36話 マッドサイエンティスト?
翌朝、彼、エラミウェディスは大量に散らばったメモの上で寝ていた。
「いやーすみません。熱中しすぎちゃいました」
が夕方に二度寝から目覚めた彼の第一声だった。
長寿であるエルフは普通、睡眠を取らずに一週間は活動し、次の一週間はずっと寝て過ごすというような生活をしていると聞いていたのだが......
「いやー、一週間も寝てるなんて勿体無いじゃないですか。人間の生活サイクルに合わせた方が色々と便利でしたしね」
という理由で矯正したらしい。
その結果として昼夜逆転した不健康なエルフとなってしまったのであまり意味がなかった気がするがそこは触れないでおこう。
そして肝心の進捗に関しては流石第一人者だけあって一層目の殆どが解読されていた。
「いやー、やっぱり面白いですよこれ。見たこともないような理論が数多くありました。例えばここですが、何とここで魔力を均一化しているんですよ。今の理論では魔力を貯蔵してから、一定量を取り出すという方法なのですが、この方式を使えば、まだ実験をしていないので具体的な数値は出せませんが、効率は4倍以上に、精度もずっと良くなるはずです。他にもここでは──」
と延々と語り続けられるほどにこの解析に熱中している。
この勢いで数日で解析が完了するのではと思っていたが、2日後にとある壁にぶつかった。
二層目の途中までは解析が進んだが、とある場所で、エラミウェディスでさえ全くわからない魔法陣があったのだ。
完全に行き詰まり、ここで一日が過ぎた。
色々と模索するためエラミウェディスさんと話している際に、
「ところで、この魔法陣が別の世界から人間を召喚するための魔法陣だとは聞かされましたが、あなたたちがこの魔法陣の解析をする理由については聞かされていなかったのですよ。もしやあなたが別の世界から召喚された本人なのでは?」
「え、いや、違いますけど」
いきなりの核心をついた質問だったが、バレると色々と厄介そうなので動揺がバレないように誤魔化す。
「なるほどなるほど。そういうことですか。では、少しあなた自身の体についても調べてみたいのですが、お時間よろしいですか?」
返答を聞かず、確定事項として扱っている.....
さらに丁寧に聞いているような口調だが、不吉な笑みを浮かべて近づいてくる姿はマッドサイエンティストにしか見えない。
「あの、ちょっと、お断りさせていただきます」
「大丈夫ですよ。少し痛いかもしれませんがすぐ終わりますから」
「ちょっと、ミレイユも見てないで助けてくれ!」
身の危険を感じてミレイユに助けを求めるが、
「が、頑張ってねユーヤ」
と完全に見捨てられた。
「助けてくれーーーー‼︎」
そんな断末魔が響いた数十分後、俺は大量の機械が並んだ部屋の診察台に寝ていた。
ただし、手足を拘束された状態で。
「この拘束はどういうこと何ですか? 本当にこれ大丈夫なんですよね?」
「ええ、ちょっと痛いかもしれないので念のため拘束してますが、大丈夫ですよ」
と言いながら彼は魔法学校へ入学する時の魔法適正検査のような装置を取り付ける。
「じゃあ始めますよー」
「分かりましタッッ、イッ──」
痛い!痛すぎる‼
︎身体中に感染したかのような痛みが走る。
痛みのあまり声も出ず、エラミウェディスが何か言ってるようだが、わからない。
時間が長く感じる。
体感時間ではすごく長い時間が経った頃にやっと地獄が終わった。
「はい、お疲れ様です。いいデータが取れましたよ。さっそく解析をしなくては!」
と言って、彼は部屋を去ってしまった。
「え、拘束解いてくださいよ!おーーーい!」
呼びかけ虚しく足音はどんどん去って行く。
拘束も解かず、俺を置き去りにしたまま......




