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クソザコ復讐鬼  作者: 雨竜三斗
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1-4 復讐より怖いこと

放課後、ヨシキはいそいそと学校を出た。

そのままマンションへ帰らず、

散歩を装いブラブラと歩く。


目的地はあるが、直接は向かわず遠回り。

分かりづらい道、同じ学校の生徒が歩いていなさそうな道を選ぶ。


時折周囲を確認。

特に今日はついてきそうなヤツがいるので何度も確認する。


と言っても、今日のやりとりからして、

つけていたらすぐに分かってしまいそうだ。


それでも念入りに、確認は怠らない。


「よし、誰もいないな」


改めてそう確認し、

そしてようやく目的の店に入った。


「いらっしゃいませ。お客様」


お店の帽子をかぶる店員が仰々しい挨拶をした。

帽子のつばの下には大きなひとつ目。

それも見覚えのある顔だ。


「白々しい挨拶はしなくていいぞイチロウ。

 かえって怪しまれる」


「かと言って、

 友達なのに普通通りに挨拶したら気持ち悪いだろう」


イチロウはイタズラをするような笑みを浮かべて顔を上げた。


「たしかにな……。

 だが万が一知ってる顔が店の中にいたらどうするか。

 そうでなくても今日、

 俺のことをストーカーしそうなヤツが転校してきたのに」


「そのときはおれっちに任せな。

 どうにかしてやるから」


「信じてるぞ」


再確認するように、念を入れて言った。

それから目的のコーナーへと移動。


ヨシキは恐る恐る、

イチロウはそんなヨシキを宝のありかへ先導するように歩く。


ようやく目的の商品のある棚へやってきた。


男性ものの下着がずらりと並ぶ。

今どきはボクサーパンツがメジャーで品揃えは一番多い。

次にトランクス。中学生以上にもなればこのどちらかが多いだろう。


だがヨシキが手にとったのはどちらでもなかった。


肌触り良さそうな純白の綿、

程よく肌にフィットし、股間を覆う。


その下着はブリーフ。


ヨシキはそれを数枚手にとった。


「これを」


そう言ってイチロウに手渡し。

その間も周囲を警戒するように目を泳がせている。


「へいへい」


イチロウは素直に受け取って、

レジへと足を運んだ。


ヨシキもついてくるが、

まだ警戒心はとけない。

周囲をキョロキョロとしながら歩く。


「っても、セルフレジあるし、

 誰にも見られずに買い物できるだろ」


「いいや、万が一その会計中、

 あるいは移動中にバレたら困る。

 イチロウが持っていれば仕事だって説明でごまかせるから、

 いてくれないとダメだ」


まるでスパイ作戦でも語るように早口でヨシキは言った。

このときだけ見せる余裕のない様子にイチロウは苦笑い。

普段とは逆だ。


「なら違うパンツはけばいいのに」


「これじゃないと落ち着かないんだ。

 気持ち悪いまである」


「仏様のようになんでも許しちゃうヨシキが、

 そこまで言うならしょうがない」


イチロウはやれやれと首を振ってレジを打ち始めた。

商品のバーコードを通しながら、


「だがおれっちみたいに、

 パンツのことなんて気にしてないヤツのほうが多いと思うけどな。

 エロい動画でもはいてるヤツいるぜ」


「ああいうのは現実とは違う。

 ドラマとか芝居みたいなものだ。

 いっしょにできん」


言いながら持参したお店の紙袋を差し出した。

口が小さく、外から透けて見えないので、

下着を買うときに用意しているものだ。


「それに、もし今日転校してきた鬼にこれがバレたら、

 本当にやばいかもしれない」


「バカにされるようなことが見つかって、

 本当に復讐されちゃうってか?」


「そういうことだ。

 ちゃんと空いてる時間に頼んでるんだ。

 アレコレ言わず頼む」


「はいよ」


ヨシキはQR決済のコードが映るスマホを差し出した。

素早く会計が終わる。


イチロウは手早く商品を袋にしまってくれた。



無事、誰にも見つかることなく

目的の下着を買うことができた。


だが本当に念のため、

警戒を怠らずマンションまで帰ってくる。


幸いなにもなかったのだが、

マンションの前にはトラックが停まってた。


(引越し業者?

 そいえば昨日もここに停まってたな)


と不思議に思いながら見つめつつも中へ。


マンションのエレベーターに乗ってようやく大きなため息をつける。

まるで大量の現金、

または国家転覆の秘密情報を輸送していたような気分にも思えた。

それもようやく安全なところに運び終えられる。


気疲れからかやや目線を下に向けて、

トホトホと廊下を歩いていると、


「やっと帰ってきたわね」


と今日覚えたての声が聞こえてきた。

その声に思わず顔を上げて声も上げる。


「おわっ!? アマノか!?

 どうしてここに?」


思わず服屋の袋を落としそうになった。

もちろん落としても中身がもれないようになっているが、

素早く拾われて、素早く中身を見られたら大変だ。


改めて前を見る。

今日やってきた転校生が、

腕を組んで偉そうに立っていた。

それもヨシキの家の前でだ。


「やっといい反応を見せたわね」


ヨシキが疑問を思う前に、

アマノが満足げな笑みを見せた。


「いや、今朝の『復讐しにきた』宣言も十分驚いたが」


「そうね。

 でもあたしがここに来たからには、

 休まるスキはないと思いなさい」


言いながらアマノは目線を横に向けた。

ヨシキの部屋の隣のドアが見える。


「隣に越してきたのか?」


「復讐のためにわざわざね」


そう言われてヨシキはようやく納得がいった。

納得すれば不思議に思うこともないし、不安もない。

自分のペースを戻せたと、見開いた目を細くする。


「ご苦労なこった」


「それほどあたしの復讐心は強いの!

 今日みたいに、

 のんきに買い物して帰れるとは思わないことね」


アマノに袋を指さされた。

ヨシキは思わず袋を体の後ろに持っていく。


「ついてきてたのか?」


だとしたら大問題だ。

パンツを買っていたところを見られたかもしれない。


「そうしようと思ったけど、

 引っ越しとかで疲れちゃったわ」


警戒したが、アマノはかったるそうな顔を見せて言った。

それを聞いて安心する。だが顔には出さずにうなずいた。


「そうか」


「ま、せいぜい首を洗って待ってることね」


言葉だけ聞くと怖いことを言われたように感じる。

だが今日されたことを思い出してみれば、

この定番のセリフも迫力がなくなった。


「分かった。ちゃんとキレイにしておく」


ヨシキの余裕のある軽口で返した。

それもやっぱりイラッとしたのだろう。


「ふ、ふんっ!」


とだけ言って隣の部屋へと入っていった。

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