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クソザコ復讐鬼  作者: 雨竜三斗
11/31

2-3 復讐鬼はズボンを脱がせたい

今日はヨシキの掃除当番の日だった。

それもなぜかアマノ、ヒナタ、ミコも交えての当番だ。

まるでなにかの策略か、運命めいたものを感じる。


(このメンバー、なにもないわけがない)


そう思いながらテキパキと道具を出して準備を始めた。


「あたしバケツに水くんでくるわよ」


アマノがそう言いながら返事も待たずに駆け出した。


「あ、おい」


当然呼び止めても聞こえていなかった。

耳に入っていたとしても、

止まるわけがないと感じる素早い動きだ。


「仕方がありませんわ。始めましょう。

 可能ならば、アマノ様がなにかしでかす前にお掃除を終わらせてしまえばよいのです」


ヒナタがやる気に満ちた声と顔で言った。

旅館ではないのに若女将感がある。


「そうだな」


ヨシキは素直にうなずいてさっさと掃除にとりかかった。

ミコもヒナタの声を聞いてか、

ため息をついてホウキを動かし始める。


そんなミコと比べたからか、

ヒナタの動きは元気で明るい。

おまけにテキパキと要領もいい。


「ミコ様、そのような払い方ではホコリやゴミが舞ってしまいます」


「はーい」

「楽しそうだなヒナタ」


「はい! まるで教室のお世話をしてるみたいなんですよ!」


ヒナタは好きなひとに尽くしているような、

高いテンションで言った。


ひとに尽くす、ひとを幸せにするが好きなのだと改めて感じる。

とても良い人柄だ。


「生徒が学校の掃除をするなんて前時代的ー」


「ミコ様もちゃんとやってみたら楽しいかもしれませんわよ」


「いくらヒナタちゃんの頼みでもちょっとなぁー……」


不服そうなミコを見て、

ヒナタは怒るでもなく少し考えた。

それからいい案が思いついたのか、

パッと明るい顔を見せる。


「それでは、お掃除を早く終わらせましたら、

 ごいっしょにお出かけしましょう」


「いく! 放課後デート!」


「ですから、そのような払い方ではいけませんって」


(いつもより楽しいな)


皆がダルそうにしている中、

ヨシキだけが要領よく掃除を終わらせるのがいつもの掃除当番だった。

そこまでイチロウ以外のクラスメイトとは仲良くないので、

当然会話もほとんどない。


だが今日は話し相手がいて、

同じくらいのモチベーションや勘どころを掴んでいる相手がいる。

それがヨシキの胸をポカポカさせてくれた。


そこでひとりいなくなった掃除当番がいることを思い出す。

(にしてもアマノが戻ってこない)


と思った矢先、

「そぉれ!」


威勢のいい声が聞こえたと思うと

腰から下に冷たい水がかかった。


「うぁ……びしょびしょだ」


膝から下は盛大に濡れた。

靴下も上履きもぐっしょり。


幸いにして普通の水道水のようだ。

これが泥水やジュースだったりすると、

匂いやらシミやらで大変なことになったかもしれない。

アマノにそんな用意周到なことができるとは思えないが。


「ごめんなさいね~。

 バケツを引っくり返してしまいました~」


「そんな言い方をしなくても、

 誰がやったかなんて分かるぞアマノ」


言いながら廊下の方を向いて言った。

ドアの外、まるで安全な場所から眺めているような様子だ。


「いやそもそも、バケツ用意する仕事なんかなかっただろ」


「そうだったっけー。ごめんねー」


わざとやったのだから反省の色はないだろう。

おまけに自分がぶちまけたバケツを、そこらに放置している。

そのままヨシキの様子を見ていた。


(まるでズボンを脱ぐのを楽しみにしてる顔だな)


アマノの様子を見てそう感じた。


(ああ、なるほど。

 パンツの話をしていたからそういうことを思いついたのか)


こちらを見ているアマノは、

だんだんと笑いを堪えられない表情になっていった。

これからヨシキが大恥をかくことを想像しているようだ。


(だが、こんなこともあろうかと)

ヨシキはためらわずズボンを脱いだ。


「んなぁ!?」


他の女子たちが反応するよりも早くアマノが大声を上げた。

そしてズカズカと音を立てながらこちらに寄ってくる。


「なんで男子がずぼんの下にしょーとぱんつはいてるのよ!?」


「いいだろう? 着替えが楽なんだから」


「今日体育なかったじゃない!?」


「ああ、なくてもはいてるんだ。忘れなくて楽だし」


という理由ではいていた。

これならばこんなことがあっても、

パンツを見られる心配はなくなる。


ヨシキがそんなわけを説明すると、

アマノは歯を強く噛んでむき出しにした。

それとは別の顔でヒナタもこちらを見ている。


(アマノが悔しそうなのは分かる。

が、なんでヒナタは残念そうな顔してるんだ?)


それが不思議だった。

一体なにを期待していたのか想像ができない。


「ぐぬぬ、あたしのパンツにアレコレ言ったくせに、

 自分は見せないなんて不公平よ!」


アマノが証拠の矛盾を指摘するように指を指した。

だが矛盾はないとヨシキは平然とした顔のままだ。


「いや、俺の下着を見たところで誰も得しないだろ」


「わ――」

「「わ?」」


ヒナタが横入りするように大声を上げた。

と思ったが一文字だけでそれは急ブレーキ。

ヨシキもアマノも反射的に一文字だけで聞き返す。


「いえ、なんでもございません」

そう答えながらヒナタは、小さい体をさらに小さくした。


「ま、いいわ。

 あたしが見たいのはあんたが恥ずかしい思いをしている顔なの。

 べ、別に下着が見てみたいとかこれっぽっちも思ってないんだからね」


絵に描いたようなツンデレセリフだ。

これでは興味津々だと言っているようなもの。


「鬼って下着に興味を持つ種族なのか?」


「ふぁ、ふぁっしょんって言ったでしょ!」


「答えになってない」


「とにかく、なんとしてでもヨシキに恥をかかせてやるんだから覚えてなさい!」


そう言って教室を出ていってしまった。


「ヨシキ様ではなく、アマノ様の困った顔が見られましたわね」


「いや、教室水浸しで余計な掃除増えたんだが」


 ヨシキは分かるようにビチャビチャと水音をたてた。

お読みくださいましてありがとうございます。


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雨竜三斗ツイッター:https://twitter.com/ryu3to

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