34話 集団転移
転移は基本他人には使えない。
その魔法陣の理論はあるらしいが、犯罪に使われると厄介なので一般的に禁術扱いとされている。
しかし、冒険者の中に、使うことを許可されたものがいる。
その中にはザルシュの名もあった。
・・・・・・
こちらへ突進してきた大蛇はその後、魔力が尽きたところにさらなる集中砲火をして、討伐された。
その後、安全が確認されてから解体が開始された。
そのころ俺はザルシュと個室で対面していた。
「確か君はユーヤだよね。トリッキーな戦い方で有名だから知っていたよ。
ピンチの時に、一人で逃げるような人物とは聞いていなかったけどね」
優しげな声だったが、淡い緑色の目は鋭くこちらの目を見ていた。
反論できないでいると、
「たしかに動けなかった彼らに比べれば動けてだけマシだと言える。さらに君は今回ソロでの参加だったはずだ。もし、その場に居たのが君だけならその行動は最善だった。
けれど、そこには動けていない人が4人居たんだ。たとえ、集団転移が使えなくとも発破をかけるなり、引きずってでも逃がすなり方法はあったはずだ」
「......すみません」
「すみませんだけでは足りない」
「次からは仲間にも気をかけて、もしもの時には──」
「おっと、ごめん。いじめすぎたかな? 反省してくれればそれでいいんだ。君は失敗から学べる人のようだから......」
「さて、これで話自体は終わりなのだが、ちょっとした知識を教えよう。
基本的に禁術の集団転移は、資格を持つ術者の直伝の術式と推薦でで、行使を認められるようになる。
そして私はその資格を持っている。
あとは何をすればいいかわかるだろ?」
「はい。自分に集団転移を教えてください」
・・・・・・
俺はザルシュさんに集団転移を教えてもらう事になった。
「冒険者を始めて一年も経っていない人へ教えるのは初めてだよ」と言っているほどなので、珍しいことなのだろう。
「さて、これから教える集団転移だが、魔法陣の理論自体は簡単だ」
と言って彼は手の上に魔法陣を構築した。
説明を加えながら分かりやすいようにゆっくり、順番に構築しているのでとても分かりやすい。
しかし、それ以上に喋りつつ、構築の速度をここまでいじれる技術に恐ろしささえ感じる。
「──という感じだ。分かったかな?」
「ちょっと自信がないですが、試してみます」
さっきの理論を思い浮かべながら、丁寧に構築する。
すると、一回目で構築には成功した。
「おお、すごいね。今までまあまあな人数に教えてきたけど、一回の説明で出来た人は君含めて数人だよ」
「ありがとうございます。それで、聞きたいのですが、範囲指定で実行するには──」
と色々と活用法を聞き、ついでに冒険者としてのノウハウを少し教えてもらい、お礼を言ってから退室した。
その後、置いて行ってしまった4人に対して謝罪したが、
「こちらこそ全く動けなかったことを謝りたいくらいなんだ。謝罪はいらないよ」
と言われてしまったが、一応菓子折りを渡しておいた。
そして、次の日から魔法陣の解析を再開した。




