表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/40

5話 日本刀は浪漫

 元の世界に戻るかで葛藤していると、


「ユーヤ君も魔法を試しに来たの?」


 とローブを被ったミレイユが後ろから声を掛けてきた。


「ああ。流石に待ちきれなくてね」

「その割には浮かない顔してるよ?」


 そんな分かりやすい顔してたかな?


「ちょっと別のことで悩んでいてね」

「悩み事?相談いる?」

「いや、大丈夫そこまでのことじゃない」

「そう、ならいいのだけど」


 そういうと彼女はローブをもう一度深く被りつつ右手を構えて火の玉を打ち出した。


「すごい!魔法が使える!楽しい!」


 と少しだけ跳ねながらはしゃぐミレイユ。

 するとローブが取れ綺麗な青い髪が流れる。

 彼女はそれをすぐに直しつつ、


「次はSクラスの首席様の魔法を見せてよ。」


 と期待と無意識っぽい色気を込めた目で見られつつ言われた。


 ならどうしようか、どうせならスゴイ魔法を使ってみたい。複合魔法がいいだろうけどなぁ....


 と少し悩んだ結果、某有名バトル漫画のムチャしてる奴の技を真似したやつにしてみよう。


 まず火の玉の魔法陣を構築、そこにその火の玉をしばらく消滅しないようにプロテクトする魔法陣、次に火の玉を指の向きと連動させるための魔法陣を組み込む。


 これに今回は速めに魔力を流す。


 すると火の玉が飛び出した。操作はぶっつけ本番だったのであまり綺麗な軌道ではないが辺りを飛び回らせたあと30m程先にある的にぶつける。


「すごい......」


「魔法陣の構成はなんとなく分かるけどすごく早かったわ。多分3秒も経って無かったわよ」

「この魔法陣は使ってみたかったから何度も練習していたからね。」

「それにしても早かったわ。何かコツがあるの?」

「コツというか魔法陣を構築する時に......」


 などと話していると合格者全員が同じ場所に揃い、そこからは魔法自慢大会となった。


 そうして楽しんでいるうちにさっきの悩みはどこかへ消えていた。


 ちなみに自慢大会は火の玉縛りが出来上がって、優勝は俺のさっきのソウマダンを3個同時にやったものだった。


 ・・・・・・


 その日寮に着いて横になっているとあの悩みが復活してきた。 横になりながらしばらく悩んだ末、


 そもそも元の世界に帰れるかも分からないんだ。冒険者になって帰れる手がかりが無いか探すくらいなら有りだろう。


 もし手がかりすら掴めなければそのまま冒険者として暮らしていけばいいし、もし戻れるとしたらそのタイミングでまた考えればいいか。


 とほぼ問題の後回しのような結論を出してその日は眠った。


 1週間後Sクラスの全員が仮免に受かったことで選択講座が始まった。


 何故かミレイユと被ることが多かったが俺は出来るだけ早く冒険者となりたいのですぐに認定試験を受けるようにしていたのでミレイユよりだいぶ先に進んでいた。


 そして3ヶ月後。俺は6大属性である火、水、土、風、光、雷の魔法のまでは認定試験に合格していた。


 6大属性を取れれば免許は取れるのだが、目的が冒険者になり手がかりを探す事となると空間魔法は必須。 時間魔法も冒険者になった時に何かと便利そうなので全部取ろうか。


 けれど空間と時間の魔法は最近になってやっと発見された分めちゃくちゃムズイ上、バカみたいに魔力を消費する。


 逆に何で発見できたんだこれ?と思っていると実は500年ほど前に自在に転移出来る冒険者がいたという伝説があり、それを検証することに心血を注いだグループが再現に成功したらしい。


 その冒険者って実は転生者か転移者だったりしたのかな?


 と思いつつも1ヶ月半で2つの認定も取れたので遂にSクラスでも一番早く透明な魔法の免許証を取ることができた。


 ちなみに6大属性のみだと金色

 時間、空間のどちらか一つが加わると虹

 全属性で透明になるらしい。


 そうして魔法を使えるようになり、魔法学校を卒業し、ついに冒険者になる日がやってきた。


 卒業式は特になく、クラスメイトに別れを告げると学校を去った。


 冒険者になるには魔法免許とモラルのチェックがあるだけで特に問題なく冒険者となった。


 冒険者といえば戦闘のイメージだったがこの世界では安全第一の思想が大きく、基本は戦闘は無く、魔物の討伐依頼があっても複数人で罠を使いながら確実に仕留めるという感じで死傷者が出ることは稀らしい。


 しかし世界の外側を探索する時は話が変わる。


 世界の外側は人が魔法を使わない分魔素が濃密で強く賢い魔物が多いうえ、基本は荒れた土地なので実入りが少なくわざわざ探索したい人は少ない。よって基本は有志で構成された少人数でのパーティーかソロで行くことになる。


 そうなると魔物との戦いは基本イメージ通りの戦闘となり、もちろん死傷者は多い。それらの理由により世界の外側に行く冒険者は珍しいのだ。


 しかし俺は世界の外側を探索しなければならない。


 魔法学校で転移や召喚の魔法を調べていた際、過去の伝承に異世界人らしき人がいた。その人がいた国は滅び世界の外側の一部となっているのでそこの探索をするのだ。


 そのためにまずは近接武器が欲しい。中遠距離ならば魔法でどうとでも出来るが近距離は武器があった方が断然強い。


 身体強化の魔法はあるので基本はなんでもいいが、ここは日本人として、男の浪漫として日本刀を使いたい。


 接近してくる魔獣

 それに対し自然体で歩いていく

 魔獣が飛びかかる寸前、目にも留まらぬ速さで抜刀。

 そして空中で真っ二つになりながら落ちる魔獣の死体。

 それを見ることなく血振りをして『チンッ』と納刀。


 かっこいい!

 さらに身体強化と風魔法を日本刀に纏わせば実現可能かもしれないという点がよりテンションを上げてくれる。


 これでいこう。そうしよう!

 と決意して鍛冶屋を探すことにした。

 調べたところ隣町に昔ながらの作り方で包丁を作っているところを見つけたのでそこに行き日本刀について説明して作ってもらえるよう頼み込む。


 日本刀の製造法を他に売らないことを条件に虹貨1枚という特別価格で作って貰えることになった。


 修学旅行で行った京都だと40万とかで売ってたのを見たし、オーダーメイドを5万は相当安い筈だ。


 YouCubeで特に意味もなく日本刀の作り方の動画見といてよかった〜。


 前金として手持ちの金貨1枚練習も含めて1ヶ月後に取りに来る際に残りの金貨4枚を支払う約束をしてその日は去った。


 さてどうしよう。


 カッコつけて日本刀注文したはいいが、金が足りない。魔法学校にいた時は夜間にあの雑貨屋でアルバイトをして6ヶ月間で金貨24枚ほど稼いでいたのに加え元からの手持ちの1枚があった。


 しかし、雑貨屋の店主に借りた2枚と硬貨を売った際の金貨1枚それに利子として金貨1枚を加えて返した。それと異世界語の勉強のために買った辞書などで3枚使い、制服代や日々の生活費などで10枚、日本刀の前に買った探索に必要な物資で6枚。


 そしてさっきので手元には金貨1枚しか残っていないのだ。


 冒険者の依頼には討伐の他にも護衛などの依頼もあるが、強そうな見た目でないのでこれは無理。他の採取の依頼は実入りが少なく1ヶ月で金貨4枚を稼げるかは怪しいところだ。


 背に腹は変えられないか。

 できれば初めての討伐は日本刀を持ってやりたかった....


 そしてその3日後俺は若干の後悔を引きずりつつ初めての討伐依頼に参加することになった。

面白い、続きが気になると思ったらブックマークや下にある評価、感想やレビューをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] twitterのお約束により読ませていただきました! 文章構成がとてもうまく、どんどん小説の世界に入り込んでいきました。 [気になる点] 少し読点が少ないと思ってので、もうちょっと増やすと…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ