9話 パートナー
ミレイユが冒険者となったと聞いて冒険者御用達の喫茶店で会うことになった。
3ヶ月ぶりだが彼女は変わらなかった。
フードがついた冒険者寄りの利便性や動きやすさ優先の服装にも関わらず何故か似合って見える。
「久しぶりね。元気だった?」
「ああなんとかやってるよ。それにしてもミレイユも冒険者になったのか。意外だな。」
普通に企業の魔法部門にでも行くと思っていた。ミレイユは冒険者というガラではないし、冒険者になる目的が分からない。
「そう?冒険者にならないとは言って無かったわよ?」
と少しからかうように彼女は言った。
「冒険者になるとも言って無かっただろ?
そういえばSクラスの他の奴らはどうしてるんだ?」
「他の人たちは有名企業に進んでいったわ。まだ目立った活躍はしてないけれど有名な部署に行った人も居るからそのうち有名な製品の開発者に名を連ねるかもね。」
「けど今一番有名なのは間違い無くあなたよ。奇抜な戦い方をする強いソロの冒険者としてね。」
「そんなに有名なのか俺?」
「ええ、動画付きでね。ついでに言えばソロしか出来ないとも言われているわ。」
「確かにいつかに動画使っても良いよとは言ったけど有名になってたのか。
まああれはソロを前提とした動画映えはするけど協力には向かない戦闘スタイルだからな。」
「けどもし息の合ったパートナーがいれば化けるかもとも言われているわよ。」
「パートナーか。親友と言えるような人も居ないし、そもそもソロで行くつもりだったけど、もし居るとすれば色々と楽になりそうだな。」
「ねえ、もし私がパートナーになるって言ったらどうする?」
彼女は色っぽい笑みでそう言った。
・・・・・
さてどうしようか。
まずパートナーが出来るのはいいことだ。探索する時1人では出来ないこと、例えば警戒や広範囲の探索など色々な問題がほぼ解消する。しかしいくつか問題もある。
まず俺は元の世界に戻るかもしれないのでその時には強制的に彼女はソロになってしまう。
二つ目に戦力となるまで時間がかかる。俺の戦闘スタイルはほぼソロ専用だ。仮に以心伝心の仲であっても、ソロでやるより弱くなるかもしれない。
さらに言えば俺の戦闘スタイルに合わせたあとに俺が消えたとすると、それ以降は今の俺と同じようにチームを組みにくくなるかもしれない。
最後に一番大事な点だが、彼女は俺のタイプの女性なのだ。
ツヤのある黒髪を肩まで伸ばし、普段はあまり顔を見せないが顔はかなり綺麗で胸もそこそこある。
そして何より笑った顔が可愛いのだ。
Sクラスの男子はおそらく全員気にはしていたが、彼女がその顔を隠すためかローブをずっと被っていることから気を使っていたのかもしれない。
とにかく今まではあまり接点を持たないようにしてきたがパートナーとなると当たり前だが行動を共にすることになる。
そうなるとミレイユを好きにならない自信がない。そうなるとミレイユにとって迷惑な上、元の世界戻る気が無くなってしまいそうで怖い。
.....怖い?
なんだ。本心ではもう決まってたのか。
「なんでか聞いてみてもいいか?」
「実はね、魔法学校に入学した当初は冒険者に興味はあったけどなるつもりはあまりなかったのよ。けどユーヤが戦ってる動画を見た時、すっごく感動したの。憧れに近いかもしれないわ。魔法学校でもずっと先にいたのもあるかもね。
とにかくユーヤに追いつきたいと思ったの。それが一番の理由ね。」
「なるほど。....幾つか聞きたい事がある。それを聞いた上でもう一度考えてみてくれ。
まず俺は冒険者を長く続けるつもりはない。多分数年かそこらだ。そのあとは一人で故郷に戻るつもりだ。
次に俺を追いかけるのはいいけど、戦闘スタイルは真似しない方がいい。君みたいなモノ好きはそうそう居ないだろうからな。」
「ええ、戦闘は正直今はついていける気がしないわ。けど世界の外側に行くのでしょう?そのときなら戦闘以外には役立ってみせるわ。けどユーヤが故郷に帰るまでには私なりの方法で戦いも追いついてみせるわ。」
そうか、何故か戦闘に同じ戦い方で参加する前提で考えていたな。別にそうである必要はないじゃないか。
「それと一つ質問をしていいか?何故いつもフードを被っているんだ?言いにくいなら言わなくてもいいが。」
「あー...。実は私の母方の祖母がね謂わゆるサキュバスなのよ。母はそうでも無いから隔世遺伝ってやつね。それが原因で一度大変な目に遭ってね、それ以降顔を隠してるのよ。」
「そうだったのか。通りで妙に色気があったわけだ。」
「えっ?隠せて無かったの?」
「えっ?フードは被ってたけど顔自体は隠しきれてるわけじゃないし、遺伝なのか動作とか声とかも妙に色っぽかったし。」
「「........」」
えっ?天然属性あるの?
面白い、続きが気になると思ったらブックマークや下にある評価、感想やレビューをお願いします。