類の願望だろ!」


イチロウはイスから立ち上がり、

世直しを考える志士のような真剣な声で叫んだ。

周囲のクラスメイト(女子含む)からも同意の目線がイチロウに向けられる。


「ひとによるだろ。

 あとでかい声でそういう事を言うな」


言われてイチロウは座ってまた話を戻す。

周囲のクラスメイトたちの目線も離れていく。


「それで、上履きはどうやって見つけたんだ?」


「直ぐ側にあった。

 アマノは物を隠すのもクソザコらしい」


「クソザコか!

 それはいい!」


ヨシキの表現がツボに入ったのかゲラゲラ笑い出した。

本人が聞いていたら後ろから蹴り飛ばされそうだが、

教室にはまだ来ていない。

それにイチロウならば喜んで顔面で蹴りを受け止めるので、

盾か身代わりにするつもりだ。ヨシキは避けるが。


「お、噂をすれば」


丁度いいタイミングでアマノが教室に入ってきた。

ヨシキたちの話は聞こえていなかったようで

『何見てるのよ』と言いたげな目線だけをこちらに送ってくる。


「はいはい、席についてー」


挨拶をしようと思ったが、

それよりも先に先生が大きな口を開けて、

大きな声で言いながら教室に入ってきた。


「せんせーいー。

 ホームルームまであと五分くらいあるけどー」


またもクラス代表を勝手に名乗るようなミコが、

先生に声をかけた。


「そうだけど、

 また大切なお話があるのでみんな席についてー」


またなんだろうか。

疑問をざわつかせるクラスメイトたちは、

おとなしく自分の席に戻っていった。

ヨシキはその様子を眺めながら、


(ああ、そいえば夢の話できなかった。

 今度は座敷わらしの住む場所を探す夢だったな。

 だんだん記憶が薄れてきたけど)


 ということをふと思い出した。すると、

「今日はまた転校生を紹介します」


「またか」

「転校生は珍しくなくなったけど、二日連続は珍しいかも」

「かわいい女の子かな?」


(この既視感。

 夢で見たとかじゃなくて、

 つい昨日も似たようなことあったな)


さすがにこれは気のせいや集団幻覚ではすまされない。

同じことを思ったクラスメイトたちのざわつきが一気にうるさくなる。

口裂け女の先生は仕方ないと苦笑いしながら、

ドアの方へと声をかけた。


「ヒナタちゃん入ってきて」


呼びかけると、

教室のドアがとても緩やかに開いた。


「「「おおー」」」

「「「きゃー」」」


その女の子が入ってくるとクラスから歓声が上がる。


パッと目に入ったのはその長い黒髪。

そのままシャンプーのCMに出演させられそうだと思うほど、

さらさらした髪をなびかせている。


髪が長く感じる理由はおそらく転校生の身長の低さにもあるだろう。

アマノより小さい。

制服を着ていなければ小学生で通じる。


(ああ、今朝見た小さい靴はこの子のか)


合点がいく。

だがその雰囲気はなんとなく永く生きた妖怪であることも感じられた。


前で合わせた小さな両手、

旅館を歩いていそうなすらりとした姿勢と、

足音が聞こえない歩き方が印象的だ。

今どきの女子にしては長くしているスカートも、

その印象を後押しする。


「座敷わらしのヒナタです。

 よろしくお願いいたします」


丸い目をにっこりと細めて挨拶をした。

まるでアニメやゲームのキャラクター、

またはバーチャルユーチューバーがそのまま画面から出てきたような声だ。


「「「かわいい!!!」」」


クラス中に黄色い声と野太い声が混じって響き渡った。

アイドルのコンサートがこんな感じかもしれない。

芸能ニュースで報道されてるのしか見たことがないが、

なんとなくそう思う。


その歓声の中、

やっぱりアイドルのようにヒナタは手を振り返す。

だがその目線はみんなへのファンサービスではなく、

誰かを探しているような目だった。


するとばったりとヨシキと目が合う。


「見つけましたわ!」

 歓声にも負けずヒナタから大きな声があがった。


「あなた様です。

 一番うしろの席の人間のお方」


(またすごい既視感感じる)


ヨシキはそう感じつつ、念のため左右を見る。

右にはめちゃくちゃ不機嫌そうなアマノと狼男、

左は空席とカッパの男子、

前にはでかい目を更に見開く一つ目小僧がいる。

とうぜん、人間の男に該当するのはヨシキしかいなかった。


それでもお約束のように自分を指差して聞く。


「俺?」


「はい!

 わたくし、あなた様に恩返しに参りましたの!」


ヒナタはそういいながらパタパタと足音をたてて駆け寄ってきた。

ヨシキのもとにやってくると、

甘いアメ玉のような目がこちらを覗き込んでくる。


「お、俺なにかしたか?」


「正確にはあなた様のご先祖様に、

 大変お世話になりました」


「……陰陽師の?」

「はい! ご存知でしたか?」


「俺の先祖が陰陽師であることを、

 最近知ったから、キミのことはさっぱり」


そう言ってからちらりとアマノの方を見た。

アメだと偽って石でもなめさせられているような顔をされる。


「優しげな目元もそっくり……。

 まるであのお方が生き返ったようですわ」


さらに顔を近づけてきた。

アメ玉がとけたような目がヨシキの戸惑った顔を写す。


(俺とご先祖様を重ねて見ているようだ。

 俺は俺なんだが……。とは思うが、

 この夢見るような顔を見たらそうは言えん。

 どうするか)


ヒナタに目を合わせながらも困っていると、

隣からツノで突き刺すような視線を感じた。


「あんなやつ生き返ってたまるかっての」


ツノをはやして苛立っているのは、

当然隣のアマノだ。

本当はヨシキとその先祖をけなすために言ったのだろう。


「鬼のお方!

 ご存知なんですか!?」


だがそのアマノの言葉はヒナタのテンションを更に上げた。

まさに名前の通り快晴のような明るさだ。


「知らないわよ。そんなムカつく顔」


対してこちらはすぐ隣の席で、

ヒョウが降るような異常気象が起こっているようだ。

アマノはさらにそのヒョウを拾って投げつけるように言った。


「あの……そろそろホームルームを始めたいのだけど」


そこでようやく担任の先生が恐縮気味に口を挟んだ。

口が大きいせいか、

口元がとても困っているように見える。

それを聞いてヒナタはハッと口を開けて、

すぐに手で隠す。


「失礼いたしました。

 つい気持ちが高ぶってしまいまして……」


それからペコリととてもキレイなお辞儀を見せた。

一体どこで習ったのだろうか気になるほどキレイだ。

この外見でどのくらい生きているのかも気になる。


「それとわたくし、

 自分の席についてお伺いしておりませんでした」


「ヒナタちゃんは、

 そこの彼――ヨシキくんのお隣に」


先生が言うとヒナタは目を輝かせた。

ついでにヨシキの視界の外から『げっ』と

硬いものを噛まされたようなアマノの声も聞こえた。


「ヨシキ様……とても素敵な名前ですわ。

 それにお隣とはなんと奇遇な」


席に座ってもヒナタはこちらにきらめくような目を向けたままだ。

加えて男子女子問わず、

一部のクラスメイト(アマノ含む)から冷たい目線も飛んでくる。


「改めてよろしくお願いいたします」

お読みくださいましてありがとうございます。


良ければこのページの下側にある(☆☆☆☆☆)でご評価を、

続きが気になりましたらブックマーク、

誤字脱字が気になりましたら誤字脱字報告、

とても良いと思いましたら一言でも感想をいただけると

嬉しいです。


雨竜三斗ツイッター:https://twitter.com/ryu3to

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ