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クソザコ復讐鬼  作者: 雨竜三斗
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2-6 復讐鬼に夕飯をおごる

「夕飯、なにがいい?」


マンションを出たところで、

大きな足音を立てるアマノに聞いた。


するとさっきまでムスッとした顔ががころっと変わる。

少し猫のように虚空を見つめてから、

にやりとした目つきで見てきた。


「そうねぇ。あんたの得意料理とやらをいただこうかしら?」


「分かった」

「煽ってるのに平気な顔するのもムカつく」


またムスッとした顔になった。

コロコロと顔色が変わるのがおもしろいと思いながら、

さらにいじるセリフを思いつく。


「あまりイライラしてると血管が切れるぞ」

「人間と妖怪の体をいっしょにしないで!」


「だが学校の授業で根本的には変わりがないって習ったぞ。

 もちろん、イチロウみたいな一つ目小僧とか、

 先生みたいな口裂け女だと違いはあるが」


「はいはい、そうねそうね」


ヨシキの言ったことが分かりにくかったのか、

つまらない授業を聞いているように腕を組んでそっぽを向いてしまった。


アマノをいじっている間にふたりはスーパーに着いた。

夕飯の買い物のためそろそろ混み始める時間だ。


カゴをとってすぐにある野菜コーナーを眺め始める。


「何作るの?」

「カレーだ。食べたことあるだろう?」


「もちろんよ。

 こんびににだっておいてあるじゃない」


「ってことは普段は、

 コンビニとか出来合いのもの食べてるのか?」


「そうよ。悪い?」

腰に手をやって、さも当たり前だと言いたげな態度を見せた。

ヨシキは少し胃が縮む感じを覚えてアマノを見つめる。


「いや、妖和になる前はご飯どうしてたのか気になっただけだ」


「そんなの人間から奪うに決まってるじゃない。

 あたしは鬼よ。

 まあ今どきはそんなことするより、

 素直に買ったほうが楽だからそうするけど」


鬼の力強さは怒ったときの足音でなんとなく分かる。

それでも細い腕や足は、昔から変わっていないのだろうと思う。


いくら鬼――妖怪と人間の体が違うといっても、

ヨシキにはなんとなくアマノがおいしい食事を食べていないんじゃないかと心配になった。


「そうか。うまいもの作ってやるから、たくさん食べていけ」

「同情するような顔がムカつくんだけど」


「アマノの体のことを心配してるんだ。

 ちゃんと食べないと復讐とやらも、

 イタズラのアイディアも浮かばないぞ」


「なんであんたに心配されなきゃならないの!」


ぎゃあぎゃあ言うアマノを見てから、

ヨシキは再び野菜に目をやった。

じゃがいもににんじん、ナスも入れてみようと手に取る。


「野菜多くない?

 あたし肉が多いほうがいいんだけど」


「どっちもたくさん入れるから俺に任せておけ」


「ふん。じゃあお手並み拝啓と行きましょうかね」


「『お手並み拝見』な。

 偉そうにしたいときは、

 あまり使い慣れない言葉を使わないほうがいいんじゃないか?」


「うっさい」

アマノは言い捨ててどこかへ言ってしまった。

ヨシキは特に気にせずに肉のコーナーへ。


(量を入れるなら豚だな。

 だが肉と野菜の比率を考えないと野菜を残しそうだ)


考えながらパックとにらめっこ。バラ肉をカゴへ。


次にカレールーを選ぶ。

テレビでやっていた方法見様見マネで辛料から作ることもできるが、

時間的に難しい。

アマノは作っている間にダダをこねるだろう。


(だが中辛か甘口か、

 辛いと食べてくれなさそうだし、

 甘いと『子供扱いするな』って怒りそうな気もするし。

 飯時くらい笑っててほしいんだが)


と様々なルーの箱を見つめていると、

ガサッとカゴの方から音がした。

「……お菓子入れたのバレてるぞ」


言いながらカゴの方――アマノの方を見た。

カゴの中には大量のソースカツなどの駄菓子が放り込まれている。

まるで子供の買い物だ。


「なんでバレたのって顔するけど、

 そんなに大量に入れたらバレるだろ」

「分かったわよ……」


アマノはあからさまにイヤそうな顔をしながら、

カゴからお菓子を出そうとしたが、

ヨシキはカゴを引いた。


「誰も『ダメ』だとは言っていない。

 買ってやるから、入れておけ」

「いいの?」


意外そうな顔だ。

それでいてとても子供っぽい。


妖怪のほとんどが長寿で子供っぽいのだが、

アマノの場合は人生経験(妖怪生経験)が少ないからより子供っぽいのかもしれない。

ヒナタが見た目より大人っぽい仕草をするのでなおさらそう感じる。


そんなアマノの顔を見ると、

なんだか甘やかしたくなった。

ヨシキは大人ぶった顔を作って言う。


「これくらい安いもんだ」


「ふ、ふ~ん。

 あたしに媚びて復讐から逃れるつもりなのね」


するとアマノも子供っぽい顔をしてたことを自覚したからなのだろう。

腕を組んで偉そうな顔をした。


「それさっきも聞いたぞ」

「いいわ。どんどんあたしに媚びなさい」


「その言い方、様になってないな」

「うっさい」


ヨシキは笑ってから辛口と甘口のルーを手に取った。

それぞれ一四〇グラム。これを混ぜることにする。

そうすれば甘口だと怒られず、辛いと怒られないはずだ。


次に飲み物のコーナーへ。

カレーの材料はこれで終わりではない。

「あたしこれがいい」


つくなりアマノがジュースを持ってきた。

毎日飲んでたら太りそうな甘ったるいジュースだ。


「いいぞ。一本だけな」


甘えられたのが嬉しかったのか二つ返事してしまった。


とはいえ一本だけなんてケチだとかなんとか言われそうだと思った。

だがアマノはニコニコジュースをカゴへ。


ヨシキは目的の飲み物を手に取る。


「こんな苦いの飲むの?

 ミコも飲んでたけど、未だに信じられないわ……」


アマノが顔をしかめたのはコーヒー牛乳。

一度飲んでみてダメだったのだろう。


「俺もブラックじゃ飲まないぞ。

 これくらい甘いのならいいが」


「それでもあたしは飲まないわよ」

「はいはい」


適当にあしらってさっさと会計を済ませた。

ちゃんと仕送りもあるし、安く済ませる自炊を実践している。

それでいて今月は欲しいゲームもないのでお金には余裕があった。


レシートを財布に入れるとエコバッグを両手に店を出る。


「あたしは持たないわよ」

すると何も言っていないのにアマノが口を開いた。


「いいぞ。そんなに重くないし、

 お客さんに手伝ってもらうのも悪いしな」

「そ、そうね。あたしはお客さんだもんね」

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